第15話:方針を決める
「ほお。あのザックって冒険者は、王都でも有名なやつなのか」
「そうみたい。ぼくもビックリした」
マツモティー村に帰ってきて、父ちゃんと話をする。
結構な冒険だったからなあ。
お姫様と知り合うなんてことがあるとは思わなかったよ。
あ、ぼくはメイエスで無事冒険者登録することがができたんだよ。
もちろんザックさんと護衛の隊長さんの推薦状のおかげ。
時々走っていって、あんまり怪しくない不要アイテムを売却処分しようと思う。
「で、ザックがヒトシのレベルを上げてくれたと」
「うん」
本当は魔王のコアを壊したせいだから違うけど、そういうことにしとけって言われてるの。
父ちゃんをも誤魔化さなきゃいけないのは本当に申し訳ないなあ。
「ザックはどうしてそんなに親切なんだ?」
「うーん、これ内緒だよ? ぼくの【スコップ】の加護はただ穴掘りが得意ってだけでなくて、価値のあるものが埋まってる場所がわかるんだ」
「そうなのかよ?」
「ザックさんには欲しいものがあってさ。それを掘り出したらあげることになってるの。その代わりに色々なこと教えてもらったり、経験させてもらったりしてる」
「ちなみにヒトシが掘り出せて、一流の冒険者が欲しがるものって何だ?」
「父ちゃんスキルストーンって知ってる?」
「おう、知ってる知ってる!」
メッチャ食いついてきたぞ?
「ぎゅっと握って念じればスキルを覚えられる石だろ?」
「うん」
「そうか、スキルストーンを見つけられるのか。俺も見せてもらったことあるが、あれ、普通の石と全く見分けつかねえだろ」
「そうだね。<見破り>を持ってないと難しいと思う。ぼくも最初掘り出したはいいものの、何だかはわからなかったんだ。スキルストーンというものも知らなかったし」
「今はわかるのか?」
「聖見官様が<見破り>のスキルを持っていたんだよ。それでぼくの掘り出した石を見せてスキルストーンだと教えてもらって。たまたまその中に<見破り>のスキルストーンがあったから……」
「つまり今のヒトシは<見破り>も使えるってことか」
「そういうこと」
「何とまあ」
父ちゃんが呆れたような顔をしている。
「<見破り>だけじゃなくて、もっとたくさんスキルを習得しているんだな?」
「いくつかはね。聖見官様やザックさんが言うには、ぼくの【スコップ】の加護はヤバい加護みたいなんだ」
「だよなあ。スキルストーンって鑑定系の加護かスキルの持ち主がたまたま見つけたものが市場に出回るんだろ? 狙って手に入れるなんて聞いたことないわ。大金持ちになれるわ」
「だからぼく自身が悪用されることがあり得るんだって。身を守る手段は持っておけということでさ」
「なるべくスキルも習得しておくのか」
「欲しいスキルが手に入るわけじゃないけどね。父ちゃんも他人に聞かれたら、ぼくの加護は穴掘りとだけ言っといてよ」
「おう、わかった」
ようやく父ちゃんに魔王のコア以外のことは言えた。
誰にどこまで言っていいのか、判断基準がないから難しかったんだ。
相談できるザックさんや<ガイド>アリスのおかげだなあ。
ぼくは恵まれているよ。
「もうヒトシはレベルも上がっているんだろう? 将来はどうするんだ?」
「将来というと?」
「学校は行くのか?」
「あ、言ってなかったね。お姫様を助けた時の礼として、王立アカデミーに入学試験と授業料なしの特待生で入学できるようにしてくれるって」
あれっ?
父ちゃんが珍妙な顔をしている。
どうしてかな?
ゼイパレス王国一の学校でタダで学べるのはいいことだと思うけど?
「……よりによって王立アカデミーかよ」
「うん、すごいでしょ?」
「おう、まさかのアカデミーとはな。しかし王国中の貴族の子弟が集まる学校だぞ? そんなところに平民特待生が入学したら、どんだけできるやつなんだと思われるだろ」
「えっ?」
背中がヒヤッとした。
いや、ぼくはやっと字が読めるくらい。
書くほうはかなりあやふや。
入学できても落第しそう?
