宿命の崩壊
そのときラッピのいた極楽や天界で周りの事物の存在感が明らかに薄れ始めた。
「おや? 大異変なの?」
直感した。
刀剣までもろくなった。
いろいろなものが脆くなって崩れ始めた。
原子レベルで何かが変わった。
「大丈夫かしら」
生まれ育った故郷の地獄が心配になった。
極楽地獄の両宇宙を結ぶ下り道を走り続けた。
「走れ! はしれ!」
息も継がず走り続け、やっと地獄が見えるところまで戻ってきた。
幼い頃よく水遊びした思い出の三途の川を見ると
「渡し守も奪衣婆も亡者もいない。新しい死者たち、どこに行っているの」
地獄の入り口にある大きな火山が噴火していた。
小さな噴石が赤く焼けてラッピの太腿に当たり火傷を作った。
「痛い! ああ……でも行かなければ」
さらに走って地獄の一番深い所を目指した。
やっと着いたとき紙をちぎるように空間がばらばらに千切れ始めていた。
千切れた空間に分割されたG.クルーニー似の閻魔代務者が逃げ回っているのが見えた。
「慰謝料払え! このドケチ。ヘチマ野郎」
迫る元妻にまだ追われていた。
そのときラッピに気付いたクルーニー似は逃げながらにっこり笑い、手を振った。
「ラッピちゃん、大怪我も無くてよかったね。それにしても結婚なんかするもんじゃねえな」
「そんな、夢を壊すこと言わないでよ」
「慰謝料よこせ、とボコボコにされた。見てくれ。自慢の俳優顔だったのに今は地獄さえ顔負けだ」
クルーニー似は破壊された顔で最後に精一杯笑顔を作った。
別のところでは千切れた空間に分割された牛頭馬頭がいてラッピに手を振っていた。
「ラッピちゃ~ん、大好きだよ~。みんな君を愛しているよ~」
「私もよ~! みんなを忘れないよ~」
ラッピは泣きながら手を振って皆に応えた。
「さよなら~。みんなさよなら~」
悲しくて座り込み、そのまま眠りに落ちた。




