第14話:王立アカデミー入学?
――――――――――ザック視点。
姫さんはヒトシに興味があるようだな。
「ヒトシさんの実力はどうなのですか? ごめんなさい、わたくしは馬車から顔を出すなと言われておりましたので、勇姿を拝見することができなかったのです」
「小官も知りたいですな。いや、ある程度の戦闘能力があるとは理解している。ザック殿の弟子だということもわかっているが、見えない部分が多くてね」
このデクスターという護衛隊長は<察知>持ちだから、ヒトシが高レベルであることもわかるんだろう。
ただしヒトシは<隠蔽>持ちで、<簡易鑑定>なんか通らねえ。
この少年は何なんだと、護衛の職にある者が興味深く思うのは理解できる。
ヒトシが困惑した顔でオレを見てくる。
それもまた当然だ。
相手は王族だから迂闊に喋るなと前もって言ってあるから。
王族だからどうこうってだけじゃなくて、ヒトシの加護もヤベえから話しづらいしな。
……ルルイフのじーさんがやたらとヒトシのことを買っている。
いや、わかる。
判明してる内容だけでも、【スコップ】はとんでもねえ加護だもん。
さすがレア加護だけのことはあるぜ。
おまけにヒトシ自身も慎重で、加護やスキルを悪用しそうにないやつだし。
ここで王家にヒトシを預けるのも一つの選択だろうが……。
過去のレア加護の持ち主で国に囲われた者は多い。
しかしそいつらが皆幸せだったかと言われるとな?
レア加護は持ち主の運命を狂わせる。
国の判断をも狂わせる。
少なくともルルイフのじーさんは、ヒトシが自分で判断できるようになるまで時間を稼げ、という考えだと思う。
オレがどう思うかって?
可愛い弟子に不幸になってもらいたいわけないだろ。
ヒトシがいいスキルストーンを掘り出せばオレにくれることになってるし、王家の管理下に入ることはオレにとっても利にならねえ。
結論、誤魔化せ。
「なかなかだぜ。隊長はヒトシのスコップで土くれを飛ばした技を見たろう?」
「見ました。あんな技を見たのは初めてなので、正直驚きましたぞ」
「個人情報だから詳しい説明はしねえが、ヒトシは穴掘り系の加護を持っていてよ。そっちの技を磨いて魔物を倒せるようになったんだぜ」
事実は違う。
魔王のコアを破壊していっぺんにレベルが上がったから、スコップで土くれを飛ばす攻撃が有効になっただけ。
順序が逆だ。
もっとも土くれショットが複数を相手にできる結構な技であることは事実。
見たことない技であることもその通り。
「ほう、それであのスコップを使用する特殊な技が」
「ヒトシはハマれば強え」
「つまり遠距離から一方的に攻撃できる状況下にあれば、ですな?」
「おう。しかし敵に寄られると隙も多くてよ。だから身を隠したり相手に情報を与えないスキルを覚えさせているんだ」
頷く護衛隊長。
ヒトシが<隠蔽>や<ステルス>を持ってることには気付いてるだろ。
本当はヒトシのスペックがバレないようにしたり、目立たないようにしたりのためだが。
こう言っときゃ納得するに違いねえ。
「ザック殿は随分ヒトシ君に入れ込んでいるのですな。スキルを与えているとは」
思わず苦笑する。
オレがスキルを与えてるわけじゃねえ。
スキルストーンをヒトシが勝手に自分で掘り出すんだぜ。
ちょっと常識じゃ考えられないことだろうけどな。
【スコップ】がレア加護たる所以だが、話せない部分だ。
「ヒトシとは約束があるんでな」
「約束ですか?」
「まあ個人的な事情だぜ」
ヒトシはいつかオレにレアスキル<見破り>をくれることになってるってことよ。
約束って言葉でいい感じに誤解してるかもしれねえが。
いや、もうヒトシは余った<毒耐性>や<麻痺耐性>等のスキルストーンをオレにくれてるの。
マジでありがたい。
