夢の色は秋の色1
秋の訪れ。鈴虫やコオロギが鳴いている。すでにセミの声はない。
セミは夏の盛りに鳴き、次第に鳴くものもいなくなっていく。セミの季節が終わると途端に秋へと向かい、涼しくなる。
「さすがに冷えてきたなー」
高身長の青年プラズマは夕暮れの雨を縁側で眺めながらつぶやく。
「障子、閉めて寝たらいいじゃないの。寒いのに少し開けるから寒いのよ」
茶色のショートヘアーの少女アヤがプラズマのひとりごとを拾い答えた。
「俺は暗いのと、閉め切った部屋が苦手なのー」
「どれくらい?」
アヤは温かいお茶を持ってプラズマの部屋に入ってきた。
「そういうことをされたら、震えて、泣き叫ぶと思う」
プラズマはアヤを見ずに背中を向けたまま答えた。アヤは机にお茶を置くと申し訳なさそうに座った。
「ごめんなさい。軽い気持ちだったの」
「いいよ。栄次とクゥちゃんしか知らないから。自分でも思うよ、情けないって」
プラズマが振り向き、アヤの方に歩いてきた。プラズマはわずかながら震えていた。
「それ、飲んでもいい?」
「え、あ、ええ。全員分、持ってきたの。栄次は近所の駄菓子屋さんでぬれ煎餅とお菓子を買ってくるのと、リカとこばるとはお風呂からもうすぐ出てくるから」
「えー? リカ、こばるとの風呂当番? 栄次にさせろよ。俺でも良かったんだけどな」
「ええ、栄次が帰ったら入れるって言ってくれていたのだけれど、遅くて……こばるとが我慢できないって言うからリカが……」
アヤの言葉にプラズマは目を細めた。
「あの時間を守る栄次が遅い?」
「……ええ。ちょっと遅いのよ」
「駄菓子屋って歩いて五分くらいのところにあるよな」
「……そうなのよ」
「しかし、特になにか異常があったというわけでもない。変な神力も特に感じない」
「そうなの。単純にどこかに寄っているだけなのかもしれないって思って」
アヤは悩みながらプラズマに答えた。
「待ってみるか?」
「そうしてみるしか……」
そんな会話をしているとほぼ裸の少女リカが走り回る少年こばるとを追いかけていた。
「ああ……もう、リカ、大丈夫……?」
「うわあ、なんかやべーことに」
プラズマが未来見をしてこばるとを捕まえ、お尻を一発叩いた。
「コラッ! リカは乙女なんだぞ! 裸で走らせんな! もう暑くないんだからいい加減にしろ。更夜に引き渡すぞ」
「ひいじいちゃんはやめてー!」
五歳くらいの少年こばるとは大人しくなりプラズマに体を拭かれ始めた。
「ありがとうございます、プラズマさん……」
疲れきったリカがタオルを恥ずかしげに巻きながら息を吐いた。
「リカ、ありがとう……。あの子、大変でしょう……。栄次しかまともに相手ができない」
「ま、まあ……栄次さん、いいパパな感じだからね」
「その栄次がまだ帰ってこないの」
アヤにそう言われたリカは目を丸くした。
「え? だって一時間以上前に出ていったよね?」
「そう。雨が降ってるから遅いのかも。まあ、とりあえず、着替えてきて。あたたかいお茶、あるから」
「ありがとう。アヤ。ありがたーくいただくよ」
リカはどこか疲れた雰囲気で脱衣所へ帰って行った。
時刻は午後六時半。
夕飯後、こばるとがおやつを食べたいとねだり、栄次はまだあいている駄菓子屋さんへ自身が一番好きなぬれ煎餅とこばるとのおやつを買いに向かった。
それから一時間後、帰ってきていない。駄菓子屋へは五分で行ける。
「……栄次さん、大丈夫だよね」
リカは心配になりながら脱衣所で寝巻きに着替えた。




