74.TKG
「ポンちゃん、またお味噌汁を温めてもらっていいかな?」
「はい、わかりました」
いい感じにお米は炊けているようなので、お鍋を網から下ろす。
それからもう一つのお鍋にお味噌汁を入れて、わかめも用意してポンちゃんにお願いした。
その間に、先ほどの卵を浄化魔法で無菌状態にする。
卵かけご飯にお味噌汁に焼き魚。もう一品欲しいところだなあ。
海苔も魅力的だから、次に海辺にいったときには探してみよう。
他には漬物もいいかも。
考えてみれば菜っ葉を塩漬けにしただけのものがあってもいいんじゃない?
しかも、米酢を手に入れたんだから最強だ。
この世界にもピクルスはあるけれど、ワインビネガーで日本風漬物を作るって発想を今までしなかったことは後悔。
せっかくの異世界なのに、私はまだまだ固定観念に縛られているなあ。
塩こんぶとキャベツを和えたのとか美味しいし、昆布もどきはあるんだから、今度それもやってみよう。
昆布の佃煮もいいな……。
って、そうだ! ぬかがあるんだから、ぬか床を作ってぬか漬けもできるんじゃない!?
で、ぬか床はどうやって作るんだっけ?
ダメだ、さすがにわからないや。魔女の知識にあるわけもないし。
とにかく、まずはあの巨大お米の中で米酢になっているお酢を取り出して、酢酸菌の保管も必要だよね。
それに濁酒を清酒にしたいけれど、それまでの工程はさすがに手間がかかりすぎるし、単純にろ過するだけでいいかな。
それで麹は手に入るし、酵母を取り出して保管。
これで、日本酒と米酢を作ることができるはず。――まあ、あのお米の生る木は記憶マップにピン止めしたから、いつでも取りにいけるけれどね。
いろいろと心の中でメモをしながら、器に除菌した卵を割って入れる。
卵の殻もとってもいい養分になるので、後で処理。
ちなみに、洗い物を減らすためにも直接ご飯に割り入れるのもいいと思う。
ただ、私は白身のぬるっと感があまり好きではないので、先に小鉢でしっかり混ぜ混ぜしておく。
もちろんお醤油を数滴入れてからね。ちょっとリッチなときには、だし醤油を使ったりするもんね。
ほかには温泉卵。白身がいい感じに半熟になっていて、ぬるっと感がないから大好き。
自分で温泉卵を作ることは何度か挑戦したけれど、どうにも殻と身が上手く分離してくれなくて、ただの黄身になることが多くて諦めた。
でも今なら魔法で温度調節もできるし、成功するのでは?
「ユーナ、今日はその生卵をどうするんだ?」
「これはTKGにします!」
「てぃーけーじー?」
「てぃけじい?」
「あー、えっと卵かけご飯ってこと」
焼き魚をお皿に盛りつけたクライスが、生卵に期待の視線を向けながら質問してきた。
それに答えると、お味噌汁をかき混ぜていたポンちゃんも首を傾げる。
ついノリでどうでもいい略をしちゃったけど、ちゃんと答えるべきだった。
それで慌てて言い直すと、二人ともしっかり通じたみたい。
「要するに、あのご飯に生卵をかけて食べるということか?」
「新しい生卵の食べ方ですね!」
「うん、そういうことだね」
単純明快なお料理名……と言っていいのかはわからないけれど、内容が伝わってよかった。
昨日のミルクセーキをかなり気に入ったらしいポンちゃんは、久しぶりに隠しているはずのしっぽがぶんぶん振っているように見える。
クライスはまた新しい料理を食べられることにわくわくしている様子。
昨日も夜遅くまでかまどの傍で何かメモを書いていたのは、テントの中からでもわかった。
その後に魔鳥まで飛ばしていたよね?
王宮にいったいどんな食レポが――報告が届いているのか気になるよ。
ひとまず蒸らし時間も終わったので、木べらでお鍋の白米を混ぜ混ぜ。
昨日よりも水量調節が成功したのか、上手く炊けたみたい。
卵かけご飯に私も期待が高まりつつ、ひとまずはお茶碗によそう。
お味噌汁はポンちゃんにお願いして、クライスが用意してくれたテーブルに並べていく。
「さて、それではここでお醤油の出番です」
「オショーユ!」
「なんと、またそのソースか! どうするんだ?」
二人ともお醤油を気に入ってくれているからか、収納魔法から取り出した瞬間、歓喜の声が上がった。
それほどに喜んで暮れて嬉しいよ。
席に着くと、まずは「いただきます」の挨拶。
ポンちゃんだけでなく、クライスも同じように挨拶してくれてほっこり。
では、卵かけご飯を実践!




