第13話:底辺クラスの絶対指揮官と、一糸乱れぬ烏合の衆
誰と誰を組ませれば連携が繋がるのか。
誰の弱点を、誰の強みが埋めるのか。
誰に何をさせれば、一番少ない魔力で最大の結果が出るのか。
全部、見える。
恐怖で泣き叫ぶクラスメイトたちと、牙を剥いて迫り来る魔物の群れ。
その絶望的な光景を前にしても、俺の心は恐ろしいほどに凪いでいた。
俺は一歩前へ踏み出し、パニックになりかけているFクラスの面々へ向けて、冷徹でよく通る声を響かせた。
「セドリック」
迫り来る死の暴流を前に、俺は感情を一切交えない、冷徹でよく通る声を響かせた。
「は、はいっ!」
「3番の岩陰から、前方の通路全体を『面』で焼き払う極大の炎を放って。味方の巻き込みは俺が調整する」
「面で、焼き払う……! 承知いたしました、リオ様!」
俺の無機質な声に、セドリックの瞳に狂信の炎が宿る。
彼の魔力制御は【極低】だが、出力は【極高】。精密な狙撃など最初から求めていない。
大味で暴発しやすいという欠点も、ただ広範囲を塗り潰す暴力として使えば、最強の範囲殲滅魔法に化ける。
「アリア。精密な狙撃はするな。感知した魔力溜まりへ『適当に』魔力をぶつけて攪乱しろ」
「適当に……わ、わかったわ!」
アリアは真面目すぎるゆえに、精密な魔法を撃とうとしてプレッシャーで自滅する。
だから、敵を狙って倒す責任を放棄させた。
ただ感知した魔力核である急所に、無造作に魔力を当てるだけ。プレッシャーから解放された彼女の魔法は、神がかった精度で機能するはずだ。
「前衛の3人。一歩下がって盾を斜めに構えて。セドリックの炎の余波を魔物側へ反射させる壁になってほしい。ビビらずに耐えてくれ。一歩でも動けば死ぬぞ」
「ヒッ……!」
恐怖で逃げ出そうとしていた前衛組が、俺の冷静で絶対的な声に縛り付けられたようにピタリと足を止め、指示された角度で盾を構えた。
恐怖で足がすくむという弱点すらも、一歩も動かない強固な反射壁として利用する。
(頼む、絶対に失敗しないでくれ……!)
内心では祈りながらも、俺はただゲームの盤上の駒を動かすように、冷静を装った無表情で的確な指示を連発していく。
「……グガァァッ!」
先陣を切ったブラックウルフが、前衛の3人に襲いかかろうと巨大な顎を開いた。
直後、彼らの頭上を越えて、極太の火柱が撃ち出された。
「燃えろぉぉぉっ!!」
セドリックが岩陰から放った極大の炎。
本来なら味方まで巻き込んで自滅する大味な魔法だが、前衛が構えた「斜めの盾」が、その余波を完璧に受け流す。
盾の表面で跳ね返った炎は殺到する魔物の群れに向かって逆流し、通路全体を覆い尽くす火の壁となった。
「ギャンッ!?」
「ゴァァァァッ!」
炎の壁に阻まれ、魔物の先陣が次々と灰に変わっていく。
「右から3体、炎を抜けてくる! アリア!」
「はいっ!」
炎をすり抜けてきたブラックウルフの魔力核へ向かって、アリアが極小の魔力波を無造作に放つ。
魔力循環をピンポイントで攪乱された魔物たちは、突如として平衡感覚を失い、前衛の目の前で無様に転倒した。
「トドメを!」
前衛の3人が、炎を反射させる壁の役割を終えると同時に剣を振り下ろし、転倒して無防備になった魔物の首を次々と落としていく。
「……すごい」
アリアが、自分の手のひらを見つめて震える声で呟いた。
「私の魔法が、実戦で……役に立った!」
「リオ様の指揮があれば、絶対に味方を焼かない! ならば、私はただ全霊の魔力を捧げるのみ!」
セドリックが狂喜の声を上げ、さらに膨大な魔力を練り上げる。
盾の裏側にいる前衛たちも、自分たちが一切の怪我を負わずに魔物を圧倒した光景に、信じられないものを見るように目を丸くしていた。
「次が来る。セドリック、息を整えて。アリア、左翼からの反応を探って。前衛、半歩下がって盾をより上向きに」
俺は安全な後方から、一切の感情を交えずに淡々と指示を飛ばし続ける。
単体では能力が空回りし、自滅するだけだった落ちこぼれの烏合の衆。
だが今の彼らは、俺の『指示』によって一つに噛み合い、互いの弱点を完全にカバーし合っている。
魔力値2の俺の言葉一つで手足として統率され、押し寄せる魔物の大群を無傷で完封する『一糸乱れぬ最強の軍隊』へと変貌を遂げていた。
★★★ 全知の聖母あとがきシステム ★★★
ここまで読んでいただき、ありがとうございます♪
ちょっぴりシリアス展開になりました。空気の読める私はしばらくおふざけを控えます!
(※本編はある意味空気を読んでるんですよ♪)
「作者の手抜き定型文だろ!」と思いつつも……楽しんでいただけましたら、坊っちゃんと作者の【やる気:限界突破】になるよう、
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