第18話:追いついた!
「ヒトシ、やっぱお前は大したもんだぜ」
「えっ? 何がでしょう?」
急いでダドル達をさらった三人の男達を追っている途中なんだけど。
門番さんに褒められたっぽい。
「人間との戦いになる。剣術の試合じゃねえ。命のやり取りになるんだぜ? それなのにえらく落ち着いてるからよ」
「ザックさんに色々教えてもらってますから」
というか実際にタスミン姫が襲撃された戦いに参加したから。
あれに比べれば敵の数は少ない。
敵にも仲間がいて合流するってことがなければだけど。
「ザックかあ。あいつってすげえやつなんだろ?」
「この前ザックさんとメイエスの町に行ったんですよ。ぼくを冒険者登録してもらうために」
「ああ、メイエスには冒険者ギルドの支部があるよな」
「ザックさんはゴールド冒険者で、ギルドの受付のお姉さんも名前を知ってたくらいなんです」
「えっ? ザックってゴールド冒険者なのかよ。憧れるわ」
冒険者のランクとしてゴールドの上にプラチナとかミスリルとかのランクがあるらしいんだけど、そんなのはごく一部の超人か名誉ランクだと聞いた。
ゴールドというのは実働冒険者の最高ランクなんだって。
若くしてゴールド冒険者のザックさんはすごいの。
ぼくはそんなすごい人に色々教えてもらってると思うと、申し訳ないくらい。
一生懸命覚えないといけないね。
「そうか、ゴールド冒険者に仕込まれてりゃ度胸もつくわな」
「そうなんですかね?」
「ザックがヒトシを見込んだってのもわかるぜ。素直だし、やたらと覚えがいいしな」
「褒められると嬉しいなあ。今度角ウサギの肉、多めにサービスしますね」
「ハハッ、すまんな。今更で何だが、ヒトシって森の中に入ってるんだろ?」
一応ぼくは森の外に出てきた角ウサギを狩ってることになってたから。
実際には角ウサギ以外の魔物の素材や毛皮は<ストレージ>でしまってあるの。
<ストレージ>も便利だなあ。
「バレてましたか」
「まあヒトシは慎重だから無茶なことはしないだろうしな。どんな技で魔物倒してるんだ? お前スコップしか持ってないから想像つかなくてよ。いや、秘密なら秘密でいいんだが」
「これで倒しているんですよ」
スコップ土くれショット!
スコップ以外の持ちスキルはある程度秘密にしとけとは言われているけど、これは見せておかないとね。
門番さんには特に。
「うおお? 何だそれ? 土が木にめり込んでるじゃねえか」
「かなりコントロール利きますし、一回の土くれショットで分け撃ちもできるんですよ。レベル一〇以下の魔物なら一発で倒せます」
身体強化魔法<ストロング>を併用すると、もう少し威力出るけどね。
「【スコップ】の加護って思ったよりすげえじゃねえか。これで魔物を倒してるのか」
「シャドウウルフの群れでも倒せるから、すごく便利で」
「マジかよ。穴掘り侮れねえな」
「戦闘系の加護じゃないから、近接戦闘とかはダメですけれどね」
「おう、それもそうか」
「そこでぼくから提案なんですけど」
門番さん興味深そうだな。
「ザック仕込みの作戦か。話してみろ」
「ザックさんには不意打ちしろ、自分の得意な局面で戦えって言われているんです」
「もっともだな。どうやって遠距離攻撃が得意であるヒトシ有利な局面にする?」
「まずぼくが先行して、隠れながら犯人達を追います」
「え? 大丈夫かよ?」
「ぼくこの道よく知ってますから」
門番さんが苦笑してるよ。
そんなに森に入ってるのかと思ってるんだろうな。
ごめんなさい。
「隠れるってのは?」
「ぼくは<ステルス>のスキルを持ってるんです」
「ああ、知ってる。発動すると存在感薄めるやつな? それもザックの仕込みかよ」
「ええ、まあ。門番さんが追いついて犯人達の注意を引いたら、ぼくが死角からさっきの土くれショットを浴びせます。少々角度が悪くても、不意打ちなら一人は戦闘不能にできると思います」
