73.成長
昨夜は久しぶりの白米に、王宮の料理長自慢のソースで食べる最高級のステーキ。
そして、じっくりことこと煮込んだスープで最高の夕食を食べることができた。
ポンちゃんもクライスも、白米を絶賛してくれて、お替わりを何回もしてたもんね。
というわけで、最高の夕食の次の日は、最高の朝食といこう。
小鳥たちの鳴き声、遠くで聞こえる獣の遠吠えを耳にしながら、テントの中で簡単に朝の支度をする。
ちなみに、この世界にきてからは常にすっぴんです。はい。
でも魔女パワーなのか何なのか、お肌が十代の頃に戻っている気がするんだよね。
さらにはニキビもゼロ。
若返って嬉しいというよりも、思春期の頃に悩まされたニキビがない感動が大きい。
とにかく、朝の準備は浄化魔法で顔を洗って、髪を梳かし、着替えるだけで完了。
さて、それでは手に入れたお米で今日は卵かけご飯を食べるぞ!
「おはようございます、ユーナ様。寝坊してしまいました……」
「おはよう、ポンちゃん。大丈夫だよ。私も起きたばかりだから。それにポンちゃんは昨日、いろいろなことがあって疲れているだろうから、もっと寝てていいんだよ?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です! いっぱい食べて、ぐっすり寝ましたから!」
「それならよかった。朝ごはんもしっかり食べられそう?」
「はい!」
昨日のポンちゃんはお兄さんと対峙して覚醒したり、仲間のフェンリルに囲まれたりと大変だったからね。
無理をしているわけでないのは感じられるから、それならいろいろお手伝いしてもらおう。
「先に出てご飯の準備をしているから、ポンちゃんはここを片づけてもらっていいかな?」
「わかりました!」
テントの中に敷いたお布団を小さく畳んだり、簡単に掃除してもらったりと、テントを収納する前にすることはあるからね。
ポンちゃんの元気な返事を聞いてからテントを出ると、ちょうどクライスも出てきたところだった。
「おはよう、ユーナ」
「……おはよう、クライス」
さすが魔女が手に入れたいと思っただけあって、朝抜けからクライスは眩しいくらいの美青年だよ。
朝陽に照らされたクライスを表現するのに、イケメンって言葉では足りない。
これで性格までいいんだから、天は二物も三物も与えているよね。
ただ、厄介事まで引き寄せてしまうのは気の毒でしかない。
「今日の朝食は私が作るね」
「ひょっとして、ミルクセーキを作るのか?」
クライスの短所というわけではないけれど、食いしん坊がすぎるところは、人によっては減点対象になるかも。
私も食いしん坊の自覚はあるけれど、それでもクライスほどではないと言い切れるよ。
私が取り出した卵を見て顔を輝かせる姿は、後光が差して見えるくらいなのに。――朝陽を背にしているからか。
「あれも美味しいけれど、朝食は卵かけご飯にしようと思って」
「たまごかけごはん? まさか、昨日の白米に生卵をかけるのか?」
「うん、そう」
「それは楽しみだな!」
無邪気に笑うクライスを見ていると、私まで笑顔になる。
とはいえ、未知なるものにそこまで期待できるのはすごいよ。
きっと、クライスのような人が過去に危険を冒してまでいろいろなものを食べてきたからこそ、日本でも美味しいものがたくさん味わえたんだろうからね。
そんな健啖家なクライスに、昨日のままにしていたかまどに火を入れてもらう。
その間に、今度は浄化魔法でお米を洗って、お水を昨日より少なめにして浸透させ、温まった網にお鍋を置いた。
朝食は卵かけご飯とお味噌汁、あとは何がいいかなあ。焼き魚かな。
「クライス、この魚を網焼きにしてもらっていい?」
「ああ、任せてくれ」
ベイカの街でいただいた魚の切り身をクライスに渡し、テントから出てきたポンちゃんの許に行く。
テントを収納しないといけないからね。
「ポンちゃん、片づけをありがとう」
「ユーナ様、このテントを小さく畳むのはボクが試してもいいですか?」
「え? それはもちろん。お願いできる?」
「はい。頑張ってみます」
テントを小さく畳んで収納魔法へ片づけようとした私に、ポンちゃんが頼もしいことを言ってくれた。
何事も挑戦は大切だし、今のポンちゃんならきっとできると思う。
それなのに、私が先回りしてしまってはダメだよね。
師匠として弟子の成長を嬉しく思いつつ、ちょっと反省。
だけど、いつでもフォローできるように、ポンちゃんが収納魔法を駆使するのを見守る。
「――すごい! ポンちゃん、成功したね!」
「はい! ちょっと緊張しましたけど、できました!」
誇らしそうに顔を輝かせるポンちゃんを目にして、私まで誇らしくなる。
ポンちゃんの収納魔法が付与された鞄は、私が力を施しているんだよね。
そこに、さらにポンちゃんは自分の力を加えて容量を大きくして、テントをするんと仕舞った。
すごいよ!
「ポン太が自分で仕舞ったのか? すごいな!」
「はい!」
クライスも自分のテントを仕舞うためにやってきたみたい。
それで一部始終を見ていたのか、クライスが感嘆して賞賛すると、ポンちゃんは素直に頷いた。
私はポンちゃんの頭を軽く撫でてから、お鍋の様子を見にかまどへ戻る。
かまどはかなり弱火になっていて、焼き魚は網の隅で保温状態。
お鍋はじっくりことこと、昨日のやり方をクライスはしっかり覚えてくれていたんだね。さすがだ。




