45章 「転校生ハイヒライ・コーザンカイト 4」
しばらくギターを見ていたら、出入口の方から物音がした。
その方を見ると、金髪の美しい少年が立っていた。特殊な形をしたカバンを背負っている。おそらく中にギターが入っている。
「・・・・・・あ、皆さん」
ハイヒライだ。
「おう! ハイヒライ!」
「・・・・・・やあ」
清水と佐藤がこちらにやって来た。
「皆さんお揃いで・・・・・・」
誘ったのは彼の方だが、いざ来られると何だかんだ驚いている様だ。
「この店を紹介したかったのと・・・・・・恥ずかしいですけど、僕のギター聞いてもらいたくて」
目線を外して気恥しそうにしながら、ハイヒライは言った。
「ああ、是非頼む」
佐藤が言った。その言葉を聞くと、ハイヒライは、ぱっと嬉しそうな顔をして、ケースからギターを取り出した。
予想通り、ハイヒライはTALBOを使っていた。
あのTALBOは銀色だったが、ハイヒライの物は、真っ赤な血の様な色のボディに、黒色のピックガードを組み合わせた物だった。
そしてピックガードには、こんな文字がステッカーで貼られていた。
「Verrat」
一目で普通のギターでは無いな、と察した。
その赤があまりにも眩し過ぎて、見ていると何だかハイヒライに操られてしまいそうな気がする。
僕達はただハイヒライがセッティングをするのを見つめていた。別のカバンから、GT-100と書かれている謎の機械を取り出し、ギターと繋げたりしている。
ある程度の動作が終わると、ハイヒライはTALBOを持ち、こちらを見た。
「・・・・・・じゃあ、いきますね。僕のオリジナルソング。インストゥルメンタルですけど・・・・・・聞いてください」
その瞬間、店に爆発した様な音が鳴る。
音が爆発した。
赤いTALBOが吠える。その音は耳をつんざき、鼓膜を震わせる。
その音は店全体を通して、周りの普遍的なギター達を恐怖させた。
我を視よ、とTALBOとハイヒライが叫ぶ。
ハイヒライの特殊さを、TALBOが増幅させる。
そして、それを見る人を惹き付ける魅力に昇華させる。
「・・・・・・凄まじい」
佐藤がそう漏らした。店主はいつもの風景というように、微笑みながらハイヒライを見つめる。
彼は命を削っている。命を削りながら、ギターを弾き、自己表現している。
僕はそれにただ圧巻されながら、演奏を聞いた。
・・・・・・その時、ギターの音色に混じって、微かに何か獣が唸る音が聞こえた。僕は辺りを見回す。
そこには、黒い塊の様な、化け物がいた。
妖怪だ。
「クソ、こんな時に!」
僕は鞄から弓と矢を取り出す。佐藤と清水も、妖怪の存在に気付き、吹き矢と日本刀を取り出した。
「・・・・・・お、おう? 何だ何だ」
店主は妖怪の姿が見えていない。僕は目で彼に訴えた。
三人で妖怪を迎え撃つ。しかし、ギターの音色は鳴り止まない。
「・・・・・・お、おい! ハイヒライ! 演奏を止めろ! 逃げろ!」
清水がハイヒライに向けて大声を出す。だが彼は、ギターの演奏に夢中で、それに気付かない。
その瞬間、彼が笑い出す。
「ひゃははははは!!!!」
彼の口角が恐ろしい程釣り上がる。その目は狂気で赤く染る様に見えた。
「・・・・・・はあ・・・・・・?」
清水が困惑している。僕にも何が何だか分からない。
あの優しいハイヒライが、まるで今は鬼の形相をしている。
まるで二重人格の様な・・・・・・。
「きええい!!!」
その時、ハイヒライがギターを自らの身体に打ち付けた。それに合わせ、甲高い音が鳴る。思わず耳を塞ごうとする。
しかし、次の瞬間。
「ぐわあああ!!!」
妖怪がその音を耳にして、苦しみ始めた。身体が塵となって消えていく。
「・・・・・・」
皆が唖然と、その光景を見つめる。
そして、ついに妖怪は完全に消えてしまった。
それに合わせる様に、ハイヒライの演奏も終わった。
「・・・・・・ふう、久々にちょっとはしゃいじゃったな・・・・・・って、皆さん? 何でそんなに黙って・・・・・・」
その時、僕達誰もが彼に対して、注目し、そして困惑した。先程の光景が嘘かの様に、ハイヒライは平然といつもの優しい笑みをしている。
彼が何故妖怪に対して攻撃出来るのか、僕達には理解出来なかった。




