虐殺
『昨日、暗闇の山の中でキャンプをしていた三組の家族が血まみれの着物を着た何者かに刃渡り26センチもの屶で襲われるという非常に恐ろしい事件が起こりました』
「朝から物騒なもん見せるなよ」
「テレビつけたらたまたま映ったんだよ」
「お前はテレビつける時に前のめりになってつけるのか?外部入力しかしないお前が」
ぐうの音もでないと言ったところか
口で勝とうなんて何回生き変わっても無理だということを分かれよ
しかし、この事件は酷いもんだ。刃渡り26センチの屶なんか振り回したら切り傷程度じゃ済まない
当たった場所に構わず、瀕死状態になる可能性が高いほどだ。
『今回事件があった山には小さな学校もあるということで警視庁が総力を上げて捜査に当たっています』
字幕には山の名前の大桜山の文字。
言うまでもない、俺たちの学校がある山の名前だ
昨日条坂が言った事が本当に起こるんじゃないかと思ったその時に、丁度紗羅先輩が起きてきた。水色の浴衣を羽織り、紺色の長髪からでた中毒を起こしそうないい匂いは途端に条坂の部屋いっぱいに広がった
「なあ」
「なんだ」
「今だったら、俺、死んでもいい」
わざわざ無駄口叩かんでくれ
「朝から騒々しい。何のニュースだ?亜希」
紹介が遅れたが、俺の名前は寺門亜希だ。
名前の印象関係なく、男だ
「集団殺人事件がこの近くであったらしですよ。刃渡り26センチの屶を振り回してたみたいで」
「警察は?」
「総力を上げて捜査に当たっているらしいです」
「屶振り回す輩になど勝てるのか?」
「数で押すんじゃないすか?」
「フン、それで、このニュースを見てお前たちは怯えて震え上がっていたと」
「それは少なくとも俺ではなく、条坂に」
「まあいい、顔洗ってくる」
ふわりと長髪が揺れる
条坂には誘ってるように見えるようだ
顔が語っている
条坂の部屋を出て、俺も顔を洗いに共有の洗面所へ向かった
途中、また同じニュースの音が聞こえてきた
教師の一人で、高校一年つまり俺たちの担任をしている香建の部屋からだった
「先生も見てるんですか?」
そういいながら襖を開けた、すると見知らぬ少女がポツンと立っていた
緑色の髪が目立つ綺麗な少女だ
「あ・・・えと、どちらさまで」
「・・・・忘れたんだ」
「え?」
突如振袖から現れた、聞き覚えいや見覚えでもないどう言えばいいのか分からんが、ニュースで紹介された刃渡り26センチの屶というものに見えなくもなかった。
無表情で、瞬き一つせずに刃を光らせてこちらへ距離を詰めてくる。咄嗟に後ろに広がる庭に逃げ出してこうげきをかわすもまた追いかけてくる。大声で助けを呼んだが、少女は躊躇いも見せず屶を振り回して暴れ続けている。最初に飛び出してきたのは香建だった
その部屋から始まったのだから一番最初に騒動に気づくのは当然だ
「寺門走れ!私が止める!」
尚も追い続ける少女を今度は香建が追いかける形になった。少女は臨機応変に態勢をぐるりと返し、屶を振り下ろした
大きかったが気づきにくい悲鳴が聞こえた
ビシャァという緑の庭が赤に染め上がる音と、「ギャッ」という声とは思えない声が聞こえた。
肌色の棒状の物はボトリと地に落ちる
香建が痛みで大声をあげようとした途端、黒光りした凶器はそれを封じるかのようにして、首を通過していった。
いつのまにか周りにはとても大勢とは言えない人集りができていた。
ーー最悪だ。
庭には頭部、腕部、胴体のスクラップが赤色で綺麗に飾られている。
野次馬の中には吐いている人や泣き叫んでいる人もいた。
「おい・・・亜希」
「今のが今朝の殺人鬼だろうな」
その後、直ぐに警察が来て事情聴取を受けた
救急車には、バラバラ死体を見て気分を悪くした生徒が数人乗っていった。
「亜希が無事で良かったよな」
条坂の空気の読めていない発言が更に空気を重くしていく
「何がいいんだよ」
この後、誰一人として、自分の部屋からは出ることは無かった




