13/コノハとコリーダ
宴の賑やかな雰囲気に当てられて、久しぶりに飲み過ぎてしまった。
コノハは壁に手を当ててふらつく足元を支えながら、コリーダから借りている部屋のベッドに寝転んだ。
窓の外からはたき火の明かりが差し込み、村人たちの笑い声が聞こえてくる。
――いい夜だ。
お酒でぼんやりとした思考のまま心地よくまどろんでいると、扉を叩く音が聞こえてきた。
コノハがベッドから立ち上がって扉を開くと、コリーダが申し訳なさそうに顔を出した。
「遅くにごめんね、コノハさん。……ちょっとだけ、いいかい?」
「ああ、そりゃもちろん。中にどうぞ……って言っても元はコリーダの家なんだけど」
そう言って笑いながらコリーダに丸椅子を差し出すと、自分はベッドに腰掛ける。
しかし彼女は椅子に座ることなく、立ったままだった。
「……どうしたの?」
下を向いて黙ったままの彼女に声をかけると、コリーダは意を決したように顔を上げて言った。
「あ、あのね、コノハさん……! も、もし、わたしがコノハさんに『助けてほしいことがある』って言ったら、助けてくれるかい……?」
彼女はほんのりと頬を染めて、真っ直ぐにコノハを見据えていた。
質問の真意はわからなかったが、彼女が真剣に問うているのはわかった。
「――もちろん。コリーダのためなら、俺にできることはなんでもするよ」
コノハはコリーダの瞳を見つめ返して、はっきりと答えた。
「そ、そうかい? そ、それじゃあ、頼みがあるんだけど――」
コリーダはもじもじと指先で尻尾の先をいじりながら、大きな身体を小さく縮こませて、プレゼントをねだる子供のように上目遣いで言った。
「――わ、わたしと、セックス、してくれんかね?」
「…………ん?」
完全に意識の外から飛んできた彼女のお願いに、コノハの酔いは完全に覚めた。
コリーダは顔を真っ赤に染めて、言葉を続けた。
「み、ミノタウロス族には、その、『発情期』ってのがあってぇ……、これが来ちゃうと、女子はもう、その、えっちなことで頭がいっぱいになっちまうんだぁ……」
俺は年頃の女子になにを言わせているのだ。
コリーダの言葉で我に返ったコノハが、質問を返した。
「は、発情期に関してはわかった。それで、それは、その、セックスじゃないと、ダメなのかな……?」
「いつもだったら、その……じ、自分で処理してるんだけどぉ……。今回のは、ちょっと、重くて……」
コリーダが真っ赤になった顔を両手で覆う。
俺は本当に年頃の女子になにを言わせているのだ!
両肩にのしかかる罪悪感に耐えながら、コノハは言った。
「あー……、そのー……、コリーダは、俺が相手でいいのか?」
その質問にコリーダは顔を上げ、コノハにずいと歩み寄ってその両手を取ると、自らの両手で包み込んだ。
「こ、コノハさんじゃないとだめなんだぁ……! わたしは、コノハさんと、せ、セックスが、したいんだよぉ……」
俺は! 女子に! なにを! 言わせているのだ!(三回目)
胸に突き刺さった罪悪感を心の中で抜きながら、コノハは彼女に声をかけた。
「コリーダ、ちょっとだけ屈んでもらえる?」
「……こうかい?」
人間族のコノハと同じ目線まで屈んだコリーダの唇に、自らの唇を重ねる。
彼女の唇はとても肉感的で、そのままかじりつきたくなる危険な果実のようだった。
「こんな俺でよかったら、コリーダを――抱かせてくれないか?」
コリーダはぼんやりとした表情のまま、触れあった自らの唇を確かめるように指先で撫でる。
一瞬で泣き崩れるような表情に変わった彼女が、勢いよくコノハを抱きしめた。
「あ、ありがとうねぇ……! ありがとうねぇ、コノハさん……!」
「こちらこそ、俺を選んでくれてありがとう、コリーダ」
コノハを抱きしめた彼女の腕は、壊れものに触れるように柔らかだった。
彼はもう一度コリーダの頬に口づけると、そっと彼女の背中に手を回して抱きしめ返した。
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