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三年後、思わぬ再会

 あの日から3年の月日がたった。

 その間にわかったことをまとめると、




・どうやら俺は異世界に転生したらしい。

・ここは孤児院である。

・この世界には魔法がある。

・院長のダスクはとても厳しく、怒ると子供相手にも容赦がない。

・あの日泣いていたレイは双子の兄らしい。

・15歳で成人となり、この孤児院を出て独り立ちしなければならない。

・13歳には仕事をはじめ、独り立ちの軍資金を稼ぐ。




 だけだ。

 孤児院の横には救護院が建っており、そこの収入で孤児院は成り立っている。

 また、孤児院育ちの大人たちからの寄付も収入のひとつだ。

 その救護院の方を見ると、怪我をした冒険者が運び込まれるところだった。

 地面に血の跡を残し、青い顔で運び込まれている。


(毎日あんなの見たら、冒険者になろうなんて考えないよな、普通)


 少し身震いして、孤児院の一室に向かう。

 その部屋では5歳以上を対象に様々な授業が行われている。

 授業が始まる前の教室に潜り込むと、そこにはレイがすでに居た。


「今日も来たのか」


「お前こそ」


 短い挨拶。

 実の兄弟と言えど、孤児院育ちにとっては全員が家族みたいなものである。

 別に特別な感情はない。

 ダスク院長が来ると教室内は静かになる。


「今日は地理を勉強しましょう、メイス、冒険者になるのでしたらよく聞いておくように」


 冒険者志望の一人を名指しで呼ぶと、ダスク院長は黒板に地図を描き始める。


「今私たちが暮らしているカスガイの町は大陸の真ん中辺りにあります」


 そう言ってカスガイ周辺の街や川、山などを付け足していき、主だった街道を付け足していく。


(……ん?カスガイ?……もとの世界で住んでたのも春日井(かすがい)だぞ、偶然……か?)


「ん?」


 そんなことを考えていると、となりでレイも首を傾げている。


「……どうかしたか?」


 気になって声をかけると、


「いや、何でもない」


 とだけ返ってくる。


(……さては誰かにこの街の名前聞いて、間違って覚えたな、こいつ)


 レイは3歳の癖に周りの大人に色々なことを聞いて回る頭でっかちだ。

 周りの大人も最初のうちは感心していたが今ではあきれている、どうせ理解できないのに、と。


 とりあえず、レイを意識からはずし、授業に集中する。

 地理はどんな職業に就くとしても、覚えておいて損はない。

 計算や語学はともかく、地理などの常識は詰め込んでおくに越したことはない。

 ダスク院長の話が近くの街や村の位置、その土地の特産品の話に変わったのでメモを取り始める。

 中央に“春日井”と書いてまるで囲み、付近の村や街、その特産品をメモっていく。


(南に5時間ほどで海もあるのか)


 “南に5時間、海!”と追加でメモると本日の授業は終わりのようだ。


 メモをしまおうとすると、レイに腕を捕まれる。


「……ちょっとそのメモを見せろ」


 そう言うが早いか、レイはメモをひったくる。


「……なんで、漢字が書ける?」


 レイが心底驚いたように聞いてくる。


(しまった、無意識のうちに漢字使ってた!そりゃ、この歳で漢字なんて使ってたら驚くよな)


「あーっと、前に語学の授業で……」


「お前、なに言ってるんだ?()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ゾクリと、背筋が冷たくなった。

 言葉が出てこない。


「もう一度聞くぞ、なんで、漢字が書ける?」


 レイが睨み付けるように聞いてくる。


「……そういうお前は、なんで漢字を知っているんだ?」


 俺がそう聞くとレイは言葉に詰まった。


「……それは……」


 レイが言いにくそうにしているのを見て、作戦を変える。


「まず、俺から話そう。レイはそれを聞いてから話してくれ」


「……わかった」


 俺は深呼吸をすると、他には聞こえないよう小声で伝える。


「実は、俺は別の世界からこの世界に転生したみたいなんだ」


 それを聞いたレイは訝しげに聞き直す。


「別の世界?」


「あぁ、地球という青い星の日本という国が俺の元居た世界だ」


「……」


 レイの視線が冷たい。


「お前、気づいてないのか?」


 呆れたように聞いてくる。


「何が?」

「……おそらく、ここ、日本だぞ」

「……は?いやいや、獣人がいて魔法が使える時点で日本じゃないだろ」


 レイに何を言ってるんだ、お前は?という視線を投げ掛ける。


「じゃあ聞くが、お前が今話してる言語は?」


 レイの言葉に思考が止まる。


「……日本語だ……」


 俺が呟くと、レイは頷き続ける。


「俺も前世は日本人だった、どうやら俺たちはパラレルワールドに来てしまったらしい」


 レイがさらりと、事も無げに言う。


「そもそも、ここが本当にパラレルワールドなら、俺たちが同じ世界から来たのかも怪しいがな」


 それだけ言うと、レイは少し考え込む。


「レイ、今から俺の言う言葉に聞き覚えがあったらその続きを答えてくれ」

「わかった」


 レイが思考を止めてこちらの話を聞いているのを確認し、話し出す。


「今は昔、竹取りの翁と言うものありけり」

「覚えてねーよ!!竹取り物語だろ?」

「覚えてないか……なら、三ツ屋?」

「サイダー?」

「PS4の正式名称は?」

「プレイステーション4」

「文化レベルは同じかな?」


 レイの答えを聞いて俺が断言する。


「は?今のでわかるのか?」


 レイが心底不思議そうに聞いてくる。


「古文、飲食物、電子機器、この三つが同じなら大体同じだろ」

「アバウトすぎだろ」


 レイが呆れたように呟く。


「だが、どれもこの世界には無いものだ、少なくともこの世界ほどの差異は無いだろ」

「それはそうだが……」


 どうやら、まだ納得がいかないらしい。


「他に何か確かめておきたいことはあるか?」


 俺がレイに切り出すと、少し考え、


「本名と住所、生年月日を教えてくれ」


 と言い出した。

 もちろん、もとの世界での話だろう。


古内(ふるうち) 直之(なおゆき)、1990年8月16日生まれ、住所は愛知県春日井市の……」

「はぁ!?」


 突然のレイが大声をあげる。

 周りの子供たちが何事かと一斉にこちらを見るが、またあいつか、とすぐに興味をなくす。


「どうかしたのか?レイ」

「……俺の名前は新島(にいじま) 雅人(まさと)、1990年8月31日生まれだ」


 レイの言葉に、いや、()()()()()()理解が追い付かなかった。

 雅人という名前には、聞き覚えがある。

 むしろ、前の人生のなかで最も、呼んだ名前だ。

 レイは呆けている俺を見てニヤリと笑うと、


「こいつは、面白くなりそうだ」


 と呟いた。

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