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13/28

13/コノハとコリーダ

 宴の賑やかな雰囲気に当てられて、久しぶりに飲み過ぎてしまった。

 コノハは壁に手を当ててふらつく足元を支えながら、コリーダから借りている部屋のベッドに寝転んだ。

 窓の外からはたき火の明かりが差し込み、村人たちの笑い声が聞こえてくる。

 ――いい夜だ。

 お酒でぼんやりとした思考のまま心地よくまどろんでいると、扉を叩く音が聞こえてきた。

 コノハがベッドから立ち上がって扉を開くと、コリーダが申し訳なさそうに顔を出した。


「遅くにごめんね、コノハさん。……ちょっとだけ、いいかい?」

「ああ、そりゃもちろん。中にどうぞ……って言っても元はコリーダの家なんだけど」


 そう言って笑いながらコリーダに丸椅子を差し出すと、自分はベッドに腰掛ける。

 しかし彼女は椅子に座ることなく、立ったままだった。


「……どうしたの?」


 下を向いて黙ったままの彼女に声をかけると、コリーダは意を決したように顔を上げて言った。


「あ、あのね、コノハさん……! も、もし、わたしがコノハさんに『助けてほしいことがある』って言ったら、助けてくれるかい……?」


 彼女はほんのりと頬を染めて、真っ直ぐにコノハを見据えていた。

 質問の真意はわからなかったが、彼女が真剣に問うているのはわかった。


「――もちろん。コリーダのためなら、俺にできることはなんでもするよ」


 コノハはコリーダの瞳を見つめ返して、はっきりと答えた。


「そ、そうかい? そ、それじゃあ、頼みがあるんだけど――」


 コリーダはもじもじと指先で尻尾の先をいじりながら、大きな身体を小さく縮こませて、プレゼントをねだる子供のように上目遣いで言った。


「――わ、わたしと、セックス、してくれんかね?」

「…………ん?」


 完全に意識の外から飛んできた彼女のお願いに、コノハの酔いは完全に覚めた。

 コリーダは顔を真っ赤に染めて、言葉を続けた。


「み、ミノタウロス族には、その、『発情期』ってのがあってぇ……、これが来ちゃうと、女子はもう、その、えっちなことで頭がいっぱいになっちまうんだぁ……」


 俺は年頃の女子になにを言わせているのだ。

 コリーダの言葉で我に返ったコノハが、質問を返した。


「は、発情期に関してはわかった。それで、それは、その、セックスじゃないと、ダメなのかな……?」

「いつもだったら、その……じ、自分で処理してるんだけどぉ……。今回のは、ちょっと、重くて……」


 コリーダが真っ赤になった顔を両手で覆う。

 俺は本当に年頃の女子になにを言わせているのだ!

 両肩にのしかかる罪悪感に耐えながら、コノハは言った。


「あー……、そのー……、コリーダは、俺が相手でいいのか?」


 その質問にコリーダは顔を上げ、コノハにずいと歩み寄ってその両手を取ると、自らの両手で包み込んだ。


「こ、コノハさんじゃないとだめなんだぁ……! わたしは、コノハさんと、せ、セックスが、したいんだよぉ……」


 俺は! 女子に! なにを! 言わせているのだ!(三回目)

 胸に突き刺さった罪悪感を心の中で抜きながら、コノハは彼女に声をかけた。


「コリーダ、ちょっとだけ屈んでもらえる?」

「……こうかい?」


 人間族のコノハと同じ目線まで屈んだコリーダの唇に、自らの唇を重ねる。

 彼女の唇はとても肉感的で、そのままかじりつきたくなる危険な果実のようだった。


「こんな俺でよかったら、コリーダを――抱かせてくれないか?」


 コリーダはぼんやりとした表情のまま、触れあった自らの唇を確かめるように指先で撫でる。

 一瞬で泣き崩れるような表情に変わった彼女が、勢いよくコノハを抱きしめた。


「あ、ありがとうねぇ……! ありがとうねぇ、コノハさん……!」

「こちらこそ、俺を選んでくれてありがとう、コリーダ」


 コノハを抱きしめた彼女の腕は、壊れものに触れるように柔らかだった。

 彼はもう一度コリーダの頬に口づけると、そっと彼女の背中に手を回して抱きしめ返した。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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