第27話:策を練る
<ガイド>アリスが続ける。
『習得完了までの時間の差異というのは、スキルストーンに含まれる魔力量によるのです』
(へえ。つまり含まれている魔力量が多いと簡単に習得できるスキルストーンになるんだね?)
『そういうことです』
手に持って念じていると、身体の中の魔力は伝わるだろうからな。
意志を持って壊すと習得できるのは、魔力と別の理由なのかな?
いっぺんに魔力が通るから?
してみると呪い系のスキルストーンが簡単に習得、というか発動する状態だとヤバい?
『例えばスキルストーン中の魔力を過飽和状態にしておくと、触れただけで習得状態になります』
(えっ……呪い系のスキルストーンがそんな状態だったらすごく危ないね)
『その危ない状態をヒトシ様は作ることができます。<魔力操作>のスキル持ちでありますから』
(あっ?)
つまり何げなく呪い系のスキルストーンを柵に置いて魔力をぎゅっと詰めておけば、触っただけで<石化>する罠のでき上がり?
これは引っかかるかも。
<見破り>を持ってればよろしくないスキルストーンだってことは鑑定できても、触っただけでアウトとはかなり熟練度が上がってないとわからなそう。
<察知>を持っているなら罠って気付きそうだけど、スキルストーンと知らなければ触るくらいのことはあるかも。
(面白い罠になるね)
『例えば呪い系のスキルストーンを柵に仕掛けるとします』
(うんうん。柵に置いとくだけで何かな? って思いそうだもんね)
『それでも問答無用で柵を壊すという行動をティレニアの手の者が取った場合、スキルストーンはムダになります。スキルストーンは高価なものですから、ヒトシ様に金銭に換えたい希望があるなら、この方法はお勧めできません』
(いや、やろう。敵軍の足を止められる可能性が高いから)
<麻痺>と<石化>のスキルストーンを両方とも仕掛けておこう。
この廃道から侵攻してくるのは、おそらくは陽動か遊撃の役割を担当する少人数の軍だ。
<麻痺>はともかく、<石化>を解ける術者が同行している可能性はごく少ないと思う。
なら引っかかれば確実に敵軍の戦力を削ぐことができる。
また引っかからなかったとしても、罠を意識させさえすれば成功と言っていいんじゃないかな。
ヤバいと用心するようになるから侵攻スピードは確実に遅くなるはず。
ぼくが敵軍の侵攻に気付いて、前もって村に注意喚起できる可能性も上がる。
……以前メイエスに行った時に感じたんだけどさ。
スキルストーンは確かに高価だよ?
でもしょっちゅう売るのはムリだと思った。
一個だけ売ったんだけど、ボウズこれどうしたんだって散々聞かれちゃったもん。
ザックさんから預かって売っとけと言われたって誤魔化したよ。
ぼくが有名な冒険者にでもなれば別なのかもしれない。
でもそれっていつの話?
有名になったって【スコップ】の加護の効果を知らせずに、ぼくがスキルストーンを手に入れることのできる理由を説明することなんてできないよね?
じゃあぼくにとってスキルストーンは、自分で使うか誰かにあげるものだ。
呪い系のスキルストーンなんて、<ストレージ>の肥やしになってしまうに決まってるじゃん。
利用できる機会があるなら、惜しまず使っちゃうのがいい。
『では、比較的目立ちそうなところに置いて、触らず魔力を充填してください』
(わかった。でも敵軍が引っかからなくてそのまま置いてあると危ないかもしれないねえ)
『その場合は魔力を抜き、スキルストーンを回収すればよろしいです』
(あ、逆に魔力を吸うことも可能なんだったね。思ったよりも<魔力操作>のスキルって使い勝手がいいんじゃない?)
