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極楽地獄還魂記  作者: 有嶺 哲史
第三章 ラッピのハルマゲドン
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アリマゲドン

 娘の夢の中で二匹のアリが相撲を取っていた。

彼方まで遮る物のないすばらしい眺望に囲まれたメギドの(ハル)、すなわちハル・メギッドーン、つまりハルマゲドンの戦いだった。

二本の足は相手をつかみ、残り四本足で地面をつかんでいた。

あまりに安定しているためいつまでも決着しない。

二匹は戦いを止めて娘に向かって意外なことを言った。


「世界が終わる」


別のアリが進み出て法螺貝を吹いた。

小さな法螺貝は高音でプイーと鳴り響いた。

予算不足で、これが七人の天使のラッパの代わりだという。

それからアリ軍団の戦いが始まったがやはり、どちらも予算不足ですぐ停戦した。

そして最後の審判をするアリが真ん中に出てきて勝敗を決めた。

もう終わり? なんか違うな、と思った娘は眼の前のアリに聞いた。


「このあとどうなるの?」


「平和が千年つづく」


「そのあとどうなるの?」


「また最初からやりなおす」


「それからまた千年たったら?」


返事を聞き逃したまま夢は終わった。



 ここは地獄の中。

目覚めた娘はラッピという名だ。

かつて女形閻魔(にょぎょうえんま)をやっていたエマが、やめた後で産んだ子だ。

エマは泰山に行ってから出産したが、あまりの痛さに暴れまくったため驚いた鼠たちは一匹も居なくなった。

生まれてすぐに娘は地獄に行き、血筋が良かったので特別な羅刹女(らせつにょ)として育てられた。

今は十八の娘盛り。

大人の色気と子供の可愛さを併せ持っている。

母の神通力を受け継いで右手指から電気刺激を出すことができる。

車の点火プラグに似て、白魚(しらうお)のように美しい二本の指の間に電気火花が出る。

地獄の亡者たちへの呵責(かしゃく)として、彼らのある穴に美しい指を入れて中で拡げてバチンと電気刺激を与える。

また人差し指の先からプラズマビームを飛ばすことができる。

飛ばせる距離は母親のエマより短い。

これらが邏卒としての彼女が亡者に与える呵責だった。


 ところが亡者たちは直腸電気刺激に失神するほど喜び感謝する。

なぜならだれでも積年の便秘が治るからだ。

他にも効能があるが地獄の亡者たちは死んだ時の年齢に固定されるので大半が老人、だから便秘持ちが多い。

ラッピは仕事だからと全く気にせず直腸責めをやる。



 地蔵菩薩は普段からよく地獄に慰問に来る。

たまたまラッピに亡者と間違われて呵責をうけたことがあった。

初めての肛門責めに


「痛い! いや、気持ちいい。あぁっ、もっと! ……ラッピちゃん、上手だねえ」


地蔵菩薩と気づいたラッピは


「じゃあ、痔蔵菩薩と名乗れば?」


菩薩は残念そうに


「それ、ワシが先に言いたかった」

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