44章 「転校生ハイヒライ・コーザンカイト 3」
学校の近くに楽器屋なんてあったかと思ったが、清水が教えてくれた。
小規模で年季の入った楽器屋が、僕の町の薄暗い道路の傍にあった。
おそらく言われなければ、誰もこの楽器屋の存在に気付く事は無かっただろう。
「・・・・・・こんな所にあったんだな」
佐藤がそうぼやいた。
・・・・・・
楽器屋は少し埃の匂いがした。中は店主らしき老人が一人、物静かに佇んでいる。
所狭しと並ぶ、色鮮やかなエレキギターとエレキベースの数々。
佐藤は初めてこの世を見つめた子供みたいに、目を輝かせ、楽器を見つめている。
「・・・・・・へえ、結構品揃え良いんだな」
清水がそう呟いた。経験者故の発言だろう。
二人がばらけ始めたので、僕も単独行動に移る。
先程から目に付いていたギターに近付いた。
値札を見ると、こう書かれていた。
「TOKAI TALBO」
そのギターは他のギターとは違う、明らかに異質な雰囲気を持っていた。
ストラトキャスターでも、レスポールでもない、特徴的なボディ。その銀色のボディは、光を反射し怪しく輝く。
周りの圧力に屈していない自由で独創的なデザインに嫉妬すら感じた。
すると、後ろから先程の老人が近付いてきた。
「・・・・・・良いセンスをしているねえ、坊ちゃん。・・・・・・面白い事に、このギターはアルミを流し込んで作っててねえ・・・・・・中古で仕入れたんだ」
しゃがれ声の店主。そのゆったりとした空気に魅了されそうになる。
「・・・・・・ああ、そういえば今日丁度君達と同じ位の歳の子が来るって言ってたなあ・・・・・・確かこのギターを使ってた筈だよ」
彼がその言葉を言った瞬間、僕の脳内にハイヒライの顔が浮かんだ。・・・・・・もしかすると、彼の言う人物が、ハイヒライなのかもしれない。
そう思うと、このギターはなんともハイヒライに似合っている。彼と同じ、不思議で、美しいギターなのだ。




