第45話:世界修正
第45話です。
“異常は不要”。
その言葉と共に、
世界はついに動き始めた。
都市ごと。
人ごと。
感情ごと。
すべてを消し去るために。
『世界修正を開始します』
機械音声が響く。
低く。
冷たく。
感情のない声。
「……」
空気が変わる。
いや――
世界そのものが変わり始めていた。
ゴゴゴ……。
巨大な振動。
天井が揺れる。
遠くで爆発音。
「始まった……!」
教育係が端末を見る。
顔色が真っ白だった。
「区域封鎖……隔離壁閉鎖……!」
「早すぎるだろ」
俺が苦笑する。
だが――
笑えなかった。
空間が歪んでいる。
今までの“修正”とは違う。
規模が違いすぎる。
「……都市単位だ」
“失敗作”が低く言う。
「この区域ごと消す気だ」
「本当にやるんだな」
「上は昔からそうだ」
男の声には、
怒りが混ざっていた。
「都合悪いもんは、全部消す」
その瞬間――
轟音。
空間が裂けた。
「――っ!?」
遠くの建物が、
突然“消失”する。
崩壊じゃない。
爆発でもない。
存在そのものが、
白く削り取られた。
「……は?」
言葉を失う。
人も。
建物も。
景色ごと消えている。
「世界修正領域の拡大を確認!」
教育係が叫ぶ。
「飲み込まれたら終わりです!」
「マジでヤバいな……」
でも――
目が離せなかった。
白い消去領域。
完璧すぎる破壊。
「……綺麗だな」
思わず呟く。
「どこがだ!」
“失敗作”が怒鳴る。
「世界終わりかけてんだぞ!」
「だからだよ」
静かに言う。
「完璧すぎて気持ち悪い」
沈黙。
執行者が、
ゆっくり消去領域を見る。
「……修正」
小さく呟く。
「違う」
その声。
確信があった。
「これは……停止」
空気が止まる。
「……停止?」
教育係が聞き返す。
執行者は白い世界を見る。
「変化を止めている」
静かな声。
「生きることを止めている」
その瞬間――
執行者の白い身体に、
さらに黒い線が走った。
「……!」
“失敗作”が目を見開く。
「お前……」
「理解した」
執行者が呟く。
「完璧とは、“死”」
空気が震えた。
世界そのものを否定する言葉。
『執行者個体に異常を確認』
機械音声。
『危険度上昇』
『即時消去対象へ再指定』
「……はは」
俺は笑った。
「完全に仲間入りじゃん」
執行者がこちらを見る。
そして――
小さく言った。
「……悪くない」
教育係が固まる。
“失敗作”も、
数秒言葉を失っていた。
「執行者が……」
男が呟く。
「感情で返した……」
その時。
世界が揺れた。
今までで一番大きい。
「っ!」
床が崩れる。
警報。
轟音。
白い消去領域が、
こちらへ迫ってくる。
速い。
「逃げろ!!」
“失敗作”が叫ぶ。
全員が走る。
背後で、
世界が消えていく。
音も。
光も。
全部。
「……っ!」
教育係が息を切らす。
「間に合わない……!」
確かに。
速すぎる。
白い領域が、
街を飲み込んでいく。
「対象確認」
突然。
執行者が止まった。
「……おい?」
俺が振り返る。
執行者は、
迫る白い領域を見ていた。
「何してる!」
“失敗作”が怒鳴る。
執行者は静かに答える。
「修正する」
空気が止まる。
「は?」
「私は執行者」
白い存在が前へ出る。
「ならば」
黒い亀裂が走る。
「この“誤った修正”を修正する」
その瞬間――
執行者の全身から、
白と黒の光が弾けた。
轟音。
空間が裂ける。
「……!」
迫っていた白い消去領域が、
止まった。
完全停止。
「……マジかよ」
“失敗作”が呟く。
執行者は、
一人で世界を押し止めていた。
「対象」
執行者がこちらを見る。
初めてだった。
そこにあったのは――
覚悟。
「進め」
静かな声。
「お前が変えろ」
その瞬間。
世界の修正装置は、
完全に“人間側”へ立った。
読んでいただきありがとうございます。
第45話では、
ついに“世界修正”が始まりました。
そして執行者は、
初めて世界へ反旗を翻します。
完璧だった存在が、
変化を選んだ。
物語はここから、
最終局面へ向かいます。
引き続きよろしくお願いします。




