美しい女
その女を初めて見た時。
綺麗な人だと思った。
それ以上でも、それ以下でもなかった。
整った顔。
長い髪。
笑えば自然と人の視線が集まる。
配信者の近くにいることも多かった。
仲間ではない。
それは、すぐに分かった。
彼は自分の仲間を大切にする。
その境界は意外なほど明確だった。
内側にいる人間には、驚くほど手をかける。
困っていれば助ける。
何かあれば守る。
けれど、その女に向ける態度は少し違った。
親しいように見える。
話もする。
笑いもする。
それでも。
扉の内側には入れていない。
外から見れば、その違いは分からないかもしれない。
女には分かった。
自分も長い間、扉の外にいたから。
ある日。
配信者が何気なく言った。
「この前会った人、綺麗だったでしょ」
女は自分のこめかみに触れた。
そこには、大きな傷が残っている。
化粧をしても隠しきれない。
あの日から残ったもの。
鏡を見るたび、そこにある。
「そうですね」
女は答えた。
それだけだった。
「ああいう人、モテるんでしょうね」
「そうでしょうね」
配信者は何も気づかず話を続けた。
女は笑った。
嫉妬はなかった。
自分の顔と比べることもしなかった。
彼が美しい女を好むとしても。
それは女には関係のないことだった。
恋ではない。
最初から。
ただ。
その美しい女には、少し気になるところがあった。
視線だった。
彼女は配信者を見ているようで。
時々。
その向こうを見ていた。




