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穴掘りの加護『スコップ』は、思ったよりも無双です?  作者: 満原こもじ


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第36話:その時ティレニア軍冒険者達は

 ――――――――――その頃。ティレニア軍冒険者による別動隊隊長ニック視点。


 休憩を終え、国境を越えた。

 時間的におそらく今頃は宣戦布告宣言がなされているはず。

 ハハッ、さもなくば正式に不法侵入者だ。


 ……石像になった副長の一人ベイツは国境に置いてきた。

 一戦も交えてないのにベイツを失ったのは痛いな。

 帰りに回収できるか?


 俺達山越え旧道からの侵攻部隊は、明確な目標を決められているわけじゃない。

 かき回せと言われているだけだ。

 隊長である俺にフリーハンドが与えられているとも言える。


 とりあえずゼイパレス王国領内に侵入できれば、王家の要請に最低限応えた格好にはなるだろ。

 気の向かねえ要請ではあったが、浮世の義理ってやつがあるから断れねえしな。

 陽動の役割を果たせれば上等だが……。


 どうも気に食わない。

 悠然と飛んでいるように見えて俺の<察知>に漠然とした不安を感じさせるあの鳥。

 国境の壊れかけの柵に置かれていた負の効果のスキルストーン。

 空から監視されているのか?

 スキルストーンは罠だったのか?

 いや決めつけることは視野を狭めて危険だ。

 可能性だけ頭に置いておけばいい。


「うう、わんわん!」

「わんわんわんわん!」


 イヌ達が反応する。

 マーサが言う。


「オオカミの魔物ね?」

「シャドウウルフの群れだな」


 レベルは高くないが、数的有利だと考えると襲ってくる厄介な魔物だ。

 しかし俺達の人数ならどうってことない。

 逃げていったか。

 ……人数で勝ってるのにシャドウウルフが姿を見せるなんてことあるか?

 考え過ぎか?


「一件落着ね」

「……」

「なあに? 難しい顔してるけど。<察知>に引っかかるの?」

「おう。どうも面白くないな」

「具体的にどうしとけばいい?」

「マーサは話が早いな。今オオカミどもが逃げていった森が気になる」

「魔物に警戒ってこと?」

「いや、ゼイパレスの伏兵に注意だ」


 道なり進行方向にある森。

 どうにも胡乱な気配だ。

 俺達の侵攻を予期しているなら必ずあの森で仕掛けてくる。


 首をかしげるマーサ。


「考え過ぎじゃない? 伏兵がいるなら魔物が逃げていったりしないと思うけど」

「……それもそうか」

「いいわ。とにかくニック隊長は怪しいと見ているのね?」

「ああ」

「皆! 森に注意よ!」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」


 そうだな、大雑把に注意と言っておけばいいだけだった。

 俺のもやもやの正体がハッキリしねえもんだから。

 マーサの配慮は助かるぜ。


 森に入る。

 まだこの辺は木の密度が低くて見通しが利くな。

 しかし<察知>が強く反応する。

 これは明らかな危機だ。

 どこだ?

 進行方向左、森の中か?


「全員防御!」

「ぐあっ!」

「きゃんきゃん!」


 くそっ、一斉投石か?

 いや、これ土だな。

 攻撃が発射された方向を見たが、誰もいない?

 しかし後方から例の鳥が急襲!

 魔法だと?


「範囲風攻撃魔法<トルネード>よ。信じられない……」

「畜生。やっぱりあの鳥敵かよ」

「ニックのカン、当たってたわね」

「とにかくあの鳥は寄せるな。今度近寄ってきたら射落とせ!」

「了解!」


 見失った森の敵はどうした?

 右から気配?


「ぐあっ!」  

「く、くそっ!」

「いた、あのガキだ!」


 かなりのダメージを食らっちまった。

 イヌはほとんど全滅じゃねえか。

 ガキ一人だけなのか?

 しかし他に気配を感じない。

 何かカラクリがあるのかもしれんが、あのガキを捕まえて吐かせる。


「<ウインドレジスト>!」


 あの鳥が再び魔法を撃ってきたらしいが、マーサの対抗呪文で相殺した!

 よし、鳥はマーサと射手達に任せりゃいい。

 俺はとにかくあの得体の知れねえガキだ!

 俺の<察知>はガキが一番ヤベえと告げている。

 何者だ?

