第17話:異変
「あれっ? ダドル達だな」
パルと一緒に村長宅に行く途中だ。
今日はダドルの父である村長に勉強を見てもらう予定だったから。
「ダドルとホリノとカズね」
「いつものメンバーだな。でも大人は誰だろう?」
三人の大人がダドル達と話しているのだ。
見たことない人達だな。
どうも質の悪い連中に思える。
……ぼくは<直感>というレアスキルを持っている。
危険を感じやすい<察知>に似た系統のスキルだけど、もっといろんな分野で効果があるらしい。
レアだから高価だけどあまり役立たないらしいぜ、とザックさんが言っていた。
<察知>を持てないレベルの人が習得を考える、って位置付けのスキルみたい。
ただアリスによると、<直感>はレベル依存度が顕著らしいのだ。
ぼくのレベルは高いからそれなりに役に立つのでは? と考えているの。
<察知>じゃわかんないところまでわかるかもって。
どうもあの三人は<直感>に引っかかってる感じがする。
パルが言う。
「他所者よ。多分冒険者か傭兵だと思う」
「いでたちからそんな感じだね。知ってるの?」
「うちに御飯を食べに来たから。お隣の国? ティレニアの話をしていたのはチラッと聞いたわ」
「ふうん」
ティレニアか。
ぼくは詳しい事情を聞いていないけれど、第三王女タスミン様を襲わせたのも、ティレニアの手の者の可能性が高いって話だったな。
正直あんまりいい印象がないなあ。
「いい感じの人達じゃないわよね」
「パルもそう思う?」
「だっていやらしい目で見てくるんですもの」
いくらパルが可愛いからって、許せんやつらだな。
まあでもダドル達もぼく達と勉強するんでしょ?
道や店を聞かれてるだけなんだろうし、ゲスなだけでは犯罪じゃないし。
「先に行ってようか」
「そうね」
村長の家へ。
「「こんにちは」」
「やあ、いらっしゃい。ヒトシ君、パルちゃん」
村長は学もあるし、皆に尊敬されているんだ。
歓迎してくれると嬉しいな。
「今日からよろしくお願いいたします」
「いやいや、わしのほうこそ感謝しているんだよ」
「えっ? どうしてでしょう?」
感謝されるようなことは何もしていないけどな?
「うちのダドルの姿勢が変わったんだ」
「姿勢、ですか」
「ああ。ダドルは【剣術】の加護を授かったろう? 剣の稽古しかしないようになっていてね。剣の腕で成り上がるんだと、知識を軽視していたんだ」
あっ、そうだったのか。
せっかく村長は物知りなのに、もったいないなあ。
「ところがヒトシ君に偉そうなことを言われたと、勉強する気になってくれたようなんだ」
「ねえ、ヒトシ。何を言ったの?」
「この前ダドルに会った時に、勉強しているならぼくとパルも仲間に加えてくれないかって言った。王都の学校で、田舎者はものを知らないなんて思われるのが嫌だからって」
「田舎者はものを知らない? あはっ、ヒトシは煽るのが上手ねえ」
ええ? 煽ったつもりは全然なかったんだけど。
ごく常識的なことしか言ってなくない?
「さあ、では勉強に取りかかりましょうかの」
「あれっ? ダドル達を待たないんですか?」
「さ、それが今日は用があるとのことで。今日はヒトシ君とパルちゃんの、現在の知識と読み書き計算能力を調べるのだから構わないだろうと」
「そうね。ヒトシ、頑張りましょ」
「村長、ダドルはどこへ行ったかわかりますか?」
「ちょっとわからないですな」
「さっきダドルとホリノとカズを見たんです。他所者の男三人と一緒にいたのですけれど、その他所者に心当たりがありますか?」
「ないです」
ダドルはもう知識を身につけなきゃいけないって気になってると思う。
また多分ダドルはパルのことが好きだと思うんだよね。
今日なんかパルにいいところ見せられるチャンスなのに、それよりも優先することがある?
