40.クラーケン焼き
クライスは私たちの行動を見て、すぐに要領を得て手伝ってくれた。
確かに男手があるといいね。魔法を使えばいいとはいえ、ちょっと重い石を運ぶときとかまで魔法を使わなくてもいいもん。
簡易な囲炉裏で薪を燃やし、いくつかの大きい石でバランスをとって金網を載せてフライパンを置く。
ふっふっふ。ようやくお目当てのイカ焼きもどきを食べることができる。
収納魔法からバターを取り出し、熱したフライパンにポン!
もうこれだけで美味しいにおいがする。じゅわっとバターが熱に溶けて、ポンちゃんがわくわくした様子でフライパンを覗き込んでいるから注意。
「ポンちゃん、これからクラーケンを投入するからね。水気はしっかり切っているけど、ひょっとして油が飛ぶかもしれないから、少し離れて。気をつけてね」
「はい!」
「クライスもとりあえず見てて」
「わかった」
水気がなくてもイカは熱で跳ねることもあるし、クラーケンの切り身がどんな動きをするのか、予想がつかないからね。
クライスは何か手伝おうかと動きを見せたから、指示を出す。
さて、いざクラーケン投入!
「わあ! 生きているみたいに動きますね!」
「おお!」
「うん。熱で収縮しているんだね。もう少しだけ火を通して……ここでお醤油!」
熱したバターと反応して、お醤油がじゅわじゅわ音を立てて煮立つ。
それほどの量は入れていないから、焦げ付かないようにフライパンを持ち上げて火から少し離し、塩コショウを少々振って余熱でじっくりクラーケンに火を通す。
「ユーナ、その黒い液体は何だ? ずいぶん香ばしいにおいがするが……」
「これはお醤油っていって、オーマメから造ったの。私の故郷の調味料だよ」
「そうか。ユーナの……」
私が故郷の話を持ち出したからか、お醤油に興味津々だったクライスは、それ以上を訊いてこなかった。
どうやら気を遣ってくれたらしい。
その間に、あたりには焦げた醤油とバターのいい香りが漂い、お腹がぐうっと鳴る。
最後にバターを追加投入して、パセリを散らし、クラーケンのバター焼き完成!
だけど、ここで新たにワカメ登場!
実は、クラーケンを釣ったときに密かに巻き付いていたワカメを回収していたんだよね。
どうやらベイカの街ではワカメを食べないらしい。
美味しいよって伝えたかったけど、クラーケンが退治されたことで、街中大騒ぎでそれどころじゃなかったからね。
まあ、海藻は消化する酵素を持つかどうか人それぞれっぽくて、この街の人たちは必要としていないのかも。
だから今までベイカの街では食べられなかったのかもで、わざわざ勧めることもないと判断した。
だって、消化できれなければただ体外に排出されるだけだし。それも生食の場合だし。
というわけで、残ったバター醤油のたれに水洗いしたワカメを投入してささっと火を通す。
それを木皿に移したクラーケンの横に添えて、保温魔法をかけた。
よし、次はお好み焼きもどきに挑戦。
さっとフライパンを浄化魔法で綺麗にして、軽く油を引いて、適当な大きさに切ったクラーケンを漬けておいた瓶を取り出す。
瓶の中にはお醤油、生姜ならぬショーガと白ワインに砂糖を少量投入して漬けダレを作っておいたんだよね。
本当は日本酒がほしいところだけど、お米があるのはわかったので、それは今後の課題。
一緒に投入した漬けダレがぐつぐつ煮立ち、クラーケンをいい感じに茶色く染めて完成!
次はキャベツを細かく風魔法で切って、小麦を卵と少量の水で練って、少しだけ白ワイン投入。山芋があれば最高だけど、それは我慢。天かすは入れない派。
それから浄化魔法で綺麗にしたフライパンに油を引いて……各家庭でお好み焼きも作り方が違うんだけど、私はお母さんの作り方で。
先にクラーケンをキャベツとある程度炒めて、タネ投入。
火が半分くらい通ったのを判断して、贅沢にもチーズをのせて、それからひっくり返す。
フライパンがまた騒がしくじゅわじゅわって音を立てて、チーズの香ばしいにおいが漂う。
「ユーナ様……すごく、おいしそうで……」
「うん。もう少しだからね」
「パンケーキのようで違うようだが……とにかくおいしそうだ」
「これの説明はまた今度ね」
ポンちゃんに続いてクライスが待ちきれないといった様子ながら、お好み焼きを見てまた呟く。
いろいろ説明は割愛。そのうち時間があればするよ。
魔法で弱火にすると、用意していたテーブルの上にコップを置いて、サングリアと赤ぶどうジュースを注ぐ。
先に作ったクラーケン焼きとバター焼きの他に、お昼の残りを並べ、取り皿とお好みソースもどき、マヨネーズを用意する。
しまった。鰹節もあれば最高だったな。
うん。また挑戦してみよう。




