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福音

「カルヴァリーの磔刑魔」――新聞がそう書き立てたのは、三人目の遺体が発見されてから数日後のことだった。


街は恐怖と好奇の入り混じった空気に包まれていた。教会には連日、不安を訴える信者たちが押し寄せた。ヨハネスはその一人一人に、いつも通りの穏やかな言葉をかけた。だが、その言葉を紡ぎながら、彼の内側では別の思考が静かに進行していた。


――次は、もっと。


四人目に選んだのは、街の裕福な実業家だった。表向きは慈善事業に熱心な人物として知られていたが、裏では違法な労働環境で移民労働者を酷使し、抗議した者を巧妙に排除してきたという噂を、ヨハネスは信者たちの会話の端々から拾い集めていた。法に触れる証拠は表に出ず、男は今も悠然と街を闊歩していた。


決行までの準備に、ヨハネスは今回、これまで以上の時間をかけた。


場所は、街で最も人通りの多い広場――大聖堂前の噴水のある一角を選んだ。危険は承知の上だった。むしろ、その危険度の高さこそが、彼にとって"意味"を持つようになっていた。裁きは、隠れて行うものではない。世界に示されるべきものだ。


道具も、あらかじめ丁寧に選び揃えた。白い布は今回、単なる覆いではなく、体の輪郭に沿うように裁断しておいた。花は白百合を選んだ。純潔と再生を象徴する花だと、かつて神学校で学んだ記憶があった。そして、小さな真鍮の燭台をいくつか、死体の足元に配置する構想も練っていた。


決行の夜、すべては彼の思い描いた通りに進んだ。男との対峙、そして――終わり。今回、ヨハネスの手に迷いはなかった。まるで何百回と繰り返してきた儀式であるかのように、体が自然と動いた。


噴水の縁に、彼は男の体を丁寧に横たえた。両腕を広げ、頭部を少し傾ける。角度一つにも、彼はこだわった。以前の二人よりも、表情が安らかに見えるように。白い布を、輪郭に沿わせるように巻きつけ、その上に白百合を幾重にも配置していく。燭台に火を灯し、死体を囲むように並べた。


完成した光景を前に、ヨハネスは長い間、言葉を失っていた。


美しかった。


これまでのどの瞬間よりも、はっきりとそう感じた。噴水の水音と、揺らめく蝋燭の灯りに照らされたその姿は、まるで一枚の宗教画のようだった。汚物であったはずのものが、今や神々しいまでの静謐さを纏っている。それを作り上げたのは、他ならぬ自分の手だった。


彼はその場にしゃがみ込み、しばらくの間、ただその光景に見入っていた。誰かに見られる危険も、今この瞬間は頭の片隅に追いやられていた。


「ああ……」


思わず、声が漏れた。それは祈りの言葉ではなく、ただの感嘆だった。


やがて彼は跪き、十字架を握りしめた。だが今回、その手は震えていなかった。


「ああ、神よ」


声には、これまでにない響きが混じっていた。


「ご覧ください。この者は、ようやく本来あるべき姿に戻れました。汚れは洗い流され、罪は形を変え、今ここに、静かな美しさとして生まれ変わりました。これは、私からあなたへの捧げ物です。どうか、お受け取りください」


言葉を紡ぎながら、ヨハネスの口元には、自分でも気づかぬうちに微かな笑みが浮かんでいた。それは懺悔でも、疑いでもなかった。ただ、自らの成し遂げた仕事への、深い満足だけがあった。


彼はしばらくその場を離れることができなかった。まるで、完成した絵画から目を離せない画家のように。


空が白み始めても、彼はまだそこにいた。ようやく重い腰を上げたとき、彼の胸には、これまで感じたことのない充実感が満ちていた。


――もっと、美しく。


――もっと、完璧に。


その考えが、まるで新しい信仰のように、彼の中に静かに根を下ろしていった。


その日の朝、大聖堂前の広場は騒然となった。集まった群衆の中には、恐怖に顔を歪める者もいれば、どこか畏怖するような眼差しでその光景を見つめる者もいた。誰かが呟いた。


「まるで……殉教者の絵みたいだ」


その言葉を、ヨハネスは群衆の後ろで、静かに聞いていた。

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