75.和食
「食べ方は人それぞれなんだけど、私はこうして別皿に生卵を入れて、まずお醤油を五滴くらい入れます。そしてよくかき混ぜて……こうして熱々ご飯にかけます」
「わー! 美味しそうです~!」
「黄身と白身、オショーユがうまい具合に混ざり合ったところで、投入か。よし!」
私が卵かけご飯の説明をすると、二人ともわくわくした様子で真似た。
ただ二人にも言ったように、卵かけご飯の食べ方はそれぞれなんだよね。
「ここからご飯も一緒に混ぜる人もいるし、このまま食べる人もいるんだよ。ほかには、ご飯をよそうときに少しだけ中心に窪みを作って、そこに直接卵を割り入れる人もいるからね」
「ミルクセーキみたいに混ぜるんですか?」
「そこまで攪拌するわけじゃないよ、軽くね」
「直接割り入れるのもいいが、その場合はオショーユはいつ入れるんだ?」
「タイミングも人それぞれだよ。卵を割り入れた状態でお醤油をかける人もいるし、ご飯と卵をある程度かき混ぜてから加える人もいるしね。それに、お醤油の分量も好みで違うから、それは徐々に自分の好みをみつけてね」
説明はここまで。早く食べないと冷めちゃうからね。
もう一度軽く「いただきます」と呟いて、お箸でご飯を掴む。
生卵が滑りやすく掴みにくくはあるけれど、それでも一口には十分。
うん、美味しい。刻んだお米だから微妙に食感は違うけれど、それでもこれは間違いなく卵かけご飯だ。
ポンちゃんとクライスは、私が一口を味わっているのを見てから、器用にお箸で一口大に掴んで口へと入れた。
お箸の使い方をあっという間に覚えたクライスはさすがだよ。
しかも難しい卵かけご飯もちゃんと掴んでいるんだからね。
「美味しいです~!」
「うん、これはまた昨日とは違った味わいがあるな。ご飯だけの甘みのある味もよいが、こうして生卵に包まれたご飯はオショーユの塩味と相まって、お互いの味を上手く引き立てている。しかも、昨日感じた生卵のみの生臭さは消失していて、食欲を増進させてくれる。最高の組み合わせだな」
「そうだね。他には、さっき言ったように、こうして食べる方法もあるよ」
ポンちゃんの感想にはにっこり。クライスもちょっと長いけど、気に入ってくれたようでよかった。
というわけで、違う食べ方もあるよってことで、ご飯と生卵をお箸でかき混ぜる。
卵かけご飯については、各家庭各人それぞれの流儀があるんだよ。――と私は思ってる。
ただちょっと、このやり方はお箸が上のほうまで汚れるのが難点なんだけどね。
ねぶり箸はご法度。
全部かき混ぜてから、一口大をお箸で掴んで口へと入れる。
うん、味は変わらない。ただ、卵がまんべんなくお米を包んでくれるところが利点かな。
私の動きを見て、ポンちゃんもクライスも同様にお箸でかき混ぜ始めた。
「さっきの食べ方も、この食べ方もどちらでも好きなようにして食べてね。あとお醤油を足すのもありだし、減らすのも当然ありだから」
あとは好きなように食べてほしいから、もう何も言わずにお味噌汁へ手を伸ばす。
うん、朝のお味噌汁は格別に美味しい気がする。
それに、クライスが焼いてくれた白身魚も、皮はパリパリ、身は柔らかくて美味しい。
でもちょっと塩味が足りないんだよねえ。
塩分の摂りすぎはよくないけど、少しくらいはいいよね。
ということで、お醤油を焼き魚にかける。
大根おろしもあれば最高なんどけどな。
卵焼きにも合うし、ハンバーグにも合うからね。
大根は煮ても炒めてもそのままでも美味しい万能野菜だし、どこかにあればいいなあ。
「ユーナ様、ボクもオショーユをお魚にかけていいですか?」
「もちろん。クライスもよければどうぞ」
「ありがとう、ユーナ」
ちょっと違うけど、「お醤油取って」「はい」「ありがとう」って家族のやり取りみたいで、なんだかくすぐったい。
うん。同じ釜の飯を食べた仲ということで、ポンちゃんはもちろん、クライスだって家族も同然だよね。
二人とも王子様とフェンリルの王とかすごいけど。
「オショーユは焼き魚にも合うのか。素晴らしいな」
「焼いたお魚もまた違った味がして、美味しいですね! やっぱりオショーユは魔法の調味料みたいですー」
「そうだね!」
二人とも喜んでくれるのはわかってたけど、こうしてちゃんと言葉にしてくれるのが嬉しい。
卵かけご飯も最高だし、ワカメのお味噌汁も焼き魚も美味しくて、最高の朝食(和食)だよ。




