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振動
最初は偶然だと思った。
女が仕事で知り合った人物について話した時。
美しい女が反応した。
ほんの少しだけ。
笑顔は変わらない。
声も変わらない。
けれど。
空気が揺れた。
別の日。
また別の名前が出た。
今度は質問された。
「その方とは、どこで知り合ったんですか?」
何気ない質問だった。
だから女も何気なく答えた。
「仕事です」
「そうなんですね」
それで終わった。
数日後。
美しい女は、その人物とつながっていた。
女は画面を見ながら考えた。
偶然。
それでも構わない。
偶然はある。
自分も、偶然から始まった。
だから女は何もしなかった。
一本だけ。
細い糸を垂らした。
誰につながっているのか。
どこまで続いているのか。
わざと曖昧なまま。
そして待った。
数日後。
糸が揺れた。
女は笑った。
――触った。
蜘蛛は、巣に伝わる振動で知るという。
風なのか。
枯れ葉なのか。
それとも。
獲物なのか。
女は初めて、その美しい女を注意深く見た。
違う。
この人は、配信者を見ていない。
少なくとも。
配信者だけを見ている女ではない。
見ている場所が。
自分と似ている。




