サクリファイス
机やカバンの中に散らかされた課題の数々が今はとても辛く思える。
寮から生徒が出てこなくなって三日
この間の食事などはすべて先生達が持ってきてくれた。生徒の気持ちを察してくれたんだろうな、先生達も同じだろうに。
それもいつも笑顔で「ここにおいておくね」と言ってくれている。本当にここの先生達は良い人ばかりだ
今日のニュースには三日前の事件がすでにほとんどの番組で放送されていた。
「バラバラ死体」「虐殺」「庭に大きく広まった血痕」
ここでは思い出したくない言葉を延々と流し続ける鬼畜なニュースだったがな
「アキ、いるか」
「いるに決まってるだろ、三日三晩誰も部屋から出てないんだから」
「入ってもいいか」
「なにしに来た」
「なんか気分が晴れなくてよ」
空気を読め空気を
「みんな一緒さ。ここにきたって気分晴れるどころか、暗くなるだけだ」
「それと、ちょっと話ときたいことがあってよ」
条坂の話はろくでもない事はわかってるんだ
ここで追い返しても......
「今はそんな気分じゃないって、戻ってろ」
「まあ、いいから聞けって」
ほらきた。ああ、どうせそうなるって思ってたから気にしないけどさ
ポケットから聞こえる小銭がイライラを悪化させるが、仕方なく部屋へ招いた。仕方なく。
条坂は座るなり大きく深呼吸して、それでいて過呼吸になりかけて軽そうな口を重そうに開いて話し始めた
「俺ここに入学する時に怪談を聞いたんだ」
「誰に」
「なんか小さな女の子に言われたんだよ。つか、お前に前話したろ?」
「いや、記憶にない」
「まあ、いいや。それでさ、その内容なんだけど・・・・」
早く言えよ。文字制限あんだから
「この近くの神社には食の神って妖怪が住み着いてんだって、そいつは生きた物を食うだけに生きてるって噂がこの周辺で広まってるらしいんだ」
「それとこの前のと何かあんのか」
「それがな、そいつは生きた物は必ず適当に三つに切り分けるっていうじゃねえか。俺それ思い出したらいてもたってもいられずにさ」
三つに適当に切り分けるというところはこのバカの話とばっちりあってるな。
だが今回は、切られたのみ。食われちゃいないし、あのあとちゃんと埋葬されたみたいだし・・・・
「それとまだあるんだけどさ」
「いや、ちょっとまて。なぜ生きてる物しか食わないのに、わざわざ切り分けるんだ?死んでしまっても食うのか?」
「ああそっか!あ、いやそこんところはよく知らない」
ああそっかじゃねえだろ。矛盾に気づけ
「それで、あともう一つは?」
「ああ。そいつの事は絶対に覚えとかないといけないらしいんだ。一度知ってしまったら死ぬまで覚えとかないとダメらしい」
「じゃあお前は丁度今俺を危なっかしい事に巻き込んだわけだ」
「そうそう俺だけ知ってるのは怖・・・・ああっ!」
こいつ喰われとけよ・・・
そいつが喰わなくても俺が食ってやるこの野郎
これ以上こいつがここにいたらろくな事が無い。本当にーー
条坂が黙々と話を進めて行くがそれを塞ぎ、部屋へと戻らせた。
しかし、そいつはいったいなんの事だろうか
ただの噂だということもありえるが、確かにこの前のとしっくりくる何かがある
そうこうずっと考えていたが、夕食の時間がやってきた。今日も先生達が運んできてくれるはずだ
だが、いつもの7時になってもいつまでたっても運ばれてこない。
最初は何か豪華な物を作ってくれてるのだと思っていたが、8時をすぎてもまだ来なかった。あたりはだんだん暗くなり、昨日降った雨の名残につられてカエルが合唱を始める。
おかしい。そう思ったのは俺だけでは無いようだ
三日三晩静かだった寮に久々に生徒の声が飛び交いはじめた。
もちろん、あのバカも例外じゃない
「なあ、アキおかしくねぇか?」
「百も承知」
職員室に向かった俺と条坂は途中で紗羅先輩と会った。
「久しぶりだな、妙な気分で妙だな」
「分かりにくいんで後にしましょう」
職員室に向かう事を言うと快くついてきてくれた。
職員室からはいつも通り明かりがあった
「失礼します」
誰もいない。明らかにおかしい
「食堂にも誰もいなかったぞ」
さすが紗羅先輩。気が利く
「庭には入れねぇぞ!?」
KEEP OUTの意味を勉強しなさい
色々探って見たところ、職員室に置かれた小さな教員机の上には少量だが血がついていた
「おい・・・・まさか」
「見つかってもねぇのに変な連想するな」
裏口のドアの近くにも三滴ほど落ちていた。
どうやら外のようだ
勝手口からいける場所は、ゴミ捨て場くらいしかない。
それか、行ったことはないが小さな神社に行けるらしい。それが噂の神社だと思うのは俺だけじゃないはずだ。
歩くにつれて、足元の湿度が増してくる。水音がぴちゃぴちゃとカエルの合唱にかぶさる。
暗闇の中行き着いた場所は、ーー神社だ。
ライトを照らすと、見るも無残に千切られた教師四人の死体が散らばっていた。
これで、この学校は学校ではなくなった。教師のいない学校ということになったのだ
神社が赤いのは先生達の血液が影響なのだろうか、賽銭箱の中には腕や脚。さらには少し削れた肋骨が入っていた。
「食の神は骨までかじるのか」
紗羅先輩が言った言葉には驚いた。先輩もそいつの話を知っていたのだ。
「話は戻ってしよう、ここにいれば他の生徒がやってきてしまう。」
水音をたてながら俺を含めた三人は職員室の勝手口へと戻った。
そしてそれは帰ってから気づいた。
袖や靴下や靴の裏についた血液。そう。
あの葉から滴り落ちるか参道を歩くたびにしていた水音は、四人分の血液が奏でていた事に。
カエルと血液の合唱は既に学校中を包み込んでいたんだ




