↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/12

糸は、一本ではなくなっていた。


いつからだったのか、女にも分からない。


最初は一本だった。


偶然、目の前に垂れてきた細い糸。


切れるかもしれない。


途中で消えるかもしれない。


だから、強く引かなかった。


ただ残した。


それだけだった。


けれど、一本の糸は人につながっていた。


人は、また別の人につながっている。


仕事。

信用。

紹介。

偶然の再会。


一度きりの食事。

何気ない会話。


それらを繰り返しているうちに、女の周囲には細い線が増えていた。


もう、どの糸が最初だったのか。

見失いそうになるほどに。


夜。


女はいつものようにスマートフォンを置いた。


聞き慣れた声が流れている。


配信者は笑っていた。


「そんなん知らんて。ほんまに」


コメント欄が流れていく。


女も少し笑った。


配信では、いつもこうだった。


関西の言葉。


時折、京都らしい柔らかな響きも混じる。


けれど、女と直接話す時だけは標準語だった。


最初からそうだった。


丁寧で。


少し距離があって。


決して冷たいわけではない。


ただ、そこには一枚の扉があった。


女は、その扉を開けようとしたことがない。


開けてほしいと願ったこともない。


以前なら。


もう少し興味があったのかもしれない。


扉の向こうに何があるのか。


そこから、どんな糸が伸びているのか。


けれど今は。


彼の声を聞きながら、女は別の画面を見ていた。


数日前に届いた連絡。


仕事で知り合った人からの紹介。


そして、その先にいる人。


一本。


また一本。


糸は増えていた。


女はスマートフォンを伏せた。


配信者の笑い声だけが、部屋に残った。


最初の一本は、まだ切れていない。


ただ。


もう、それだけを見ている必要はなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。