71.炊飯
さて、それでは本日の課題。
お米を炊くぞ!
というわけで、炊飯にとりかかろう。
さっき収穫したお米を収納するときに、きちんと分類していたんだよね。
しっかり水音がするのは、おそらくお酢になっているもの。
まだ水音に濁りが聞こえるのは、濁酒の段階ではないかと思えるもの。
そして、お米の生る木(仮名)からポロっと採れたお米もどき。
今回の本命――炊飯するには、この採れたてお米もどきなので、それを取り出す。
とはいえ、この巨大なお米もどきをどう炊くべきか。
まずは籾を取って精米……は風魔法で頑張ろう。
さっきの酢飯はすでにお米が柔らかくなっていたから、スプーンで掬って適当な大きさにしたけど。
この硬いお米をこのまま炊くのは難しいから、日本のお米のくらいの大きさに刻む?
それで果たして美味しいかは謎だけど、やるしかない。
まずは洗米だけど、ぬかが出るかな?
ざるで洗う人もいるけれど、私は横着なので以前は炊飯器の釜で洗ってたから、今回はそのままお鍋で洗う。
そこでふと、風魔法で細かく切る前に大きなお米を洗えば、よかったのではと気づいた。
まあ仕方ない。今後はそうしよう。
本当は洗浄魔法でもいいとは思うんだけど、最初だし手間を省かずしっかりと。
お鍋に水を入れてお米を洗っていたら、ポンちゃんもクライスもじいっと見てた。
気になるのも当たり前だよね。
「これは洗米といって、お米を炊く前に洗うの。さっき風魔法で取り除いたこの籾……皮をはがしただけじゃ、ぬかっていうのがついているかもしれなくて、そのまま炊くと味が落ちるからね」
「いろいろ大変なんですねえ」
「そうだね。魔法がないともっと大変だけど、みんなご飯を美味しく食べるために頑張るんだよね」
「美味しい食事のために努力を惜しまないとは、素晴らしい心がけだな」
「うん。まあ、疲れているときは手抜きしちゃうけどね」
「手抜きも悪いものではないと思うぞ。無理して料理で疲弊しては、美味しいものも味わいがなくなる。それでは本末転倒だからな」
「それはそう」
さすがグルメなクライス。わかってるね。
世の中に簡単な料理なんてないんだよ。工程を簡単にする料理はあるけどね。
たとえば、無洗米を購入するとか。カット野菜も便利だったなあ。
疲れていても外食はしたくないときとかあったし。
でも、魔法が使えればかなり料理も楽にできるのが助かる。
日本では、カット野菜や簡単調味料とかが魔法のようなものだね。
「やっぱり、このお米にはあまりぬかはついてないみたいだから、洗うのはこれくらいでいいかな?」
ほんの少しだけお水が濁ったけれど、これは許容範囲内なので、洗米は二度で終える。
本当はぬかの混じったお水――お米のとぎ汁も使い道はあるんだけど、今回は廃棄。
お米のとぎ汁は、大根を煮るときとかにも使えるし、貯めておいて洗い物をつけておくといいんだよね。
それに栄養たっぷりだから、少し離れた場所に生えている幼木の傍にとぎ汁を流した。
いい養分になりますように。
そして、お鍋にお水を足すけれど、新米は水分が多いのでべちゃっとなりやすいから、水量は少し控えめにする。――新米だよね?
「さて、それではいよいよ炊飯を始めます」
「すいはん?」
「そう。お米を炊くこと。ただね、吹きこぼれたりするかもしれないけれど、手は出さないでいてくれるかな?」
「わかりました」
「もちろんだ」
お米を炊くときは火加減が難しくて、吹きこぼれたりするとつい蓋を開けたくなるんだよね。
でもここは、昔からの言い伝え、『始めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな』を守ろう。
まあ、この言葉はかまどで火の調節が難しかった頃のもので、魔法で――現代日本ではガスコンロなどで火力を調節できるならそれほど気にしなくていいもの。
ただし、蓋を開けていいのは沸騰中だけで、蒸らしている間はお鍋の中の温度が逃げるから開けてはダメ。
ちなみにお米を美味しく炊くのに重要なのは水分量、それから火にかける前にしばらくお米を水に浸しておくこと。
ただこのお米は切り刻んでいるので、浸透も早いと見越して、少しの時間でいいはず――なところで、こちらにご用意したのが、すでにお水を浸透させたお米です。
脳内で一人クッキング番組を進行させているけれど、単に魔法でお水の浸透を促しての時間短縮。
「では、点火するね」
「楽しみですね~」
「上手くいけばいいよね!」
「昼間のすめしも美味しかったのだから、大丈夫だろう」
「うん、そうだね」
確かに、酢飯はそこまで気を遣わなかったけれど、あれが成功したからこそ、期待も高まるというもの。
このお米もどきを上手に炊いて、ポンちゃんとクライスに卵かけご飯を美味しく食べてほしい。
だから、上手くいきますようにと願いを込めて、魔法でかまどに点火。