そしてその用にはさっきの怪しい三人組が関わっている可能性が高いんじゃないか。
おまけにその三人組について村長に話していない……。
「……嫌な予感がする。ぼくちょっと行ってくる!」
「えっ、ヒトシどこへ?」
「ダドル達を連れ戻しに。さっきの怪しい三人組、パルもいい感じの人達じゃないって言ってたでしょ?」
「ええ、そうね」
「村長に何も言ってないところが気にかかるんだ。ダドル達が騙されている可能性がある」
ぼくが見たところ、あの怪しい三人組はレベル一〇を越えていた。
パルが言うには冒険者か傭兵、つまり戦闘職だ。
そしてダドルはレベル〇と一の壁を越えたがっていた。
レベルを上げてやる、みたいな甘いことを言われて乗っちゃったんじゃないかな。
ザックさんが戻ってくるまで待っていればいいのに。
「パルと村長は村内で聞き込みしてダドル達を見つけてくれる? ぼくは村外れに行ってくる」
「村外れ? 魔物がいる森の近くの? どうして?」
「カンだよ!」
村外れに向かってダッシュ!
レベル上げするなら魔物がいるところに決まってる。
そしてあの道はティレニアに直接繋がっていると聞いたことがある。
怪しい三人組がティレニア人だとすると、辻褄が合う。
怪しい三人組がダドル達を騙してどんな得があるだろう?
いかに村長の息子だからと言って、ダドルが大したものを持っているわけがない。
だったら誘拐が考えられる。
身代金を請求するのか、それともダドル達が売り飛ばされるのか。
ぼくも最近<ガイド>アリスとよくお話しているから、考えが冴えてるんじゃないかな?
当たってたとしても全然嬉しくない予想だけど。
村外れの門が近付いてくる。
門番さんの他に子供がいる?
あれは……。
「カズじゃないか!」
「ひ、ヒトシ」
「門番さん、どうしたんですか?」
難しい顔の門番さんが言う。
「さっきダドルとホリノとカズ、そして胡散臭えゴロツキ三人を通したんだ。ダドルによると、レベル上げをしてもらうって話だったからなんだが。そしたら今、カズだけ走って戻ってきてよ」
「ウソだったんだ! やつらはオイラ達三人を捕まえて奴隷にして、ティレニアで売るって……」
「奴隷だと?」
「オイラだけ縛られる前に暴れて、何とか逃げ出してきたんだ。でもダドルとホリノは捕まっちゃった」
やっぱり!
カンが冴えてた。
ダドルとホリノを担いで徒歩なら、今追いかければまだ間に合う!
「くそっ、外道だな!」
「敵は三人だけ?」
「うん。お願いだ! 助けてくれ!」
「門番さんとぼくで助けに行く。カズは誘拐犯が現れたって村で騒いで、戦える人達で援軍を組織してもらって。必死で逃げてきて疲れてるかもしれないけど、なるべく急いで」
「う、うん」
「おいヒトシ。お前子供だろうが。そんな危ねえことさせられねえよ」
あの怪しい三人組を甘く見てるわけじゃないけど、ぼくはレベルがあるから大丈夫。
「門番さんもあの怪しい三人組を<簡易鑑定>で見てるでしょ? 門番さんじゃ三人相手にするのはムリだよ」
「……ヒトシよ。お前得体が知れねえな。<簡易鑑定>も全く通らねえし、どうなってんだよ?」
「そこは内緒で」
「ハハッ、あのザックっていう冒険者の仕込みか?」
「そうです」
レベル差があるし<隠蔽>もあるから、もし<見破り>を持ってたとしてもぼくのステータスは見えないはず。
<簡易鑑定>では何もわからないと思う。
門番さん苦笑してるけど。
「……ヒトシの手を借りなきゃいけねえみたいだな。巻き込んじまってすまねえが、協力してくれ」
「はい。必ずしもぼく達だけで勝たなくてもいいじゃないですか。援軍が来るまで食い下がっていればいいんですから」
「ヒトシの言う通りだな。よし、行くぞ!」
「はい。カズ、頼むね」
「う、うん」
また対人戦だぞ?
魔物相手のほうが気が楽なのになあ。




