第6話:<ガイド>アリス
今日も村外れにやって来た。
門番さんが声をかけてくれる。
「おう、ヒトシ。昨日は大変だったなあ。身体は大丈夫なのかい?」
「はい、聖見官様のおかげで何事もなく」
「雷だったのか?」
「いや、ちょっとぼくにもわからないんですけど」
聖見官様によれば、魔王のコアを壊したことで爆発的に漏れ出た魔力に当てられたってことみたい。
でももちろん言わないほうがいいよね。
「ハハッ、気絶してたもんな。本人からしてみりゃまあそうか。しかし懲りもせず?」
「はい、穴を掘りに来ました」
「いくら穴掘りの加護持ちだからって熱心だなあ。いや、きっとヒトシみたいなやつが大成するんだろうな」
いや、門番さん知らないけど、もうぼくレベル三二なの。
自分の運の良さが怖い。
ん? 門番さん何?
「……ヒトシ。お前レベル〇の壁越えてるだろ。それどころか結構なレベルになってるはず」
「えっ?」
何でわかったんだろ?
門番さんの加護かスキルでってことかな?
「俺には<簡易鑑定>ってスキルがあってな。レベル〇のやつは見りゃわかるんだよ。昨日出てった時はレベル〇だったヒトシが、今は<簡易鑑定>がまるで通らねえ。となると推測はつくわな」
「ええと……」
「ドカーン気絶に関係あることか? 村に危険のあることか?」
「関係ありますけど、村に危険はありません」
「ならいい。大方聖見官の旦那に口止めされてるんだろ? 村に危険がないなら、俺もこれ以上聞かねえ」
ニッと含みのある笑顔を見せる門番さん。
<簡易鑑定>持ちってことは、門番さんはレベル一〇以上ってことか。
頼りになるなあ。
「この辺で出る魔物について教えてもらいたいんですよ」
「おう、感心だな。森まで行かなきゃ大概平気だってのは知ってるな?」
「はい」
「ただ実際には森に行くまでにも魔物の姿が見えることがあってよ」
「そうなんですか?」
知らなかったよ。
だから門番さんが必要なのか。
「森の外に出てくることがあるのは、角ウサギとワイルドボアだな」
「ウサギとイノシシの魔物ですね?」
「おう、草食魔獣だからメチャクチャ危険ってことはねえんだけどよ。角ウサギは目が合うと突っ込んでくるんだぜ。この辺じゃ一番弱い魔物だが、舐めて腹を突かれて死んだやつを何人も知ってる」
だから倒してレベル〇の壁を越えようってことにならないのか。
何だかんだで魔物だもんなあ。
「危ないんですね」
「もしそうなったら逃げるな。追われると却って危険なんだ。ヒトシのレベルなら問題ねえと思いたいが、今更魔物のことを聞いてくるところを見ると、戦闘経験はほぼないんだろ?」
「ないです」
なのにレベルが高いのはおかしいと、門番さんも思ってるんだろうな。
偶然なの。
「腹を突かれねえようにそのスコップでガードしろ。なあに、角ウサギは一撃で離脱して逃げちまうからな」
「わかりました」
「まあ角ウサギはバカなんだ。切り株とか岩とかにぶつかって脳震盪起こすこともあるっていうぜ。そんな場面に遭遇したら迷わずとどめを刺せ」
「はい」
「ワイルドボアは群れで現れることが多いな。威嚇はしてくるが、不用意に近付かない限り戦闘にはならないぜ。ゆっくり後ずされば逃げられる」
「わかりました。ありがとうございました」
「角ウサギもワイルドボアも肉は美味いんだ。これ豆知識な」
そうかあ。
聖見官ルルイフ様の言ってたことからすると、ぼくは魔物退治の経験を積んでいるほうがいいらしい。
ぼくのレベルからすると、弱い魔物相手なら危険はないようだし。
門番さんの話も合わせると、最初の相手は単体の角ウサギがいいだろう。
いざいかん!
