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2話 金策中のトラブル

とりあえず、当分の間、ぼくとユーちゃんは一緒に行動することになった

……ただ、一つ問題がある


それはーー


「ユーちゃん、お金はある?」


そう、お金である!

ぼくは追放された時、着の身着のままで飛び出したせいで、財布に入っていたお金しかない

あと2,3日も宿で寝泊まりしたら底をつきる

冒険者ギルドの方に預けているお金も合わせれば1週間分くらいにはなるかな

勇者パーティーはかなり稼いでいたけど、みんな、ほとんどはパーティーの共有資金に回していた

しかもその共有資金も必要分残してあとは、魔族被害の復興支援とかに回していたせいで、成果の割には少なかったんだよね


「はい!」


ユーちゃんが笑顔で財布を差し出してくる

……なんだか少しぎこちない気がする

嫌な予感がしながら中を覗くとーー

小銭が数枚だけ入っていた

パンを一つ買ったら消えそうな額だ


「えーっと、ユーちゃん?

ギルドの方にはどれくらいあるのかな?」


ぼくは嫌な予感から目をそらしながら聞く


「ンー、ドウダッタカナー」


ユーちゃんが、目をそらしながらカタコトでいう

嫌な予感が増していく


「ユーちゃん?」


「0...です...」


「ゼロ......」


少し強めに聞くと、ユーちゃんはすぐに白状した

思わず天を仰ぐ


「はぁ……今度は何を買ったのさ」


「さっき、ノアのところに向かう途中で見つけた魔道具!

しゃべった言葉を録音して再生できる白い猿のぬいぐるみなんだよ!」


ユーちゃんは目を輝かせながらぬいぐるみを取り出した


「ほら見て!モフモフ!

それにね、魔力を込めながらしゃべると魔石に記録して――」


「うんうん、そうだね……」


ぼくは遠い目をした

ユーちゃんは昔から、こういうよく分からない魔導書や魔道具を見つけるとすぐ買う

まあ、それはユーちゃんのお金だし良いんだけど、パーティー抜けてぼくに会うまでの間に有り金ほぼ全部使って買ったのか...


「とりあえず金策だね」


ぼくはため息をつく


「このままだと三、四日で野宿生活だよ

ギルドに行って依頼を受けよう」


「オッケー!」


ユーちゃんが元気よく親指を立てる


「ワタシ達二人なら、何が来ようが楽勝だよ!」


---シエンタウン付近の森---


あれからぼくらは冒険者ギルドへ行き、町周辺の森に出没している赤熊と呼ばれる魔物の討伐依頼を受けることにした


赤熊は、赤い毛皮を持つ凶暴な熊型の魔物だ

炎を吐き、時には山火事まで起こす危険な存在

もともとシエンタウン近辺には生息していなかったらしいし、どこか別の地域から流れてきたのだろう


そして今、ぼくとユーちゃんは――


森の中を全力で駆け抜けていた

枝が顔に当たり、足元の落ち葉が跳ね上がる

それでも速度は落とさない


どうして、こんな全力疾走をしているのかというと......

依頼を受けて森に入り、ユーちゃんの魔法で速攻赤熊を見つけたまではよかった

問題はーー

その赤熊が、人を襲っていたことだ


しかも、相手はどうやら子供たちらしい

赤熊は凶暴で、それなりに危険な魔物だ

大人の冒険者でも油断すればやられる

ましてや子供だけでは、間違いなく危険だ

だからぼくらは今、急いで現場へ向かっている。


「ユーちゃん、距離は!?」


走りながら叫ぶ

ユーちゃんは目を細め、魔力で感知していた気配を探る


「あと400メートルくらい!

あの茂みの向こう側!」


ユーちゃんの声を聞いた次の瞬間、ぼくは茂みを突き破って飛び出した


視界に飛び込んできたのはーー


森の中の開けた広場

その中央には、二メートルはありそうな巨大な赤熊

その前には、血を流して倒れている少年が一人

倒れている少年の意識はなさそうだ

そしてその前に立ちはだかるように、魔法使いらしい少女と剣士の少年が構えていた


二人とも、すでにぼろぼろだ

赤熊が低く唸り、巨大な爪を振り下ろす

剣士の少年が必死に剣で受け止めるーーが、

ガンッ!

鈍い音とともに剣が弾き飛ばされた


「っ……!」


無防備になった少年に、赤熊が襲いかかろうとした

その瞬間、ぼくは赤熊の方へと腕を伸ばしー


「――『欺け』」


赤熊が、突然大きく後ろへ飛び退いた

もちろん、これは、ぼくの幻術によるものだ

赤熊の目の前に、巨大なオオカミが飛び出してきた幻を見せた

今回は時間がなかったから、騙したのは視覚だけ

不意打ちの幻術なら、それで十分だった

赤熊クラスなら、すぐに偽物だと気付くだろう

でも、一瞬止まれば、それでいい

なぜならーー


「ーー『雷槍』」


静かな声が響いた

見上げた空に、巨大な雷の槍が現れる

ユーちゃんの頭上に展開された魔法陣から放たれたそれは、凄まじい速度で赤熊へと落下した

轟音

雷槍は赤熊の胴体を貫き、そのまま地面に突き刺さる

赤熊は一瞬だけ痙攣すると、そのまま地面に崩れ落ちた


森に静寂が戻る


「ふぅ、ギリギリ間に合ったかな」


ぼくがそう呟くと、ユーちゃんは軽く伸びをしながら言う


「うん、ギリギリセーフ!」


そして二人で少年たちの方へと移動する

まだ意識のある2人が、ぽかんとこちらを見ていた


「え……?」


剣士の少年が、信じられないという顔で呟く


「赤熊が……一撃……?」


魔法使いっぽい少女が言葉を失っている


「噓…だろ……!?」


ユーちゃんは、茫然としている少年たちを通り過ぎ、血を流して倒れていた少年のそばにしゃがみこむ

そして、手をかざすと、淡い光が少年の体を包み込んだ


「はい、応急処置」


「えっ!?

