第22話:また手に入れた
風の心地よい季節だね。
ぼくは相変わらず穴掘りマンです。
あちこち掘っては有用なアイテムを手に入れ。
いや、最近は魔物を倒して毛皮や魔石を確保したり、薬草を見つけて摘んだりすることも多いかな。
時々メイエスまで走っていって、不要なアイテムを売却している。
魔石や薬草は欲しがる人が多いのか、依頼になっていることが多いの。
依頼をこなすと貢献ポイントが上がるから、地道にやっていると自分の冒険者ランクを上げられるんだよね。
冒険者ランクはミスリルやプラチナのような超人ランクを除くと、上からゴールド、シルバー、ブラス、アイアン、チン、レッドに分けられている。
ぼくは当然最下級のレッド級だよ。
年齢も足りてないから下っ端で全然構わないんだけど、魔物の討伐依頼を請けられるのはチン級以上だから、一二歳になったらすぐランクアップできるよう、貢献ポイントを稼いでおきたいな。
ただ一二歳は学校に入学する時だから、急がなくていいのかも。
また村長の家で勉強もしているから、座学も充実はしているんだ。
ダドルとホリノとカズも、最近では真剣に勉強しているよ。
勉強の時はパルが眉根に皴を寄せてるんだけど、そんな顔も可愛いの。
先日のダドル達の誘拐未遂事件というか誘拐されかけ事件で。
どうやら隣のティレニア王国が攻めてくる可能性が高いらしいということがわかって、村中が騒然となった。
だけど……。
「ティレニアが攻めてくるとしたってよ。街道沿いだろ?」
「北の街道からだってマツモティー村まではかなり距離があるわ。戦場になることはないわ」
「これこれ。我々は物資を支援しなければならないのだぞ。油断してはいかん」
皆が皆してこういう意見なの。
ティレニアからマツモティー村に繋がる旧道はあるけれど、魔物が出るような森と山を越えて敵軍が来るなんてあり得ないって。
でもなあ。
この前の悪漢三人組は山越えの旧道を知っていて、帰り道に使おうとしてたんでしょ?
じゃあティレニア軍が旧道から突然マツモティー村に現れることだってあり得るんじゃないの?
ただ悪漢は『オレ達も地図上でしか知らねえ道なんだ。こんなに荒れてる全然使われてない道だとは思わなくてよ』と言っていた。
じゃあ実際に見て行軍には使えない道だと思うものなのかな?
皆の言う通りで、ぼくが心配し過ぎ?
(アリスはどう思う?)
あちこち穴を掘りながら、<ガイド>アリスに聞いてみる。
アリスの分析は確かだもんな。
『ティレニアから山越えでマツモティー村に至る道は、大軍の行軍は不可能でしょう』
(うんうん、確かに)
『しかし陽動の一隊を差し向けてくるとことは十分あり得ると思います』
(アリスの見解でもそうか)
じゃあ油断すべきじゃないよね。
でもぼくだけが騒いでると、何言ってるんだと思われそう。
(どうすればいいかな?)
『村人に危険性を認知させるのが最もいいです。しかしそれが現実的でないのなら、ヒトシ様が単独で山越えの道を偵察するべきだと思います』
(単独でか。それはどうしてかな?)