「行ってきます」
「おう、周りには注意しろよ」
◇
「何だろう? ただの石みたいだけど」
【スコップ】の加護に従い、掘りたいところを掘ったら石が出てきた。
<簡易鑑定>でも反応がないな?
でも聖見官ルルイフ様は、<簡易鑑定>で見極められないものもあるって言ってたっけ。
じゃあこの石は何だろう?
【スコップ】の加護が本物なのは、魔王のコアを一発で掘り当てたことでもわかってる。
しかも今はレベルも上がってるから、より信頼性は上がってるんじゃないかな。
絶対にこの石は意味のあるものだと思うなあ。
でも魔王のコアの時みたいに、ムカムカするような違和感を感じない。
悪いものじゃないんじゃないかな?
まずいことならば感じるはずの<察知>が働いてるだろうから、それを信用するならだけど。
……ふと思った。
この石も壊してみようか?
魔王のコアも壊して状況が変わったのだし。
スコップの先で狙いをつけ、えいやと振り下ろした。
「あ……」
ホンワカした感じがする。
何これ?
そうだ、自分のステータスを見てみれば、何が起きたかわかるんじゃないかな?
<ステータスオープン>と唱えようとしたところ……。
『初めまして』
「えっ?」
声がする?
いや、周りに誰もいないし、気のせい?
頭に響くような感じだったな?
『気のせいではありませんよ。ステータスでスキル欄を確認していただけますか?』
「スキル欄? わかった。<ステータスオープン>!」
ええと、スキルを確認すると……。
「<ガイド>のスキルが増えてる」
『そうです。わたしが<ガイド>させていただきます。まずわたしに名前をつけていただけますか?』
そう来たか。
でも確かに会話ができるスキルなら、名前あったほうが都合がいいんだろう。
女の子っぽい感じがするから……。
「アリスでどうだろう?」
『アリス、承りました。ありがとうございます』
喜んでいるのがわかるな。
距離が縮まったのかしらん?
「じゃあ<ガイド>のスキルとアリスについて説明してくれる?」
『はい。<ガイド>は先ほどヒトシ様が使用したスキルストーンによって、ヒトシ様が習得しましたスキルです』
「スキルストーンって何かな?」
壊した石のことだとはわかるけど。
『スキルストーンはスキルを宿した石です。意思を持って使用することで、そのスキルストーンの持つスキルを習得することができます。使用後はただの石になります』
「なるほど」
『ヒトシ様は破壊しておりましたが、通常は習得するぞと念じてこするだけで問題ないです』
「あ、そうだったのか」
つまり一回だけ使用できる、スキル習得用の石だね。
「じゃあスキルストーンを見つけたら、どんどん使うのがいいのかな?」
『正体のわからないスキルストーンを使用するのは危険です。既に獲得しているスキルの効果と相殺してしまうことがありますし、デメリットを持つスキルも多いです。『呪い』と呼ばれる完全なマイナススキルも存在します』
「何それ、怖い」
呪いなんて言われると、<ガイド>のスキルも気になっちゃうじゃないか。
「<ガイド>について、もっと詳しいことを教えて?」
『知識や判断のアシストをさせていただくスキルです。特にデメリットはありません。現在わたし自身が知っているのは一般的な知識だけです。今後ヒトシ様が様々な経験をされたら、得られた知識を整理し、提案させていただきたいと思います』
「うんうん」
相談相手ってことだな。
一般的な知識を持ってるってだけで頼りになるよ。
ぼくの経験次第というところはやる気が出る。
「アリスに質問だよ。ぼくの【スコップ】の加護で、今後もスキルストーンを入手できると思うんだ。どうしたらいいかな?」
『何のスキルストーンか判断する手段がありません。スキルストーンは<簡易鑑定>の効果がないアイテムだからです。迂闊に使うのは危険です。取りおいておくのがよろしいと思います』
だよね。
初めて使ったスキルストーンで<ガイド>が出たのはラッキーだったなあ。