す、すごい……!!

一瞬で傷が!」


剣士の少年が目を丸くする


ユーちゃんは得意げに胸を張った


「まあね。ワタシ天才だから」


そのまま、ユーちゃんは、残りの2人も治療し、気を失っていた少年も意識を取り戻した。



「「「ありがとうございました!」」」


少年たちが、揃って頭を下げる


「間に合ってよかったよ」


「どーいたしまして!

あ、ワタシ、回復は専門じゃないしあとでちゃんとした所で診てもらってね」


「私たちを赤熊から助けてもらった上に治療まで

ほんとにありがとうございました!

あの、あんまりないんですけど、これお礼です!」


少女が、頭を下げながら、財布を差し出してくる

ぼくは、慌てて手を振った


「そんな、気にしないでよ

困ったときは、お互い様だし」


ぼくもユーちゃんもお金には困ってはいるけど、子供から巻き上げるつもりはないし、そんなために助けたわけじゃない


「いえ、でも、お二人は命の恩人ですし!」


「いや、ほんとに気にしなくていいっていうか、、、」


「それより、三人とも名前は?」


ぼくがお礼の断り方に困っていると、それを察したのかユーちゃんが話題を変えてくれた

魔法使いの少女が一歩前に出て、ぺこりと頭を下げる


「私はミリアって言います

魔法使いです

よろしくお願いします」


「俺はガルド!

剣士だぜ!

よろしく!」


元気よく名乗る少年の隣で、もう一人の少年が少しだけ視線を落とした


「……レオです

弓使いです……よろしくお願いします」


三人ともまだ子供だけど、ちゃんとした冒険者みたいだ


「ぼくはノア

魔法使いだよ

よろしく」


「ワタシはユーネリア

ミリアちゃんと同じ魔法使いだよー」


ユーちゃんが軽く手を振る


「「「!?」」」


その瞬間、三人の表情が固まった


「え……?

魔法使いのユーネリアに、幻術使いのノアって……」


ミリアが目を丸くする

ガルドが目を輝かせた


「もしかして……勇者パーティーの!?」


勇者パーティーは、今の人類の希望みたいなものだしシエンタウンからすれば、最近は近くで魔槍討伐をなしとげた町の英雄みたいなものだし、そりゃ分かっちゃうよね

ユーちゃんがにこっと笑う


「そうだよ!」


ぼくは少しだけ苦笑した


「まあ、いろいろあって抜けちゃって、今は“元”がつくけどね」


三人が顔を見合わせる

そして次の瞬間


「す、すげぇ……!」


ガルドが目をキラキラさせて叫んだ


「本物だ……!」


レオも信じられないという顔でこちらを見ている

ミリアは慌てて姿勢を正した


「す、すみません!

まさか勇者パーティーの方たちに助けてもらえるなんて……!」


ぼくは手を振った


「そんな大げさなものじゃないよ」


それよりも、気になっていたことを聞く


「三人は、どうしてこんな森の奥に?

この辺、普段は赤熊が出ないとはいえ、子供だけで来るには危ない場所だと思うけど」


ミリアが少しだけ困ったように笑った。


「えっと……私たち、三人でパーティーを組んでるんです

いつも薬草採取の依頼を受けてて

普段は、もっと森の浅い場所で採取してるんですけど

今日は、たまたま途中で見つけた、ウサギを追っていたら深くまで入ってしまって、そしたら赤熊に遭遇してしまって…」


なるほど

どうやら運が悪かったらしい

ユーちゃんが感心したように言う


「三人ともまだ、成人もしてない歳でしょ?

それなのに働いてえらいね

何歳なの?」


「ガルドと私は13歳で、レオが12歳です」


ぼくとユーちゃんが18だし、5差らしい

地域によって差はあるけど、この辺は15で成人だったはずだ


「俺たち、小さい頃から一緒に遊んでてさ

10歳くらいから森の浅い場所を探検したり、弱い魔物狩ったりしてたんだ」


ガルドが少し誇らしそうに言った

レオも小さく頷く

……いや、それは普通に危ない

10歳になる前からルカ含めた3人で魔物とか狩ってたぼくらがいうのもあれだけど、10歳そこらの子だけで町の外に出るだけでも危険な世界だ

周りの大人は何をしているんだろうか

ぼくが何とも言えない顔をしていると、ミリアが少しだけ視線を落とした


「私たち……シエンタウンの孤児院で暮らしてるんです」


「それで……少しでも生活費の足しになればと思って」


三人は、この町にある唯一の孤児院の子供たちだった


「そっかあ、孤児院か~

じゃあ帰り道、一緒にいこっか

また、魔物に襲われても大変だしね」


ユーちゃんは、笑顔でそう提案した

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