1話 辞めてきちゃった
目が覚めたのは、いつもと同じ時間だった。
習慣というのは厄介だ
体はまだ、仲間と冒険していた頃のままだ
ベッドの上でしばらく天井を見つめる
「…そうか」
ぽつりと呟く
昨日、ぼくは、勇者パーティーを追放されたんだった
その後のことは、ショックで頭がぐちゃぐちゃで正直あまり覚えていない
だが、こうしてベッドの上で目を覚ましたということは、
茫然としながらも、どうにか宿は取ったらしい。
体を起こし、大きく息を吐く。
少し遅めの朝を迎え、一階の食堂でゆっくりと朝食をとってから宿を後にした。
朝の空気はまだひんやりとしているが、街はすでに動き出している。
パン屋からは焼きたての匂いが漂い、商人たちは店先を整えながら客を迎え始めていた。
そんな光景をぼんやり眺めながら、大通りへ出る。
立ち止まり、空を見上げた。
「さて、どうしようかな」
ぼくが、ぼんやりとしていると周り会話が聞こえてくる
「勇者様御一行が朝一番に旅立ったらしい」「魔槍を討伐してからまだそんなにたってないのに?」「もっとゆっくりしていけばいいのに」「勇者様はお優しいからな、今この時も誰かが傷付いていると思うとこれ以上休んでいることもできない!ってさ」「なんでも次は、獄炎討伐を目指すんだとか」「獄炎って魔槍と同じ4大魔族のか!?」「さすがは勇者様だ!」「勇者様に乾杯!」「人類の希望だ!」
聞こえてくる話題は、ルカの話題一色だ
数日前に魔槍と死戦を繰り広げたばかりなのにさすがはルカだ
ルカは昔から強かったし、誰にでも優しくて困っている人がいたら絶対に見捨てない
ぼくがルカが勇者だと知った時も驚きよりも納得の方が大きかったくらいだ
ルカなら残りの4大魔族もすべて倒し、魔王も打ち取って世界を救ってくれるだろう
それに比べてぼくはなんなのだろうか
あの誰にでも優しいルカにあそこまで言わせるなんてどれだけ迷惑を掛けていたんだろうか
たしかに旅に出てから僕は一切成長していなかった
一緒に出たルカもユーちゃんもどんどん強くなっていたというのに…
先日の魔槍との戦いでも僕は最後の全魔力使っての幻術以外はほぼ一瞬で見破られていてパーティーの役に立っていなかった
たしかにこのままだとみんなの足を引っ張るどころか危険に晒してしまうかもしれない
追放されて当然、、、いやそもそもルカに追放なんてことさせる前にじぶn
「ノーアーー!」
突然、大声で名前を呼ばれた直後、ドンッという衝撃が背中に走り、思わずたたらを踏む。
途切れた思考のまま振り返ると、ぼくの背中に笑顔で抱きついているユーネリアの姿があった。
「ユーちゃん!?」
「やっほ!
ノア、道のど真ん中で突っ立って何してるの?」
ユーちゃんは不思議そうな顔でぼくの顔を覗き込んでくる。
「いや何ってぼーっとしてたいうか、、、
というか、ユーちゃんこそ何してるのさ!?
勇者パーティーは、もう旅立ったんじゃなかったの?」
まさか寝坊しておいてかれた!?
いやユーちゃんが寝坊は全然あり得るというか、いつものことだけど、ルカが仲間を忘れて出発なんてありえない
先ほど聞いた、話が間違えていたんだろうか
町の噂話だ、間違った話なんてそれこそ山のようにあるし、、、
「ルカたちは今朝早くこの町出て行ったよ
よく知ってたね!さっすが、ノア
そんなことよりさノア、なんか失礼なこと考えてなかった?」
「出て行ったって、じゃあなんでユーちゃんまだここにいるのさ
もしかして迷子!?」
ユーちゃんがぼくの考えていたことを見透かしてジト目で見てくるけど、ぼくはそれどころじゃなかった
混乱して、意味不明なこと言っていた
迷子ってなんだ、迷子で朝出た町の中にどう戻ってくるのか、、、
「ハハハッ
そんなわけないでしょ
ワタシも勇者パーティー辞めてきちゃった」
「!!?
いきなり何言ってるの!?
冗談だよね、ユーちゃん」
なんでもないことのようにいつも通りの笑顔で、ユーちゃんがとんでもないことを言い出す
ユーちゃんこと魔法使いユーネリアは、正確には賢者だ
100以上の魔法を修め、自由自在に扱う魔法の天才であり、対群ならば、ルカ以上の殲滅力をほこる
ぼくと違って勇者パーティーにとって替えの利かない存在のはずだ
それが辞めた!?
もしかしたら、ぼくが追放されたのを怒って辞めるといって飛び出してきてしまったのかもしれない
ユーちゃんなら、やるかやらないかならやりそうだ
「もちろんほんとさ!
ノア、一人じゃかわいそうだし幼馴染として、ワタシがついて行ってあげようと思って!」
「凄い良い笑顔でサムズアップしてるところ悪いけど、ルカたちについて行ってあげてよ」
「ヤダ!」
「いや、ヤダじゃなくてさ
今は人類の存続をかけた魔族との戦争中なんだよ
ぼくみたいな使えない奴はともかく、ユーちゃんが抜けるのはまずいって
だから、ね?
今からでももどろ?」
「やだ!
それにあっちにはルカがいるんだし大丈夫だよ!
だから一緒にいこ!」
ぼくは、幼馴染として察した
あ、これ何言ってもいうこと聞かないやつだ
ユーちゃんは昔から、まれによく、我が儘になって周りの話も一切聞かなくなることがあった
ぼくやルカが首を縦に振るまで、何を言ってもずっとヤダ!と言い続けるのだ
そして結局ぼくらが最終的に折れて巻き込まれる
五歳の頃、「大冒険に行く!」とか言い出して村を抜け出した
見つかったあと、家に帰ったら親にめちゃくちゃ怒られた
他にも孤児院を抜け出して街へ行った
もちろんその時も、ぼくとルカは巻き添えで怒られた
とにかくユーちゃんが我が儘言いだすと、ぼくもルカも止めることは不可能なのだ
「はぁ、分かったよ
じゃあ、一緒にいこっか」
(そして、それとなく勇者パーティーに戻るように説得しよう)
「うん!」
ユーちゃんは満面の笑みでうなずいた