『まずヒトシ様は近頃最もこの道に足を踏み入れているため、慣れているということがあります』
(確かに)
この前の三人の悪漢を簡単にやっつけることができたのも、道を知っていたので<ステルス>の効きがよかったということが大きな要因だと思う。
地の利は重要だなと感じさせられたよ。
角ウサギが現れたのでスコップ土くれアタックで倒し、皮、肉、角、魔石を得た。
随分慣れたものだなあ。
『第二の理由として、ヒトシ様の偵察ならば、<察知>や<直感>で得られる情報が多いです。誰かが同行したとしても、ノイズが多くなってしまうのではないでしょうか?』
(うーん、ありそう)
ザックさんみたいに戦い慣れしてる人が同行者ならともかく、そうでない人だと却って邪魔かもしれないな。
お喋りしてて必要な情報を見逃がしちゃうことだってあるかも。
『第三の理由として、ヒトシ様以上のレベルの者はマツモティー村におりません。仮に敵軍に発見されて戦闘になるなり逃走するなりの場面があるとします。ヒトシ様一人ならスコップ土くれショットを浴びせて混乱させ、その隙に逃げることが可能であっても、同行者は確実に足手まといになります』
(アリスの言う通りだね)
結論としてはぼくが一人で偵察か。
ちょっと怖いけど、それが気楽だな。
『この道もよりティレニアに近い側のデータがありません。最低一度はもっと先まで、可能なら国境付近まで調査すべきだと思います。ティレニア軍なり軍に協力する冒険者なりが、国境を越えて前進基地を構築している可能性もありますから』
(なるほど。アリスは賢いな)
前進基地なんか作られていたら、電撃的にマツモティー村が攻められることがほぼ確定だもんな。
もし怪しいものを見つけたら門番さんに報告して、前進基地をこっそり見せよう。
村長を説得して村人の警戒レベルを引き上げることができそう。
ともかく時間のある時にもっと先までチェックしておくこと。
それがぼくのやるべきことだな。
ん? 何かがぼくの意識に引っかかった。
【スコップ】の加護の感覚だな。
いいものが埋まってるっぽい。
毎度掘り出す時は楽しみなんだけれど、すごく禍々しい感じがする。
これは一番最初に魔王のコアを見つけた時の感覚に似ている。
でも魔王なんて何人もいるもんじゃないよね?
(アリス、どう思う?)
『情報が少ないです。掘り出して<見破り>を使用してみていただけませんか?』
そうだな、現物を<見破り>で見るのが確実だ。
がががっと掘ると、やはり握りこぶしくらいの大きさの石が出てきた。
そしてやはりすっごいムカムカする嫌な感じがする。
でも魔王のコアよりはパワーが弱い気がするな。
<見破り>で見てみると……。
(高位魔族のコア、だって)
『魔王ではないですが、それに近いくらいの実力のある魔族の分体ということでしょう』
聖見官ルルイフ様が言っていた。
高位魔族は命を分けておくことがあるから滅ぼすことが難しいと。
ごく少量ずつ魔力や邪気を集め、数十年かけて復活すると。
(ふうん、魔族の中でも結構な実力者ってことか。復活する前に見つけられてラッキーだなあ)
『その辺りが【スコップ】の加護の規格外のところかもしれません』
(それにしてもこの前魔王のコアを壊したところなのに、また見つけちゃうとか。復活途中の高位魔族がそんなに多いわけないよね? 何でだろ?)
『推測になりますが、高位魔族の分体コアが復活するための魔力なり邪気なりを効率よく集められる場所は、かなり限定されているのではないでしょうか?』
(なるほど?)
魔物が湧くところって、邪気が多いからって聞いたことがある。
もっと強い魔物がいる場所のほうが邪気が強くて、復活までの時間を短くできそうな気はするけど、そんな簡単じゃないんだろうな。
強い魔物に発見されて壊されちゃうとか?
『破壊すれば多くの経験値を得られると思います』
(魔王のコアの時と同じだね。このコアは取っておくよ。ザックさんにあげようと思う)
ぼくのレベルはザックさんより高い。
にも拘らずぼくがザックさんに師事しているというのは、いつか誰かに理由を聞かれそうな気がする。
レア加護【スコップ】持ちであることがバレる原因にもなりそうだから。
『ティレニア軍が攻めてくる可能性が高い今、ヒトシ様のレベルを少しでも上げておくことは重要かと思いますが、それでもですか?』
(うん)
目先のことよりもザックさんとの関係は重要だからね。
「さて、今日はそろそろ帰ろうかな」




