夢の世界で2
トケイはユイをある程度、神力で回復させ、更夜を見上げた。
「もう、こんな暴力、しないでね」
「……ああ。すまなかった……」
「で、更夜はこれに出るならどうするの?」
トケイはユイが持つ「味覚大会」のチラシを指差しながら更夜に尋ねた。
「……開催はいつだ? ここ、霊魂の世界弐の世界は場所によって時間がバラバラだ。弐の時間管理をしている俺はたぶん、わかる」
「えーと、十五夜?」
「十五夜だと世界によって違うな。何月何日とかないのか」
「ないっぽい……時間は夕方六時」
「この世界はサヨの時間が採用されているため、壱(現世)と同じ時刻だ。この漫画家の世界とやらの時間感覚を調べるか」
更夜がそう言い、トケイは首を傾げた。
「そんなことわかるの? 僕は時神だけど全然わかんない」
「ああ、検索すると……この漫画家の世界は常に夜で、ここの主が月の満ち欠けで曖昧な時間管理をしているようだな。時間は芸術だ」
更夜が頭を抱えた。決まった時間がなかったからだ。
「時間が芸術って……没頭する時間ってこと?」
「まあ、漫画家だからな。俺も読んだことのある少女漫画家だ。クッキングカラーという料理系の恋愛漫画を描いている」
「あー、更夜、恋愛漫画好きだもんね」
トケイはもう一度、ユイが持つチラシを見てみた。
「なんか、時間関係で手がかりはないかな。味覚大会開催はおそらく、この世界の持ち主が寝てからだよね。精神がこの夢の世界でもある弐に帰ってくる時期だ」
「この漫画を出版している本社は東京だ。つまり、時間経過はサヨの世界と同じはずだ。ただ、夜の世界なだけ……。
日付が書いてなくて、十五夜との記載。満月か新月かわからんが、行ってみて確認する方が良さそうだ。すぐに出発するぞ。
ちょうど、本日の居酒屋業務は終わる。いつもランチしかやっていない故、居酒屋なのかもはや怪しいが、酒を出してるから居酒屋だろ」
更夜はため息をつきながら後片付けを始めた。
トケイはルナやスズに声をかけようとしたが、先にライに話しかけられた。
「トケイくん、あのね……」
「え? どうしたの?」
「私、芸術神の絵の担当なの。人が夢の世界で絵の関係でのひらめきがなくなった時に私がその人の中にあるひらめきを夢で出してあげるの」
「……うん? ああ、芸術神って感じだね!」
「それで……」
ライは説明しずらそうにさらに口を開く。
「私、その漫画家さんのひらめきを外に出してあげたかもしれない。こないだ……」
「ええっ! じゃ、じゃあ、あの漫画家さんの世界を知っているんじゃ……」
「クッキングカラーで思い出したの。料理の彩りを白黒表現するのが難しいって嘆いていた……。色の付け方がわからないからいつもあの世界は月夜なんだって、作者さんの心が言っていた」
ライは筆を出し、なんとなく回す。
「あのね、私、一度関わったことのある絵関係の芸術家さんの世界にはドアを描けば行けるの」
「……じゃあ、すぐにでも行けるんだ……」
「うん、この作者さんはもう、知ってるから。ユイ、これをもらった時になんか言われなかった?」
ライはユイに目を向ける。
「あー……今夜だってー……と言われたような……」
「今夜!? なんで早く言わないの……」
トケイが頭を抱えつつ更夜に伝えに行った。