『普通は精霊の卵を見つけることなど非常に困難ですし、スキルストーンを掘り出すこともありませんから』
(そうだった)
ぼくだと利用できる機会が多いかもってことか。
いや、今後精霊の卵を手に入れることなんてないだろうし、呪い系スキルストーンを罠で使うこともないかも。
たまたまレアケースが重なっただけだな。
さて、ここに置いとけばいいだろう。
魔力を注入っと……これ以上入んないみたいだな。
念のため<見破り>で見てみたけど、少なくともぼくでは<石化>のスキルストーンであることしかわからない。
今後危険があるかもしれないし、<偽装>されたアイテムだって目にする機会だってあるんだろう。
ぼくも<見破り>の熟練度を地道に上げていかなければならないな。
よし、これでいい。
行きに何ヶ所かアイテムが埋まってる場所をスルーしてきたんだ。
帰りに掘り出していこうかな。
そして門番さんにお土産のお肉をあげないと、何やってたって疑われそうだな。
ちょっと時間が早いけどお弁当を食べよう。
いただきまーす。
◇
――――――――――村外れの門番視点。
「ただいま戻りました」
「おいおいおいおい。ヒトシ、何だそれ?」
この頃ヒトシは勉強に穴掘りに張り切っててよ。
今日は村長の家での勉強が休みだったそうで、一日村外れの門から外に出てた。
……おそらく魔物の森まで行ってるんだろうけどよ。
ヒトシの敵になるような魔物はいねえんだ。
一番手強いのはシャドウウルフの群れだろうが、ヒトシにはスコップで土くれを飛ばして一掃できる呆れた技がある。
あれはマジですげえ。
だから心配なんかしてなかったけどよ。
帰ってきたら頭にフクロウ乗っけてるんだぜ?
予想外も過ぎるだろ。
しかも俺にはわかるが、ただのフクロウじゃねえ。
<簡易鑑定>が通らねえから正体が不明だ。
邪気がないから魔物じゃねえんだろうが……。
「精霊の卵を拾いまして」
「精霊の卵だあ?」
「孵ったらぼくに懐いたんです。ソラと名付けました」
「はあ? 精霊獣ってことか?」
「ソラ、門番さんに挨拶しときなさい」
「ホー」
おいおい、精霊獣だと?
いや、でも精霊獣だとすると辻褄が合うな。
ヒトシがレベル一〇を超えてることは間違いねえだろ。
だから<簡易鑑定>は持ってるだろうが、精霊の卵って<簡易鑑定>でわかるもんか?
断言したところを見ると、もっと上位のスキルを持ってるのかもしれねえな。
ゴールド冒険者ザックの弟子だし。
「ほえー、精霊獣なんて初めて見たぜ」
「どうしたらいいですかね?」
「は? どうしたら、とは?」
「急に精霊獣なんて、怪しいような気がして」
「いや、ヒトシは正体のわからねえレベルといい、スキルが多そうなところといい、俺から見ればメチャクチャ怪しいぜ?」
いや、落ち込ませる気はなかったんだけどよ。
「誰かに説明する時は卵から孵って懐いたって言えばいいじゃねえか」
「突っ込まれそうじゃないですかね?」
「説明を足せよ」
「説明を足す、ですか?」
「……俺はこの森の道からティレニアが攻めてくるかもしれねえと思ってるんだ」
根拠もねえし、村人が浮足立つだけだと思うから言わねえけどよ。
「ぼくもそう思って、今日実は国境まで見てきたんです」
「マジかよ」
いや、ヒトシやたらと足速えもんな。
しかしカンのいいヒトシも怪しいと考えてるのか。
「特に変わったことはなかったです。最近誰かが来た形跡もないですね」
「その精霊獣が懐いてるなら、国境付近まで偵察してもらうことはできねえか?」
「あっ、門番さん頭いい! ソラ、できるよね?」
ホーホー頷いてるわ。
精霊獣と意思疎通できるってのは本当なんだな。
「ならば精霊獣の素性どうこうよりも、偵察できるありがたい手段が手に入ったってことで村人を納得させろよ。俺も手伝ってやるからよ」
「ありがとうございます! これ、お礼のお肉です」
「おお、すまんな」
ヒトシのおかげで食生活が充実するぜ。