「一人倒せれば数の不利はなくなるし、足止めもできるな。戦闘を長引かせれば援軍も期待できるって寸法か」
「はい、どうでしょう?」
門番さんがニカッと笑う。
「よし、やってみろ。先行して隠れることはできるんだな?」
「任せてください。<ストロング>!」
身体強化魔法をかけてスピードを上げる。
――――――――――ダドル視点。
くそっ、完全にオレの失敗だ。
ヒトシが自分の師匠の冒険者を紹介してくれるって言ってたのに。
つい焦って怪しい他所者に声をかけてしまった。
おかげで今のおれは猿ぐつわを噛ませられ、麻袋に詰め込まれて担がれている。
ホリノも同様だ。
悪党どもが言う。
「けっ、しかし悪い道だぜ。魔物は出るしよ」
「まあまあ。代わりに安全にバカな子供を連れてティレニアに帰れるじゃねえか」
こいつらはティレニアの人さらいだった。
冒険者崩れだって言ってたのは多分本当だろう。
さっき魔物を倒したようだったから。
レベルを上げたいと言ったら、親切ごかして協力してやろうなんて誘惑してきたんだ。
冒険者は見返りのないことはしないだろうに。
最初からオレ達をさらって売り払うつもりだったんだ。
……そういやヒトシは、ザックとかいう冒険者に何を見返りとして渡しているんだろうな?
「追手が来るぞ。おめえがガキを一人逃がしたりするから」
「いやあ、来ても村の境界にいた門番一人だろ? 人数集めてる時間はねえし。余裕で振りきれるわ」
悔しいが悪党どもの言う通りだ。
こいつらと戦えて間に合いそうなのは門番一人。
三対一では勝てないだろう。
カズは無事逃げられただろうか?
カズは【俊敏】の加護持ちで足が速いから、もし魔物に追われても村まで辿り着けていると思いたい。
「これ本当にティレニアに繋がる道なんだろうな?」
「地図によればな」
「おいガキ、聞こえるか?」
「……何だよ」
「生意気なやつだぜ。この道について教えろ。どこ行きの道だ?」
「……ティレニアの山中に通じると聞いている。昔は使われていたけど、魔物が多いだろう? 北の街道ができてからは使われていないはずだ。少なくともマツモティー村には、この道でティレニアに行ったことのある者はいないと思う」
「マツモティー村ってのはお前らの住んでたしけた村のことだな?」
「……ああ」
しけた村と言われてムカッと来たことに自分で驚いた。
オレは父上の跡を継いで村長になることを期待されているけど、冒険者を志し、もっと広い世界で活躍したいと思っていたから。
つまらない村だとは、誰よりもオレ自身が感じていたことなのにな。
「この辺で一番強え魔物は何だ? レベル上げようとしていたくらいならわかるだろ?」
「……わからない。クマかオオカミの群れじゃないかな」
「けっ。頼りにならない情報源だぜ。こんなんで魔物を倒そうってんだからな」
「バカな子供なんてそんなもんだぜ?」
「シャドウウルフの数がいると厄介だぜ?」
「なあに、そうなったら囮があるじゃねえか。麻袋に詰めた、な」
悪党どもが笑う。
そうだ、ヒトシは角ウサギのことを調べていたって言ってたじゃないか。
魔物について調査し、ヒトシの師匠を待つのが正解だった。
オレは調査が先だと知っていながら、目の前に来た素性の知れない他所者をチャンスだと思って飛びついてしまった。
挙句の果てにホリノまで巻き添えにしてしまった。
本当に申し訳ない。
せめてホリノだけでも逃がしたいものだが……。
「おい、お前らちょっと待て! その麻袋を置いてけ!」
門番の声だ!
追いかけてきてくれたのか。
多分カズが事情を話したからだ。
でも三対一だぞ。
危ない!
「があっ?」
「痛え! あっ、兄い?」
「ちくしょう、やられたか。あの門番野郎、何をしやがった?」
何だ?
何が起きてる?




