46章「転校生ハイヒライ・コーザンカイト 5」
帰り道、僕達三人はハイヒライから目が離せなかった。ギターケースを背負いながら、にこやかに歩く彼。すると、清水が話しかけた。
「・・・・・・なあ、ハイヒライ」
「何ですか?」
「・・・・・・お前さえ良ければ何だが・・・・・・俺達のグループに入ってくれないか?」
清水が言っているグループとは、おそらく解放団の事だ。
僕と佐藤は顔を見合わせた。お互いに頷く。
どちらも異議は無い。
「え、ほんとですか! 是非入れて下さい!」
ハイヒライは目を輝かせ、僕達に言った。するとその様子を見て佐藤がハイヒライの目を見て言う。
「ああ。勿論。でも今日は遅いからな。また明日」
「そうですね! あ、じゃあ皆さん、また明日!」
そう言うと、彼は純粋な子供の様に、駆けていった。
彼を見送った後、僕達三人は自然と立ち止まった。
「・・・・・・ハイヒライって・・・・・・何者なんだろうな・・・・・・」
清水が独り言の様にそう言った。僕は彼に意見を伝える。
「・・・・・・もし彼が妖怪に干渉出来る存在だとしたら・・・・・・彼も近しい存在だという事は否定出来ない・・・・・・」
佐藤が僕に言う。
「・・・・・・じゃあ、コタローはハイヒライが妖怪だって言いたいのか?」
「違う! そんな事は有り得ない! ・・・・・・妖怪は今までの様子を見るに、おそらく全員がシュソウに忠誠を誓っている。それなら僕達の事を襲って来てもいい筈だろ!?」
仮に彼がシュソウの仲間だとするなら、僕達と仲良くなるメリットが無い。だから彼は妖怪では無い。・・・・・・そう信じたい。
清水が僕と佐藤の間に入る。
「まあまあ。とりあえず明日、山本に聞いてみようぜ。何か分かるかもしれない」
場の雰囲気を落ち着かせてくれた。清水はこういう時に頼りになる。
「・・・・・・そうだな。コタロー、すまん。少し熱くなった」
「うん、こっちもごめん」
お互いに頭を下げた。久しぶりにこういう会話をした気がする。
「OK。じゃあ今日は解散。お休み」
オレンジ色の光が差し込む中、清水が去っていく。僕はそれに合わせる様に、帰り道を進んでいった。
・・・・・・
翌日は勉強に身が入らなかった。学校が終わると、直ぐに僕達三人は集まり、山本の居る八満神社へと向かった。
長い階段を進み、門を抜けると社に辿り着いた。
ふとその辺りを見ると、紅白の服に身を包んだ山本が居た。僕は彼女に向かって声をかける。
「山本!」
「・・・・・・あ、コタロー先輩。珍しいですね、お揃いで」
掃き掃除をしていた手を止め、彼女は僕達の方に近寄った。
「いや、なんだ。是非解放団に入れて欲しい奴が居るんだよ」
清水が話を始めた。すると、長話になると大変だから、と山本が休憩室の中に入れてくれた。
・・・・・・
「・・・・・・ああ、ハイヒライ・コーザンカイト・・・・・・名前は聞いた事がありますよ。何せ凄い美貌の持ち主だとか」
パーカーを羽織り、山本は話を聞き始める。僕は答えた。
「・・・・・・ああ、そのハイヒライなんだが・・・・・・ちょっと聞いてくれないか?」
僕はあの時の事について話した。
・・・・・・
「・・・・・・どう思う?」
一通り話した後に、僕は言った。すると山本は顎に手を当て考えた後、意見を述べた。
「・・・・・・別にハイヒライ先輩が妖怪だって事は無いと思います。妖怪に接触出来る人間も居ますよね? 私達みたいな。 気付いてないだけですよ、きっと。・・・・・・何故倒せるのかは、私にも分からないですけど・・・・・・」
山本は悩みながらもそう結論付けた。その言葉を聞いた瞬間、清水が脱力する。
「・・・・・・じゃあ、とりあえずハイヒライは妖怪じゃないって事か。良かった・・・・・・」
本気でハイヒライを心配していたのだろう。
「ええ。仲間に入れてあげてください。きっと喜んで貰えますよ」
そう山本は微笑みながら言った。
・・・・・・
翌日の学校、ドイツ語の本を読んでいたハイヒライに僕は話しかけた。
「そうだ、ハイヒライ。言ってたグループ・・・・・・入れる事になったぞ。これからよろしく」
その言葉を聞くと、ハイヒライはぱっと顔を輝かせた。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
兎のように飛び跳ねる彼の頭を撫でながら、僕はあの光景を心の奥に置いた。




