夢の世界で3
後片付けが終わり、更夜は唸りながらユイを見ていた。
「更夜、もうそんなに怒らないでよ……。かわいそうだよ、色々と。ほぼ、今すぐだってわかって良かったじゃん」
「はああ……」
トケイは更夜をなだめている。
「あ、私はついていきます。ユイは置いていきます。お姉ちゃんは……隔離のままです?」
ライが恐る恐る更夜に尋ねた。
「マイは正月様のクゥの神力に拘束されているから現状、外には出せないな。幽閉だ。ルナとスズはどうするか……危険があるかもわからん……」
更夜はこちらをうかがっているルナとスズに目を向ける。
「私は行くよ。霊だし、更夜のお手伝いできるから……」
スズは少し怯えつつ、更夜を見上げた。
「じゃあ、ルナも……」
「ルナはできたらこの家に残ってくれ。ユイにマイと重たいやつらがこの家にはいる……。サヨが戻ってきたらサヨに頼れ」
「……うん」
ルナは少し怖がりながら頷いた。
「……先程は怖いところを見せて悪かった……。冷静になったから、安心してくれ。すぐに戻る。トケイは……」
「あ、僕も一緒にいくよ! なんかあったらルナちゃん、僕に連絡ね!」
「トケイも行っちゃうの……」
「僕は言い方悪いけどライちゃんを見張らないといけないし、世界の全体をみないといけないし、自分が破壊システムに落ちた時に更夜の側にいた方が被害がなさそうだからね。更夜に僕を止めてもらうから」
「……そっか」
トケイはルナの元まで来るとルナの頭を優しく撫でた。
「僕はルナちゃんの味方だよ。なんかあったら飛んでくるから言ってね!」
「うん、わかった」
ルナはなんとなく納得した。
「じゃあ、ドアを描きます……」
ライが筆を何もないところに走らせ、あっと言う間に普通のドアを空間に描いた。
「うわ、すごーい……どうなってんの、これ……」
スズは本物みたいなドアをいぶかしげに見つめた。一応、絵のようだが、ライのみがドアノブを握れ、開けられる仕組みのようだ。
「では、開きます。行かない神は少し離れてて。周辺少しだけ巻き込むから」
ライがドアを開けると、中に入り込んだ。ライの周辺にいた更夜達は磁石のようにライに引き寄せられ、ドアの奥へと消えていった。
ドアが勝手に閉まる。
「えーと……あっという間だ……」
ルナがドアに近づくと、ドアは跡形もなく、自然と消えてなくなった。
ライ達は月夜の世界に足を踏み入れていた。目の前には立派な西洋系のお城がある。
「ああ、クッキングカラーに出てくる魔法の城だ、あれは」
更夜は城を少しだけ嬉しそうに見上げる。
「世界観はなんだろう……」
トケイとスズは立派な城に萎縮していた。
「舞台は日本だが、魔法の世界と行き来をしてこちら側の料理を魔法の世界に持ち込み、振る舞う話だ。主人公の女がそこにいる城の関係者や王子と恋仲になっていくわけだが……」
「へぇ、女の子、好きそう。平和な感じなら僕も読みたいかな」
「私が大好きな話だからトケイもいけるよ」
更夜の説明を聞いてトケイが少しだけ興味を持ったのでスズがやや子供向けであることを伝えた。
「落ち着いたら貸して」
「いいよ!」
歩きながら話していると正門に堂々と「味覚大会!」と墨字で書かれているのを見つけた。城とはややアンバランスか。
「世界観がおかしくないか?」
「それだけ彼女が漫画で迷っているということだよ。今後の方向性も含めて」
更夜の言葉にライが静かに答えた。ここはクッキングカラーの作者の心の世界だ。
城の門をくぐると受付があった。
更夜は進み出て参加手続きをした。
「しかし、俺が勝てるかはわからんぞ……」
「更夜さんが勝てなかったら別の策を考えますから! だいたい、あなたしか勝てないかと思う」
「……そうか」
ライの言葉に眉を寄せたまま答えた更夜は係員だと思われる人に案内され会場へと向かわされた。




