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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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70.三人旅


 ミルクセーキも美味しかったけれど、やっぱりプロの作った焼き菓子は美味しくて、三人とも幸せに満たされたところで、再び出発。

 今度は徒歩ではなく、空を飛んで山越えをすることに。

 そして、少しずつ硫黄のにおいが漂い始めて、温泉地が――活火山が近いんだなってわかった。

 まだまだ微量ではあるけれど、ポンちゃんは大丈夫か心配になってきた。


「ポンちゃん、お鼻は大丈夫? においがきつかったら、魔法で消臭できるよ?」

「大丈夫です。確かにきついにおいですけど、ボクたちにとって、このにおいは害ではないですし、不快でもないですから」

「そうなの? それは意外だ」


 硫黄って確か、硫化水素が含まれているんだっけ?

 まあ、温泉に浸かるサルもいるくらいだし、ワンちゃんと一緒に入れる温泉とかもあったはずだから、そこまで気にする必要はないのかな。

 飲まなければ大丈夫とか?

 この世界の自然について、地球と比べるものではないのかもしれないけれど、何事も注意は必要だからね。


「ユーナ、今日は宿をとるか? それとも、野営にするか?」

「そうだねえ。できれば、手に入れたお米を試したいから、野営がいいかな? ポンちゃん、協力してくれる?」

「もちろんです!」


 ポンちゃんは私の提案にはほぼ賛成してくれるんだけれど、それでも意思確認はしたいし、お願いと感謝の気持ちは忘れないでいたい。


「ありがとう、ポンちゃん。じゃあ、野営でいいかな?」

「ああ。ぜひそうしよう!」


 クライスの返答もわかってたよ。

 私に選択権を渡したんだから賛成してくれるだろうことは、クライスの性格からして間違いない。

 ただ、それ以上に「お米を試したい」って私の言葉にすごく惹かれているよね。


 過去に大噴火があったのか、この辺りはまだまだ火山から遠いはずなのに、大きな火山岩らしき岩が転がっている。

 それも苔むしたり、岩の上から草木が生えたりもしていて、かなり昔の噴火だったのかなって思えた。


「ユーナ、ポン太、あそこで野営はどうだろう?」

「そうだね。いい感じに下草が生えているし、危険な獣もいないっぽい」

「ちょうど風上になりますから、においも気にならないです」

「では、決定だ」


 クライスが指し示したのは、大きな火山岩の陰になるからか、日陰耐性の強そうな丈の短い草ばかりで、テントを張るにもよさげな場所。

 さりげないけれど、クライスは風上へと移動して探してくれたんだろうね。

 私たち人間は慣れてしまえばどうってことのないにおいだけれど、ポンちゃんは平気だって言ってもやっぱり気にはなるかもしれないから。

 ポンちゃんも気づいていながら、あえてお礼を口にしないのは、クライスに気を使わせないためかな。

 お互い不器用だけれど、初めの頃よりずっと仲良くなったなあ。

 うん、クライスは本当にいい人だもんね。――ちょっと変わってるけど。……いや、かなり変わってるか。


 クライスに続いて、ポンちゃんを抱えたまま、目的の場所へと降下。

 すぐに周囲へ防壁魔法を施し、野営のための荷物を取り出す。

 ポンちゃんはてくてく歩いてテントを張るための場所を探してくれて、クライスは適当な大きさの石を集めている。


「ユーナ様、ここがテントを張るのにいいと思います」

「わかった。ありがとう、ポンちゃん」


 大きな岩が屋根代わりにもなりそうな場所で、隣にもう一張りテントを張れそうだった。

 他にも場所はあるけれど、ポンちゃんがここを選んだのはクライスへの気配りだと思う。


「ポンちゃん、ここは広いからクライスが隣にテントを張っても大丈夫そうだね?」

「まあ、そうですね」


 まだちょっとだけ素直じゃないポンちゃんの頭を優しく撫でる。

 ポンちゃんは俯いているけれど、照れくさそうに笑っているのは見えるよ。


「クライス、この場所をポンちゃんが選んでくれたの。だから、隣にテントを張ったらどうかな?」

「いいのか?」

「もちろん。ね、ポンちゃん?」

「……はい。ここならそれほど魔法を使わなくても、テントを張るのに問題ないと思いますから」


 魔力切れのことを考えたら、魔法は常に最小限での使用がいいのは、魔法使いたちの常識。

 ポンちゃんも最近は魔力切れを起こさなくなったけれど、森の小屋で練習していたときはよく動けなくなっていたもんね。

 クライスの魔力が強いことは知っていても、いつ何時何があるかわからないというのは、さっきのフェンリルの襲来でもわかったこと。

 とはいえ、この三人で魔力切れの心配をする必要はないんだけど、ポンちゃんの照れ隠しにはクライスも気づいたみたい。


「ありがとう、ポン太。助かるよ」


 優しく笑って、ポンちゃんにお礼を言う姿は、ほんと王子様然としているなあ。

 それから、私もクライスもささっと魔法でテントを張ったのは矛盾しているけれど、気にしない。


「ポン太、この石をかまどにするために並べてくれるか?」

「いいですよ」

「ありがとう」


 クライスは集めた石をかまどにするためにポンちゃんに並べるように頼むと、収納魔法からテーブルを取り出して組み立て始める。

 二人旅から三人に増えてどうなるかと思ったけれど、なかなかうまくいきそうでよかった。




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