第39話:選択
第39話です。
完璧な世界。
捨てられた世界。
その両方を見た主人公は、
ついに“答え”を出す。
これは、
この物語最大の分岐点。
「……選べ」
“失敗作”の男の声。
静かだった。
だが――
重い。
上へ戻るか。
外側へ行くか。
世界そのものを選ぶ問い。
「……」
周囲を見る。
汚れた空間。
剥き出しの配線。
疲れ切った人間達。
誰も完璧じゃない。
でも――
生きている。
「……」
今度は上を思い出す。
磨かれた床。
静かな会議室。
完璧な管理。
整いすぎた世界。
「……どっちも、本物なんだな」
小さく呟く。
男が笑う。
「ようやくそこか」
「……」
教育係は黙っている。
ただ――
こちらを見ていた。
「……戻れば」
男が言う。
「お前は利用される」
静かな声。
「だが、生き残れる」
現実的だ。
「こっちに来れば」
周囲を見る。
「全部敵になる」
それも事実。
「でも」
少しだけ笑った。
「自由だ」
空気が静まる。
自由。
その言葉。
軽いようで――
重かった。
「……」
考える。
長く。
静かに。
「……お前は」
男を見る。
「なんで外にいる」
聞く。
男は少しだけ黙って――
答えた。
「戻れなくなったから」
予想通りの答え。
でも――
続きがあった。
「最初は復讐したかった」
空気が少し変わる。
「全部壊してやろうって思ってた」
静かな声。
「でも」
周囲を見る。
ここにいる人間達を。
「こいつら見てたら、変わった」
その言葉。
重かった。
「……」
男は笑わない。
「ここにも、生きてる奴がいた」
だから――
「壊すだけじゃダメだって思った」
沈黙。
長い。
「……そっか」
小さく呟く。
妙に納得した。
「で」
男がこちらを見る。
「お前は?」
核心。
教育係も、
何も言わない。
待っている。
俺は――
ゆっくり息を吐いた。
「……戻る」
その瞬間。
空気が止まる。
教育係の目が揺れる。
男は黙ったまま。
「……理由、聞いていいか」
静かな声。
だから答える。
「まだ終わってねぇから」
シンプルだった。
「上の世界」
天井を見る。
「まだ変えられる」
そう思った。
「……」
男は黙って聞いている。
「外に来るのは」
少しだけ笑う。
「全部見てからでも遅くねぇ」
その言葉。
数秒。
沈黙。
そして――
男は小さく笑った。
「気に入った」
本音っぽかった。
「普通なら逃げる」
「普通じゃねぇしな」
笑い返す。
「だな」
男も笑う。
その瞬間――
警報が強く鳴る。
空気が変わる。
「……来るぞ」
男の目が鋭くなる。
「上の連中、本気だ」
遠くで爆音。
何かが壊れる音。
「……実働部隊?」
教育係が呟く。
「違う」
男が即答する。
「もっと上だ」
空気が一気に重くなる。
「……は?」
男は静かに言った。
「“執行者”が来る」
その瞬間。
周囲の空気が変わった。
ざわついていた人間達が、
一斉に静まる。
恐怖。
それが伝わる。
「……何だそれ」
聞く。
男は笑わなかった。
「上が本当に消したい時にだけ動く連中」
静かな声。
「人間じゃねぇ」
空気が凍る。
「……」
教育係の顔色が変わる。
「そんな存在……」
「いるんだよ」
男が遮る。
「お前が“異常”なら」
ゆっくりこちらを見る。
「アイツらは、“修正”だ」
その言葉。
嫌な感じがした。
直感で分かる。
ヤバい。
「……面白ぇ」
思わず笑った。
教育係がこちらを見る。
「本気ですか」
「だって」
立ち上がる。
「やっとラスボスっぽいの出てきたじゃん」
その瞬間――
男が吹き出した。
「ははっ……!」
初めてだった。
心から笑ったの。
「やっぱお前、最高だわ」
「褒めてる?」
「多分な」
笑いながら言う。
だが――
次の瞬間。
空気が変わる。
重圧。
音もなく。
「……来た」
男の笑みが消える。
全員が振り返る。
通路の奥。
白。
真っ白な服。
ゆっくり歩いてくる影。
顔が見えない。
なのに――
分かった。
ヤバい。
本能が叫ぶ。
「……アレが」
教育係の声が震える。
「執行者……」
読んでいただきありがとうございます。
第39話では、
主人公がついに“選択”をしました。
外側を知った上で、
それでも上へ戻る。
それは、
世界を変えることを諦めないという意思でした。
そして最後に現れた、
“執行者”。
物語はここから、
さらに危険な領域へ入ります。
引き続きよろしくお願いします。




