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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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5.けん制


「さすがユーナ様です! 指先ひとつでやっつけましたね!」

「……まだだけどね」


 ポンちゃんの言い方でなんだか世紀末な気分になる。

 とはいえ、ポンちゃんが喜んでくれてよかった。

 酔っ払い野郎は予想通り、他人様にご迷惑をかけることなく、向かいの店舗の石壁にぶつかって、地面に落ちた。

 でも、そのままダウンするにはまだ早いから。

 こういうのは徹底的に叩いとかないと、似たようなのが湧いてくるからね。

 私は立ち上がると、ぽかんとする店主さんとすっかり静まり返ったお客さんたちに微笑みかけてお店を出て、呻いているほら吹き野郎のところに向かった。


「で、何をどうお仕置きするって? そもそも、何に対してのお仕置き? 炎リザードを倒したことを怒ってるなら、他の出没する森に連れて行ってあげようか? うん。なかなかいい考えだよね?」

「っや……やめてくれ……」

「は? 何を? 森へ連れていくこと? でも、炎リザードを倒し損ねたんだよね? もう一度チャンスをあげようってんだよ? 何なら防壁魔法で囲った空間にリザードと一緒に入れてあげるから、一対一(タイマン)でやれよ」


 ほら吹き野郎を踏みつけて質問しても、ちゃんとした答えが返ってこない。 

 そもそもこの人、私たちが倒したことに難癖つけてきたんだよね?

 手柄を横取りしたって感じで怒ってたけど、こういうやつが一番嫌い。


「ユーナ様、逃げられないのはこの臆病者のほうですよ」

「ポンちゃん、臆病者だなんて言うのはかわいそうだよ。この人はね、ただの嘘つきだから」

「なるほど~」


 ポンちゃんにこんな悪い大人の見本みたいなのは見せたくなかったけど、それもまた社会勉強だからね。

 ずっと魔女の家があった森で暮らしていれば出会うことはなかったけど、いつかポンちゃんが独り立ちをしたときのためにも必要なこと。

 可愛い子には旅をさせよ、っていうからね。……私という保護者付きだけど。


「くっ、くそ! ふざけんな!」

「おっとお?」


 ポンちゃんと話していたから油断していた。

 酔っ払いが私の足を逃れて立ち上がり、殴りかかってきたから避ける。

 さすがというか、体力だけはあるんだ。

 まだふらふらしているのは、私が避けたからか、酔っぱらっているせいか、石壁に勢いよくぶつかったダメージが大きかったからかな。


「そんなに元気があるなら、やっぱりリザードくらいなら倒せるんじゃない? そうすれば人助けにもなるし、美味しいお料理もまた食べられるし、いいことづくしだよね?」


 ふらふらしている酔っ払いを指さすと、「ひいっ」って小さな悲鳴が上がった。

 もう吹っ飛ばしたりはしない。ただ邪魔だから拘束して空中へ浮かせただけ。

 途端に、固唾をのんで見守っていた人たちからどよめきが上がる。

 ただ吹っ飛ばすよりも、こうやって目に見えた力のほうが牽制になるからね。


「ポンちゃん、この辺で他にリザードが出没しそうな森はあるかな?」

「そうですねえ……」

「や、やめてくれ! 頼む! 頼むから下ろしてくれ!」


 ようやく酔っ払いほら吹き野郎の心が折れたっぽい。

 それなら、ちゃんと必要なことを教えてあげないとね。

 たぶん、彼は――ガースは乱暴者とかで、今まで誰も注意することができなかったんじゃないかな?


「お願いする前に、言うことがあるんじゃない?」

「何だ!? 何でも言う!」

「ポンちゃんのことを馬鹿にしたことを謝罪して。ポンちゃんはすごい努力の子なんだよ。あの戦争で大怪我を負って、それでもくじけず魔法を一生懸命覚えたんだから」

「ユーナ様……」

「悪かった! 俺が悪かった! 頼む! 許してくれ!」


 ガースは私の浮遊魔法で二階くらいの高さまで浮いているから、その声はとってもよく響いた。

 町の人たちにもしっかり届いただろうし、これくらいで許してあげてもいいかな?


「ポンちゃん、どうする?」

「ボクはどうでもいいですけど、ユーナ様を馬鹿にしたことは許せません」

「悪かった! お嬢様にも、悪かったって!」

「……謝るときは、ごめんなさい、じゃない?」

「ごめんなさい! 許してください!」


 ガースが謝罪したことで、周囲はかなり驚いている。

 やっぱり、乱暴者だか何かで町では持て余していたんだろうな。


「それじゃあ、これからはちゃんと真面目に働いて暮らすよね?」

「わ、わかった!」

「町の人たちにも約束して」

「約束する!」


 うん。これくらいでいいか。

 浮遊魔法を解いて、ゆっくり地上に下ろしてあげると、ガースはふらっとしてぺたんと地面に座り込んだ。

 腰が抜けたみたいだけど、これでも手加減したんだよ。


「お嬢さん! お連れさんも、本当にガースが申し訳ありませんでした!」

「彼もまあ……反省しているみたいだし、今回は許します。ちゃんとこれから真面目に働けばいいですけどね」

「私が責任を持ちます」

「わかりました」


 店主さんも大変だな。町長としての責任もあるんだろうね。

 まあ、私たちは明日の朝発つつもりだし、彼のこれからのことはわからないけれど、ちゃんと更生することを願ってるよ。

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