 かなりのレベルに思えるが……。


 しかし足は俺のほうが早い。

 ざっと<察知>したが罠はないようだ。

 ガキも身体強化魔法を使っているようだが、残念だったな。

 俺も使えるんだよ。

 おまけに俺の加護は【俊敏】だから、俺より足の速いやつには会ったことがない。

 よし、追いつく!

 ……と思ったが、どうして上空にいるはずの鳥がそこにいる?

 フクロウ?


「か……」


 ガキとフクロウが<威圧>してきやがった。

 こいつらレベル三〇以上なのかよ!

 まともに食らっちまった。

 身体が竦む。


「<モノボルト>!」

「ホー!」

「ぐあっ!」


 ここで魔法か!

 フクロウのやつ、風魔法だけじゃなくて氷魔法も使えるんじゃねえか。

 完全にやられた……。


「ニック!」


 マーサか。

 射手二人で矢を射ながら駆け寄ってくるが、来るな、危ねえ!

 お前らの敵う相手じゃねえ!

 しかしガキとフクロウは逃げたな?


「<ヒール>! ニック、大丈夫?」

「あ、ああ。助かったぜ」

「あの大きな鳥、急にいなくなったと思ったらニックのほうに現れたのよ。どういうことかわかる?」

「わからん。しかしガキとフクロウが両方とも<威圧>を使ってきやがったぞ?」

「えっ?」

「ともにレベル三〇以上ってことだ」


 何なんだよ、あいつらは。

 冗談じゃねえぜ。

 ようやく身体を自由に動かせるようになった。


「ん? あれは?」

「キラービーよ! 結界張るわ!」

「おい、お前ら急いで森から出ろ!」


 くそっ、ここでキラービーをけしかけて逃げるとは!

 どんだけ嫌らしいやつなんだ!


          ◇


 這う這うの体で森から逃げ出した俺達はもう諦めムードだった。

 イヌは全部やられちまったしな。


「隊長、どうするんだよ?」

「撤退に決まってる。反対するやついるか?」


 誰も手を挙げない。

 そりゃそうだ。

 こっちが引っかき回すつもりで攻め入ったのに、まだ入り口で散々翻弄されちまった。

 魔法薬も半分以上消費した。

 しかもあの忌々しいフクロウは悠々と飛んでいて俺達を見下ろしているんだぜ?

 薄気味悪いったらありゃしねえ。


 冒険者達が口々に言う。


「……何なんだよ、今日の戦いはよ!」

「わけがわからねえよな。大体何であの鳥は魔法を使えるんだ?」

「予想外も過ぎる」

「ニック隊長。あんたは<察知>持ちだろ? 把握してることがあったら教えてくれよ」

「そうだそうだ。このままじゃ寝られねえよ。悪夢見ちまう」


 ハハッ、皆疲労困憊だろ。

 寝られないなんてことはないわ。


「俺もわからないことが多い。が、俺達のゼイパレス侵攻が筒抜けだったことは間違いねえだろ。じゃなきゃあんなフクロウにつきまとわれたりしねえ」


 皆が嫌々見上げる。

 ……とりあえずこっちを攻撃する意思はないようだな。

 監視に専念か。


「あの鳥は何なの?」

「俺にもわからねえ」

「多分精霊獣だと思う」


 マーサの発言に驚く者、納得する者。

 精霊獣とは意思を持つ魔力の塊だという。

 精霊獣なら魔法が使えるのは当然か。

 しかし精霊獣なんてものは初めて見たぞ?


「なるほど、あのガキの手下の精霊獣だったのか」

「だとすると矛盾がないと思うの」

「おう、そうだな。まあその辺で納得しとこうぜ。これ以上突っ込んでも結論が出そうにない」


 全員が頷く。

 あのガキはとんでもないやつだが、それでも一人でこっち側の局面を任されてるってことはないだろう。


「そしてどうやらティレニアはゼイパレスに勝てないらしい、ということだな」

「どうして!」

「考えてみろよ。精霊獣持ちのガキをこっち側に配置した。やつ一人で俺達完封されたじゃねえか。情報戦で負けてるわ。そのゼイパレスが街道の会戦でポカすると思えねえ」

「……」

「お前達も身の振り方を考えといたほうがいいぜ」


 元々長期戦ならティレニアに分がねえしな。

 俺はティレニアを出ようかと思ってる。


「さて、石像を回収して帰還する。疲れてるとこ悪いが、あのフクロウがどこかへ飛び去るまで休みはなしだ。全力で警戒しながら撤退する。いいな?」

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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