42.食レポ
サングリアも美味しくて、二杯目はついつい白ワインにしてしまいました。てへ。
ポンちゃんは白ぶどうジュースで、クライスは私に付き合ってくれる。
一人でお酒を飲むより、付き合ってくれる人がいるほうが楽しいね。
磯焼をするときにはビールがいいなあ、なんて考えながら、お好み焼きをナイフで切り分ける。
こうして実際に切り分けてみると、コテじゃなくてもいいんだけど気分の問題だよね。
「はい、ポンちゃん。前は豚玉……豚肉のお好み焼きを食べたよね? それのクラーケンバージョンだから、このソースとマヨネーズで好きに食べてね」
「わかりました!」
「クライスも、ポンちゃんのようにして食べてみて?」
「ありがとう」
青のりはもともと使わない派だったけど、やっぱり鰹節は欲しいな。
贅沢を言えば、紅ショウガもなんだけど……ショーガの他に何が必要かな?
ひょっとして、シソ? あ、シソは梅干しか。梅干しもいいけど、そうなるとやっぱり白米だよね。
その追求はまたにして、シソがあればさらに味の幅を広げられるなあ。
七味でなくてもショーガもあるから、三味くらいはできるし。
よし、探そう。
心の中の探索リストに加えて、それからお好み焼きソースとマヨネーズを瓶からスプーンで取り出して、フォークで広げるように塗って、ナイフで一口サイズにしてから食べる。
お好み焼きはしゃきしゃきキャベツも、ちょっと熱が入ってしなっとしたキャベツもどちらも美味しいけど、一番好きなのはしっかり炒めたキャベツお好み焼きなんだよね。
キャベツのいいところは、火が通っても歯ごたえはしっかりしていて、ふわっとしたタネとキャベツのハーモニーが絶妙。
そこに、メインのクラーケンが新たな歯ごたえと味を加えてくれていて、それなのにお好み焼きソースとマヨネーズの主張が激しいところがまた最高!
正直なところ、お好み焼きソースとマヨネーズがあれば、具材は何でもいいと思う。
その主張の激しさが関西っぽくて笑える。
上京して初めて食べたもんじゃ焼きの控えめな味の主張と歯ごたえも驚いたけど美味しかったよね。
うん。やっぱり鰹節を作ろう。それで、出汁を作って、明石焼きもいい。
「クラーケンお好み焼きもやっぱり美味しいです~」
「うんうん。そうだねえ。次はまた違うお好み焼きも試したいね」
「違うお好み焼きですか?」
「そうだよ。お好み焼きは各家庭それぞれ、好きなものを入れて好きなように焼けばいいんだよ」
「なるほど~」
わくわくした様子のポンちゃんはお口の横にソースがついていて可愛い。
クライスは目を閉じて咀嚼しているけど、その表情は恍惚といってもよくて、声をかけるのはためらわれた。
だけど、急にカッと目を見開いて語り出す。
「また新たな黒い液体はオショーユかと思ったが、全く違う味だな。これはタマネギやセロリなどの香味野菜を煮込んだものだろうか? この酸味はトマト……? ビネガーか? だが、甘味もあるのは砂糖を入れているのか……。それに、このマヨネーズとやらもいったい……? タマゴとビネガーか? 油は何を使っているんだ?」
「え、えっと……ベニバナ油を」
「なるほど。このソースもマヨネーズとやらも、今まで食べたことのない新しい味でとても美味だ。だが、これらはこの『お好み焼き』を引き立てるわき役にすぎないから驚きだ。だが、芝居でもわき役がいてこそ主役が輝きを放つように、このソースがあってこそじゃないか?」
「そ、そうだね……」
「それにしても、この『お好み焼き』は最高だな。パンケーキかと思ったが、卵と水で練った小麦粉にクラーケンや野菜を一緒に焼いて食べるとは……。ソースがなくても十分美味しいが、やはりソースがあってこそだな」
「う、うん。お好み焼きはソースがあってこそなのは間違いないと思う」
どうしよう。クライスの食に対する情熱が怖い。
まだ単純に『宝物庫や~』って言ってくれたほうが笑えたのに。
ここで豚肉とか入れたり、鰹節をかけたり、好きなものを入れるとさらに美味しいよと言うのはやめておこう。
また味に集中しているのか、黙って食べだしたから、刺激しないほうがいいよね。
ポンちゃんさえも、ぽかんとしてクライスを見ているし。
でもまあ、ポンちゃんもそうだけど、作ったものを美味しく食べてくれるのは嬉しい。
だからまた違うものを食べてほしいなって思う。
そうだ。好きなものを入れて焼くといえば、すき焼きだよね。
うん。鍛冶屋さんで頼むものがまた増えたよ。すき焼き用の平たい鉄鍋もお願いしよう。
クライスが旅に加わるってなったときはどうしようかと思ったけど、美味しいものを分かち合う人が増えたと思えばまた楽しいね。




