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穴掘りの加護『スコップ』は、思ったよりも無双です?  作者: 満原こもじ


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第29話:ザックの思惑

 ――――――――――メイエスの冒険者ギルドにて。ザック視点。


「おっ? ヒトシじゃねえか」

「あっ、ザックさん。こんにちは」


 北の街道経由でマツモティー村に行こうとしたら、メイエスで弟子のヒトシに会った。

 都合がいいな。

 道々ヒトシと話しながら行けるだろ。


「アイテムの換金か?」

「そうです。マツモティー村では魔石の換金はできなくて」

「まあ小さな村に魔石の需要はねえからな。確認するが、無事冒険者ギルドには登録できたんだな?」

「はい」

「よかったぜ」

「最近一番薬草と魔石を持ってきてくれるのはヒトシ君なんですよ」


 受付嬢は喜んでこう言うが……つまり売却できればいっぺんにデカい金にできるスキルストーンはやはり売れないってことか。

 だろうな。

 ヒトシみたいな実績のないルーキーがスキルストーンをしょっちゅう売るのは、いかにも胡散臭いから。

 出所を怪しまれるんでなるたけ売買は絞れって、オレも言ったしな。

 しかしヒトシが手に入れられるようなクズ魔石やありふれた薬草じゃ、大して稼げねえはずだ。

 まあ子供のやってることと、誰にも警戒心を抱かせないという点では悪くないんだが……。


 ただヒトシは姫さんの推薦で王立アカデミー入学が決まってる。

 授業料なしの特待生と言っても生活費は別だ。

 ルルイフのじーさんが面倒みてくれると言っても、王立アカデミー生は貴族ばっかりだからな。

 付き合いでどんだけ金がかかるかわかりゃしねえ。

 王都の物価は高えし。


 おまけにオレも知らなかったことが、王立アカデミーは学生のアルバイトは禁止とじーさんが言ってた。

 いや、いざとなりゃじーさんが何とかするんだろうが、ヒトシのやつは頼り過ぎるのを潔しとしないだろ。

 つまりヒトシは王立アカデミー生として過ごす六年間で消費する金を、入学までの一年ちょいで稼がなきゃならないことになる。

 今のペースじゃ到底ムリだわ。


 ヒトシが言う。


「ゼイパレス王国と隣国ティレニアが戦争になるようではないですか。メイエスなら情報が入るかと思って、最近しょっちゅう来るようにしてるんです」

「えっ?」


 ぶっこんでくるなあ。

 受付嬢驚いてるじゃねえか。

 だが……。


「おいヒトシ。それどこで聞いた?」

「タスミン姫が街道で襲われた事件があったじゃないですか」

「おう」


 あの時オレは王都ロイアスに帰ったから、ヒトシと別れた。

 その後王都でティレニアと戦争になるだろうって確かな情報を得たが、ヒトシはどうやって知ったんだろうな?


「あのあと村で、村長の息子を含めたぼくと同い年の三人が、ティレニアの冒険者崩れに誘拐されそうになる事件が起きたんです」

「マジかよ」

「それで犯人の冒険者崩れ達が言ってたんです。ティレニアとゼイパレスは近い将来戦争になる。今ゼイパレスから子供をさらってもうやむやになると」


 ははあ、なるほどな。

 <察知>と、それからヒトシは<直感>も持ってたはずだ。

 チンピラどもの苦し紛れのフカシじゃねえ、確度のある情報だと判断したんだな?

 ヒトシのアンテナも大したもんだ。


「オレも注意喚起しにきたんだ。ティレニアと戦争になることは十中八九間違いねえ。しかも会戦間近だと」

「そ、そうなのですか?」

「もう街道沿いの集落群は知ってることだ。姉ちゃんもこれ、ギルマスに話しておいてくれよ。追って詳しい情報がメイエスにも入るだろうけどよ。早めに知ってたほうが準備できるだろ」

