本来の形へ
完結です、ありがとうございました
翌日。
「……」
「……」
俺は一緒にいられる時はずーと肌身離さずナオのことを見ていた。落ち着け、予知夢は夢を観た次の日に起こっている。今日さえ乗り越えれば大丈夫だ(たぶん)。
しかしこの日は特に不吉な事態は起こることなく、次の日もまた次の日も何も起こる気配はなかった。
おかしい、どうなっているんだ? と俺はナオの様子を見ながら一人不思議がっていると、
「もうっ! ここ2、3日私の後ばかりをつけて、一体なんなの!?」
「え?」
「彼氏でもないのに、女子の後をつけるなんてっ。それじゃあ私のプライバシーがまるでないじゃない!」
「いや……でも……」
「まさか!? 私だけじゃなく、他の女子にもやってるんじゃないでしょうねー!?」
「いやいや、そんなことするわけないだろ!?」
「そう、ならそれで良いけど……!」
ん? 一体何が良いんだ?
「それでどうして私の後をつけるの?」
「え?!」
「何か訳があるんでしょ?」
「それは……」
そして俺はここ最近から続く一連の夢の話をした。
「バカバカしいっ、そんなことあるわけないじゃない!」
「けどここまで偶然が重なったら気になるだろ!?」
「なら仮にそうだとしても、起こるのは次の日なんでしょ? なら今回の夢はハズレよ、ハズレ」
「しかし……」
「“しかし”も“かかし”もないわよ! この不審者!」
「だ、誰が不審者だ!?」
「お巡りさーん、元彼からストーカー行為を受けてます」
「あ、おいこら止めろっ!」
「なら私の後をついてこないで!」
「…………」
そして遠くの方から騒がしそうに複数人の声が聞こえた。
「何かしら? 橋の方で人の声が聞こえるわ」
「止めとけ。何か厄介なことに巻き込まれるぞ」
しかしナオは俺の忠告を無視して、急いで声のする方へと向かった。
「あ、おいっ……! ………ったく、何やってんだ俺……」
俺は頭を掻きながら、今の状態がまるでピエロな気分になってきた。
「バカバカしい、帰るか…」
とその時だった。バチャーンッと何かが水面に入り込む大きな音が聞こえ、さっきのところからわーと声が上がる。
「なんだ……?」
橋の方を見ると、なにやらざわざわして慌ててる様子だった。そしてそこにナオの姿が見当たらなかった。
まさか……。
俺は嫌な予感がして、無我夢中で走った。
ナオ、ナオ、ナオ……!!
そして到着した俺は彼らの眺めている方向を見ると、幼い少年とナオが川の中で溺れていた。
「あの馬鹿っ!!」
ナオは泳げないんだ!! くそ、どうする!? えぇい、もう!!
ドボーン!! 大きな水飛沫を出しながら俺は川に飛び込み、二人を助けた。
「はあはあ」
「はあはあ……」
「雅樹ー!」
「ママー!!」
そして少年は母親のところへ向い、俺とナオは川近くのコンクリートの堤で座っている。
「トモ……ありが……」
「馬鹿ッ、どうしてあんな無茶をしたんだ!?」
「だ……だって……。子供が溺れているんだから助けようと思うじゃない……」
「お前泳げないだろ!?」
「……」
「俺が近くにいたから良かったものの、あのままだったら助からなかったかもしれないんだぞ!」
「ゴ、ゴメン……なさい……」
「お前がいなくなってたら……俺は何を糧に生きて……」
「え……? トモ……?」
「済まないナオ! 俺が悪かったっ。悪かったから……その……俺ともう一度やり直さないか?」
「え? それって……」
「あぁ、やっぱり俺はナオのこと好きだ! お前がいないと俺はダメなんだっ」
彼女はぐずっとしながら、
「……私もトモのことが好き。別れてからずっと後悔してたの……」
「! それじゃあ……」
「うん、もう一度貴方と付き合うわ……」
俺はほっとして、良かったこれで万事解決…………ん……?
「わーーーーー!?」
「な、なにっどうしたの!?」
「お、俺のスマホが壊れている……! いままでためておいたデータ達が……可愛い彼女達がーー!!」
「アプリゲームなら向こうでデータ保存してるんじゃないの?」
「スマホだけに保存しといたデータもあるんだよ!! あっ! も、もしかして………わーー!! ディスクもびちゃびちゃだ!!」
「な、なんでゲームディスクまで持ち歩いているのよっ!?」
「お前のせいだぞ!! このおたんこなす!! 俺の糧をどうするんだ!!」
「あんたさっきは私を糧に生きるって言った癖になに言ってるのよ!?」
「これはこれ、それはそれだ!!」
「~~~~~~~!! この馬鹿トモーー!!」
おしまい
本当は短編の分量ですが、一日で書けなかったので連載の形で書かせていただきました。
ブックマーク、評価を頂きありがとうございました。
次の作品も楽しみにしていただければ嬉しいです。