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穴掘りの加護『スコップ』は、思ったよりも無双です?  作者: 満原こもじ


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第23話:<威圧>の効能

「門番さん、おはようございます」

「おお、ヒトシか。朝早くから御苦労だな」


 村外れまでやって来た。

 今日は隣国ティレニアとの国境まで行ってみようと思ってるんだ。

 身体強化魔法を使って走れば、楽々行って帰ってこられるはずだから。


「今日はお弁当も持ってきたんです」

「おっ? 森の中の、かなり先のほうまで行くつもりなんだな?」

「ええと、まあ、はい」


 もっと遠く、国境まで行くんですとは、ちょっと言いづらいな。

 誤魔化すのは好きじゃないけど仕方ない。


「ハハッ、ヒトシの実力は知ってるから心配はしてねえけどよ。あのザックって冒険者からも許しが出てるんだろ?」

「はい」

「大したもんだぜ。しかしお前、どこに向かってるんだ?」

「えっ?」


 どこに向かってるって、どういうこと?

 ちょっと門番さんが何言ってるかわからないんだけど?


「いや、ヒトシは強えよ? それはダドル達を助けた時にようくわかったんだけどよ」

「ありがとうございます?」

「何だよ、その疑問形は。ただお前の穴掘りの加護は戦闘向きじゃねえだろ?」

「戦闘向き……とは言えないですね」

「だろ? いや、あの土くれ飛ばしはわけわかんねえくらいすげえよ? だけどあれって、たまたま戦闘に有効だと気付いて磨いた技なんだろ?」

「そうです」

「スコップってもん自体が武器じゃねえから、剣や槍と近距離で対戦になった時どうかってこともある」

「確かに」

「それを踏まえてだ。ヒトシは冒険者や傭兵で食ってくわけじゃねえんだろ?」

「ぼくは……」


 そうか、門番さんに将来を心配されているのか。

 ぼくが魔物を狩れることは知ってるけど、冒険者専業に向いてる加護ではないと思われてるから。

 ぼくの加護【スコップ】は価値あるものを掘り出すことができるんで、お金には困らないんだけどな?

 【スコップ】の仕様については話すべきじゃないと言われているし。

 門番さんにはどう説明しようか……。


「……将来を決めているわけではないんですけど、ぼく、メイエスで冒険者登録しているんですよ」

「ああ、そう言ってたな。ゴールド冒険者ザックの力添えだったとか」

「はい」


 ここはザックさんの権威に縋っとこ。


「目的はものを売るためです。マツモティー村では処分できないものもたくさんありますから」

「ははあ。ヒトシはザックに目利きも鍛えてもらってるんだな? 有用な薬草や素材みたいなもんも手に入る。冒険者ギルドなら依頼に沿ってりゃ高く処分できることもある、か」

「そういうことです」


 本当は【スコップ】の加護で掘り出したアイテムを売りたいからだけど。

 いや、でも毛皮や魔石や薬草も結構売ってるなあ。

 冒険者ギルドに登録できてよかった。


「ぼくはザックさんに見込んでもらってラッキーでしたよ」

「いや、ラッキーだけじゃねえことくらいわかるぜ。ヒトシは慎重なクセに大胆だし、覚えも早えもんな。ゴールド冒険者と縁があったのはラッキーかもしれねえけどよ。見込まれたのは偶然じゃねえよ」


 わあ、ぼく門番さんにも高く評価してもらってるんだなあ。

 自信になるよ。


「ここの森で魔物を倒して肉や素材を得ることはできます。だから生活には困らないかと」

「だよなあ。強さを求めるのでなければ、必ずしも加護が向いてなくともいいって考えか」

「はい」

「普通は加護を職業に結びつけて考えることが多いと思うぜ? でもヒトシの場合は出会いから将来を決めたってことだな」

「いや、ぼくは王都の学校で勉強しようと思っているんですよ。だから今もう将来を決めたってわけでもなくて」


 あれっ?

 門番さん驚いたような顔してるな。

 ぼくが王都の学校で学ぶって意外なのかな?


