↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/12

偽りの糸

女は試すことにした。


存在しない糸を一本。

美しい女の前に垂らした。


「今度、○○関係の方とお会いすることになって」


名前は出さない。

場所も言わない。


ただ。

少しだけ価値がありそうに聞こえる話。


美しい女は笑った。

「へえ。すごいですね」


それだけだった。


翌日も。


何もない。


三日。


一週間。


何も起きなかった。


女は少し考えた。

読み違えたのだろうか。


あの美しい女は。

自分が思っているような人間ではないのかもしれない。


偶然が重なっただけ。

そんなこともある。


女はその糸を忘れることにした。


二週間ほど経った頃。

仕事で出席した席で。


初対面の人物が言った。


「○○関係の方ともお付き合いがあるそうですね」


女は動かなかった。


「どなたから?」


「あれ? 違いました?」


相手は笑った。


「そう聞いた気がしたんですが」


女も笑った。


「いえ」


それだけ答えた。


帰りの車の中。

女はしばらくエンジンをかけなかった。


食いつかなかったのではない。

見えない場所から。

辿っていた。


そして。


自分が垂らした偽物の糸を。


自分の知らない場所へ張り直していた。


女は初めて思った。


――上手い。


自分より。


ずっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。