「は、はい」

「ザックさんの意見を聞きたいことがあるんですよ。お姉さん、地図はありますか?」

「少々お待ちください」


 受付嬢が持ってきた地図を開く。

 ヒトシの説明を聞く。


「ここがメイエス、で、こっちがマツモティー村です」

「おう」

「件の誘拐未遂犯は街道からおそらくメイエスを通って村に来たんです。それで子供をさらってこの道を通ってティレニアに戻ろうとしていました」


 ヒトシの指す地図上の道は……。


「これってあれか? ヒトシが魔物を狩ってる村外れの、森へ通じる道?」

「そうです」


 あの道ってティレニアに続いてたのか。

 ……臭いな。


「北の街道ができてから全然使われてない道なんですよ。ぼくこの道で国境まで行ってみたんですけど」

「ハハッ、ヒトシは目端が利くな。で、どうだった?」

「最近誰かが通った形跡はないです。柵みたいな障害物があって、『ゼイパレス~ティレニア国境。通行を禁ず』という札がかかっていました」

「ヒトシはあの道を通ってティレニア軍が攻めてくると思ってるんだな?」


 頷くヒトシ。


「もちろん主力は街道を進軍するんでしょうけど。別動隊が来てかき回してくることはあるんじゃないかと。でも細くて荒れてる道なんですよ。魔物も出ますし。ザックさんはどう思うか聞きたくて」

「別働隊が攻め込むことは大いにあり得るな」


 ヒトシは傭兵の経験がねえから教えといてやろう。


「行軍で一番ヤベえのは、方角を見失うことなんだ」


 初めて聞いた、みたいな顔をしてるわ。

 これは経験がないと気付きにくいことかもしれねえ。


「霧に巻かれて集団で迷ってよ。決戦に大兵力の到着が遅れて負けたなんてこともあるんだぜ」

「そうなんですね?」

「ああ。だから少々狭かろうが荒れていようが、軍からすりゃ一本道は使いやすいと考えるだろうぜ。迷う危険が少ないからな」


 熱心に頷くヒトシ。

 こういうことはよく覚えておけよ。

 受付嬢が言う。


「でも戦争になるならば、街道沿いがメインの戦場になることは間違いないのですか?」

「間違いねえな。大兵力を展開するには輜重の運搬の問題がある。これはしっかりした道じゃねえとムリだ」

「ザックさんの見解でも、やはりマツモティー村が直接攻められる可能性は高い?」

「高いと思うぜ? もちろん局地戦で勝っても最終的な勝利には結びつかねえから、あくまでも陽動ってことだが」

「ですよね……」


 ヒトシもわかってたっぽいな。

 しかしマツモティー村が攻められる危険は減らねえ。


「悪いがオレは手助けしてやれねえ。主戦場になる街道沿いで働けって言われてる」

「はい、そうだとは思っていました」

「すまんな。もう少しオレの予想を話しておくならば、あの魔物も出る森の道から攻めてくるならば、正規の軍や騎士の可能性は低い。傭兵か冒険者だろう」


 正規軍は隊列をキッチリ組んで槍を並べて初めて強さを発揮するからな。

 荒れた山道でしかも少数じゃ強さを発揮できるわけがない。

 機動力も発揮できず、冒険者ほど魔物退治にも慣れていないはずだ。

 ならば正規軍は街道の決戦兵力として運用するだろう。


 ……ゼイパレス王国にはマツモティー村に回す戦力はない。

 実力からしてヒトシが一人で食い止める格好になりそうだ。

 本当に攻められるならば数十人規模じゃねえか?

 ティレニアだって陽動に高レベル者を使ってくるとは思えねえが……。


 正規の剣術を修めた者より、ヒトシにとっては傭兵や冒険者相手のほうが分がいいはずだ。

 ヒトシのレベルと持ちスキルならば十分追い返せると思いたい。

 しかし何しろヒトシには経験が足りてねえ。

 そしてヒトシのレベルと<ステルス>の強みが生かせるのは、身を隠せる森の中で戦いになってこそだ。

 村まで攻め込まれたんじゃ遅過ぎる。


「おい、ヒトシ。マツモティー村へ行こうぜ。途中で話しておきたいこともあるんだ」

「はい」


 ヒトシはよくやってる。

 しかし村の連中はどれほど危機感を持ってるんだかわからねえ。

 またヒトシの真の実力や加護の内容を明かすのも正しいと思えねえ。

 難しい対応を迫られるな。

 せめて村長にオレのほうから戦争の可能性を伝えておくとしよう。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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