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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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38/54

37.お別れ

 

【魔女の知識:火山地帯などには熱湯が湧く場所もあり、その地域に住む者は毎日湯に浸かる習慣がある】

 ということは、目的地は一つ。


 翌朝になって、男性たちが二日酔いになりながらも漁へと出たときに、私たちは旅立つことにした。

 ちなみに、お祭りは今日も続くらしい。みんな元気だ。

 漁で忙しくしているときに発つのは、お別れでしんみりしたくないから。

 それで、旅立つことはエレシムさんとヤク爺さんのご家族にしか伝えなかったので、ジャックさんとは先にお別れをしている。

 それと、たぶんテオさんには知られてしまっている。

 まあ、有名な温泉地がないか訊いたからね。


 答えはイエス。そして、ノー。

 どっちなの? って感じだけど、どうやら最近源泉が枯れてきているらしい。

 それは逆に何か役に立てるかもしれないから、行くしかないよね。

 どうしようもない自然現象なら下手に手出しするつもりはないけど、どちらにしろまだ営業はしているらしいから、温泉でのんびりはできる。

 だけどその前に……。


「本当に一緒に来るんですか?」

「ああ、それが条件だからね」

「その条件は、そちらが勝手に設定したものですよね?」

「だが、私がいれば旅は楽になると思うよ」


 最初の宣言通り、クライス王子は私たちの旅に同行するらしい。

 クライス王子は命の恩人だし、王子自身に不満はないけど、気を遣うっていうか、気ままなぶらり旅ができなくなるんだよね。

 それで反発したら、ポンちゃんが警戒態勢に入ったのがわかった。

 ヤク爺さんたちもおろおろしているから、この無駄な論争はやめにする。


「わかりました。でも行き先は私とポンちゃんが決めますから」

「もちろん」


 にこにこしながら答えるクライス王子は本当に嬉しそうでなんだか怖い。

 だって、いくら魔法が使えて不便もないとはいえ、王子様が野宿とかできるのかな?

 戦場にいたとはいえ、後方で立派なテント張ってたよね? あそこで王子様は寝起きしていただろうに。

 だけどまあ、エレシムさんが一昨夜にクライス王子といろいろ話をして、私たちの旅に同行することを納得したらしいから、信じよう。

 今の私なら、クライス王子にだって勝てる自信があるからね。


「それじゃ、お世話になりました」

「いやいや、世話になったのはわしらのほうですから」

「そうですよ。本当にもう発たれるなんて残念で……」

「もっと滞在してくださったら、皆も喜ぶでしょうに」

「この……国は広いですからね。先に進まないと生きているうちにいろいろ体験できないですから。ありがとうございました! お料理もとっても美味しかったです!」

「美味しかったです! お弁当もありがとうございます!」


 改めて別れを惜しんでくれるヤク爺さんたちに頭を下げ、お礼を言うと、ポンちゃんも続いた。

 その内容がご飯に終始しているのがおかしい。

 ポンちゃんの言う通り、お弁当も持たせてくれて、お昼がすごく楽しみでもある。

 その後はクライス王子と皆さんとの別れを見守って、最後ににっこり笑顔を浮かべた。


「では皆さん、お元気で!」

「さようなら」

「お気をつけて~!」


 手を振り、人が集まってくる前にと、その場で浮遊する。

 クライス王子も一緒についてきてくれて、足手まといにはならない。

 皆の視線が私へ――上へと向かい、それから高く高く飛んで、ヤク爺さんたちが豆粒みたいに小さくなって、目的地に向かって進む。

 しばらくして肌寒くなってきたから、地上がしっかり見えるくらいまで高度を下げた。


「ポンちゃん、大丈夫?」

「はい! お空を飛ぶのは楽しいです!」

「うん、そうだね」


 今回はかなりヤク爺さんのご家族と仲良くしたから、お別れが寂しくなかったかなと思ったけれど、大丈夫そうで安心。

 ひょっとして無理をしているのかもしれないけれど、これからも何度も出会いと別れは繰り返すことになるから。

 慣れることは無理でも、私ができる限りポンちゃんの傍にいるからね。

 ちらりと隣を飛んでいるクライス王子を見てからポンちゃんに声をかける。


「そろそろ歩こうか? そのほうがお弁当を美味しく食べられるしね」

「はい!」


 ベイカの街からテオさんに聞いた温泉街へ続くはずの道でも、人気がなさそうな場所を見つけて下りることにする。

 この位置ならおそらく遠くからでも見えないはず。

 その分、山の中ではあるけれど、魔獣の気配もないし、少し歩いてお昼になったらお弁当にしよう。


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