「ほお? ヒトシはレベル〇と一の壁を越えているじゃねえか。それどころかこの辺の魔物なんざ敵じゃねえだろう? それなのにまだ王都に行こうとしてるのか」

「えっ? そりゃまあ、はい」

「壁越えのために学校で学びたいってやつは多いんだよ。しかしそれ以上になるとな」

「父ちゃんが王都で学べって言うんですよ」

「それを聞いて学校へ行こうっていうのか。やっぱりヒトシは偉いな。志があるわ」


 そんな大層なものじゃないんだけど。

 まだまだぼくは知らないことが多いからってだけ。

 褒められ過ぎて恥ずかしい。


「じゃあぼく行きます」

「おう。弁当持ちだと遅くなるんだな?」

「夕方までには帰ってきますよ」

「よし、行ってこい。気をつけてな」


          ◇


 身体強化魔法をかけてどんどん走る。

 レベルのおかげか魔法のおかげか。

 毎日の穴掘りや魔物狩りのおかげで、体力もついてるんだろうな。

 荒れてる道なのに、あんまり疲れずに先へ行ける。

 経験が身になっているんだなあと実感できて嬉しい。


 あ、クマの魔物の魔熊だ。

 どうしようかな。

 やっつけてもいいけど、解体してると図体がデカいから時間かかっちゃう。

 今日は国境まで見てくるのが目的だし。


 スコップ土くれアタックで手加減すると、却って怒らせちゃうかな?

 あ、そうだ。

 <威圧>、レベル三〇の自然習得スキル。

 これ使ったことなかったから実験してみよ。

 ええと、目に力を入れてクマの魔物を睨む。

 よし、逃げ出した。

 魔物とはいえ、ムダな殺生はしたくないからね。


 <ガイド>アリスに聞く。


(ねえ、アリス。今の<威圧>はどうだったかな?)

『初めてにしてはよろしいのではないでしょうか? ただ<威圧>は相手を退散させるためだけに用いるスキルではありません』

(そうなの? どういう時に使えばいいの?)

『<威圧>で竦ませることができれば、相手の行動を制限することができます』

(行動を制限……あれっ? じゃあ逆に食らうとかなり危険なスキルなのかな?)

『その通りです。<威圧>を使ってくるのは、人間にしても魔物にしてもかなりの強敵です』


 そうだ、<威圧>されたりすると逃げることすらできないかもしれない。


(<威圧>されないためにはどうすればいいかな?)

『もちろん自分のレベルが上がるほど<威圧>されにくくなります。またパッシブスキル<侍魂>があれば<威圧>は無効です』

(パッシブスキルって各種耐性みたいなやつだよね? 習得していれば自動的に効果のあるやつ)

『そうです。ただし<侍魂>のスキルストーンはレアです』


 レアなのか。

 まだまだ手に入れたいスキルストーンってたくさんあるなあ。

 スコップを持ってない時のために、<投石>や体術系スキルが欲しい。

 レアじゃないはずなのに出ないんだよな?

 ひょっとして埋まってる場所って地域的な偏りがあったりする?

 まあしょうがないんだけどさ。


『<侍魂>のスキルストーンを得られるか否かは運です。しかしヒトシ様はやっておくべきことがあります』

(何だろ?)

『<威圧>の熟練度を上げることです。今まで魔物は倒すべき対象でしたから、<威圧>を使用する機会はありませんでした。しかし本日は国境までの偵察が目的です』

(魔物に出会ったらガンガン<威圧>を使って、熟練度を上げておけということだね?)

『さようです。<侍魂>がレアなスキルである以上、相手も持つ者が少ないということです。瞬間的に<威圧>を放つことができれば、自分のレベル以下の相手に負ける可能性はかなり低くなると考えてよろしいかと』

(あっ、すごく重要だなあ)


 今まで<威圧>の重要性を考えたことがなかったよ。

 瞬間的に<威圧>を放って相手を怯ませろってことか。

 魔物相手より、むしろ一対一の対人戦で必要になってくるスキルかも?


(わかった。今日は出遭う魔物を全部<威圧>して、練習を重ねていくよ)

『はい、それがいいと思います』


 国境まで行く道中にもやってくことができたぞ。

 頑張ろう。

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