「近接戦闘なんかヒトシはまだまだ修行中だ。外に出すのは恥ずかしいくらいだが、今日は緊急事態だったんでな」
「いや、御助力感謝いたしますぞ」
実際はレベル自体が高え。
そんじょそこらのやつなら、結構な加護やスキルを持っていてもいなせるはず。
「ふむ……。では我ら一行に同行してもらえるのは?」
「オレだけで十分だろ? オレはヒトシの保護者じゃねえしな。姫さんは一刻も早く王都に帰らにゃならんだろうに、ヒトシの保護者の許可を取って遅れたんじゃ本末転倒だわ」
隊長は頷いてるが、姫さんが不服そうだわ。
「ではヒトシさんは王都までついて来てはいただけませんの?」
「申し訳ありません。ザックさんの言う通りだと思いますので、ぼくはお供できません。村に帰ります」
「残念ですねえ。ヒトシさんのお住みになっている村とはどこですか?」
「マツモティーという、メイエスから徒歩で一日くらい離れた場所にある村です」
「マツモティー村……」
ハハッ、姫さんと隊長が真剣に地図見てら。
結構な距離があることはわかったろ。
つまりヒトシを王都まで伴うことは現実的じゃねえ。
ナチュラルに興味の対象から外すことができるだろ。
「ヒトシさんは年齢はおいくつなのですか?」
「一〇歳です。今年聖見式を受けました」
「まあ! わたくしと同い年なのですね!」
姫さんはヒトシと同い年だったのか。
……嫌な予感がする。
「一二歳になる年から学校へ通うというのが一般的だと思いますけれど、ヒトシさんはどうされるのですか? わたくしはそろそろ準備を考えているのですけれど」
「ぼくも王都の学校に入学したいと考えています」
「もうどこの学校に入学するか、決めていらっしゃるのですか?」
「いいえ、冒険者の学校がいいのかなあとは考えていますが……」
「では王立アカデミーはどうですか? ゼイパレス王国でナンバーワンの学校ですよ。本日のお礼として、入学試験と授業料なしの特待生で入学できるようにしますから」
「本当ですか!」
「おいこらヒトシ!」
ダメだ。
目がキラキラしてやがる。
王立アカデミーが最高の学校なのはその通りだが、ってことは貴族や富裕層の通うところだぞ?
そんなところに平民特待生として入学するって、メッチャ目立つだろうが。
お前自分のことわかってるのかよ!
しかしレア加護【スコップ】の持ち主として、ヒトシがいずれ頭角を現していくだろうことは間違いないんじゃないか。
そうなるとアカデミーで得られるであろう人脈が、将来有効に働くってことは十分考えられるな。
王立アカデミーに通うことは、リスクは大きいがメリットもまた大きい。
ちょっとオレじゃ判断がつかねえことだから、王都ロイアスに帰ったらルルイフのじーさんの意見を聞こう。
じーさんならアカデミーにも顔が利くだろうしな。
「タスミン姫、ありがとうございます!」
「いえ、ザックさんとヒトシさんの働きがなければ、わたくしは今日、命を失っていたかもしれませんのよ。全く過分な礼とは思いません」
「そうだぞヒトシ君。王立アカデミーで人格と教養を育てるべきだ」
「はい!」
ちぇっ、隊長のヒトシへの興味も再燃しちまったか。
まあでもこりゃしょうがねえな。
ヒトシはいいやつだし、今日の活躍も間違いねえし。
運命みたいなもんだ。
「ではアカデミーの守衛に、スコップを担いだ少年マツモティー村のヒトシさんのことは伝えておきますからね。入学手続きについてはそこでお尋ねくださいな」
「はい、ありがとうございます!」
「ヒトシ、王族の危機は去ったと、メイエスの冒険者ギルドに報告しといてくれ」
「わかりました」
「オレとデクスター隊長から推薦状を書く。そいつをねじ込んで何とか冒険者登録させてもらえ。お前の交渉力次第だ。これも勉強だと思えよ」
「はい」
ま、こんなとこだろう。