ぼく舞い上がってて全然自分自身のことが見えてなかったな。
「おまけに上流階級同士は結構顔見知りかもしれないけどよ。ヒトシは知り合いが姫さんしかいねえんだろ?」
「……ほんとだ。父ちゃんどうしよう?」
「俺がわかるわけねえだろ。ザックが戻ってきたら聞いてみろ」
「う、うん」
でもザックさんだって、王立アカデミーに通ってたとは思えないしなあ。
様子くらいはわかるかな?
「ヒトシが今できることは、できるだけ勉強しておくことくらいじゃないか?」
「勉強か。そうだねえ」
「落ちこぼれたら絶対に悪目立ちするからな」
ええ? 脅かさないでよ。
マツモティー村で一番の知識人は、やっぱり村長だと思う。
幸い息子のダドルは同年だ。
ダドルも王都の学校に入学するって言ってたから、きっと勉強してるんじゃないかな?
ぼくも一緒に勉強させてもらおう。
それにぼくには<ガイド>アリスがいる。
アリスは基本的なことは知っているし、ぼくの見聞きしたことは知識として整理してくれる。
だから勉強した時の知識の吸収効率なら、ぼくは誰よりも上のはず。
<見破り>もあるし、教養的な知識については何とかなるんじゃないかな?
「可能なら村長に教えてもらえ」
「どう考えてもそれが一番いいよね。村長に相談してみるよ」
えらいことになった。
でも今気付いてよかったな。
パルも王都に行きたいって言ってたから、勉強するべきだと思う。
村長かダドルに頼んでみよっと。
「まあしかし、ヒトシは大したもんだ。加護をくれた神様にはよく感謝するんだな」
「うん」
「金は大丈夫なのか? 入学金授業料はタダでも、王都は生活費がかかるぞ? 俺がある程度は用意してやれるが」
「ありがとう。でも平気だよ。ぼくはメイエスの町で冒険者登録をしたんだ」
「ふむ、冒険者登録?」
「冒険者ギルドでは適正な価格で買い取りをしてくれるんだよ。だからお金については本当に大丈夫」
「スキルストーンを売るってことか?」
「いや、スキルストーンの売買は目立つから、できるだけやめろってザックさんに言われてる」
買うほうはまだいいけど、しょっちゅう売ってたら怪しいもんな。
「他にも売るもんがあるのか?」
「薬草はいつも買い取り依頼が出てたよ」
「ああ、<見破り>持ちだと薬草探しも簡単なのか。」
そんな簡単ではないんだよ。
じっと見れば鑑定できるけど、草原を見てあそこに薬草があるってパッとわかるほど便利ではないの。
いや、でも慣れなのかな?
熟練度次第の気がする。
あ、<察知>を鍛えたほうが早いのかな?
色々やってみないといけないなあ。
「スキルストーン以外にも、素材とか珍しい鉱石とかを見つけることもあるし。魔物をやっつければ魔石も手に入れられるし」
「ほう?」
「そういうのを売ればいいんだ。だからお金は本当に大丈夫」
父ちゃん、ちょっと寂しそうだなあ。
「だからアカデミーでも恥ずかしくないようなスコップを作ってよ」
「おうともさ!」
ハハッ、元気になった。
ところで……。
「父ちゃん、スキル欲しくない?」
「ぜひ欲しいな。スキルってのは憧れだぜ。だが俺はレベル〇だから、スキルを習得したところで発揮できねえんだ」
「わかってる。ぼくがいつも穴掘りに行ってる村の外は、時々角ウサギが森から出てくるんだ。レベルも合わせてプレゼントするよ」
「ヒトシ、お前って親孝行なやつだなあ……」
父ちゃん泣いて喜んでら。
アリスに相談したら、親孝行してやれって言ってたの。
ぼくの持ってる余りのスキルストーンに、回復魔法<ヒール>と<火抵抗>があってさ。
鍛冶屋で火傷しがちの父ちゃんにはピッタリだと思うんだ。




