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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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37/55

36.次の目的地


 魔女は大声を出したんじゃなくて、一人一人の耳に聞こえるような魔法を使ったんだと思う。私も戦争を止めるときに同じようにしたから。

 それでもう、国中がパニックに陥って……なんて大変なことがあったわけだけど、魔女自身おかしくなっていたんだと思う。

 自身の体の衰えを感じて、私を召喚して乗っ取ろうとしたくらいだし。

 ま、私は勝ちましたけど?


「ユーナ様、食べないんですか? もうお腹いっぱい?」


 一人ドヤっていたら、ポンちゃんが不思議そうに首を傾げて声をかけてくれる。

 うう、可愛いなあ。


「ちょっと休憩してただけ。大丈夫。まだまだ食べられるよ。ポンちゃんは?」

「ボクもまだいけます。お魚料理、すっごく美味しいです」

「だよね~」


 ポンちゃんと顔を見合わせて、「ねー」と頷き合い、また新しいお料理に手を伸ばす。

 サングリアもどれも美味しくて、いい感じに酔ってきたかも。

 広場のみんなもすごく嬉しそうで、子どもたちだけでなく大人もはしゃいでいる感じ。

 まあ、少し飲み過ぎて荒っぽくなっている人たちもいるけど、それは関与せず。


 そこに、陽気な音楽が響き始めた。

 陽に焼けた壮年の男性がギターのような弦楽器を弾き、妙齢の女性がタンバリンそのものな楽器でシャランシャランと鳴らしながら踊る。

 すると、周囲の人たちも手を鳴らしてリズムを取りながら、踊り出した。

 

 その様子を見ながら、私とポンちゃんはいくつか新たなお料理をお皿に取り分けて、近くにあった椅子に座る。

 酔った誰かが音楽に合わせて歌い始め、ポンちゃんと顔を見合わせて笑った。

 お祭り騒ぎを楽しみながら食事をしていると、いろいろな人が声をかけてくる。

 ほとんどの人はポンちゃんにも挨拶してくれるけど、やっぱり無視する人もいて、腹は立つけれどその分、私も冷たく対応した。


「ユーナ様、ボクのことは気にしないでくださいね」

「どうして? 気にするよ。一番気にする。ポンちゃんは私の大切な家族だもん。でも、何もしようとしなくて、ごめんね」

「いいえ、そんなことないです。ユーナ様が怒ってくださっているだけで、ボクは嬉しいです。でも、怒りを態度に出したら面倒なことになるのも、わかっていますから。それに、前はガースのことをやっつけてくれましたからね」

「あれは度を越えていたからね」


 あと、ちょっと私も酔っていた自覚はある。

 今日はもっと酔っているから気をつけよう。


「ポンちゃん、ちょっと早いけど、明日にはこの街を発とうと思うけど、どう?」

「ボクは大丈夫です。きっと皆さん寂しがりそうですけど」

「まあ、そうかも。だけど……まだまだ美味しいものを求めて旅しないとね」


 王都の神官さんたちは魔女をよく思っていないし、私が〝悪逆の魔女〟だとバレてしまって追われる立場になると大変だからね。

 いや、だから監視としてクライス王子がやってきたのか。だとしたら、追われることはないのかな?

 でも、何かあってこの街の人たちに迷惑かけるわけにもいかないし、グルメ旅は継続しないと。

 そう考えてポンちゃんに伝えると、嬉しそうな声が返ってくる。


「それは楽しみです! 次はどこを目指しますか?」

「そうだねえ……」


 目的を決めずに旅するのも楽しいけど、一応は決めておいたほうがいいよね。

 だけど、今お腹いっぱいなせいか、美味しいものを考えられない。


「そうだ! 美味しいものを求めようって言ったばかりだけど、次は温泉を目指すのはどうかな?」

「おんせん?」

「そう。昨日、ヤク爺さんのお家で入ったような大きなお風呂――とはちょっと違うかもだけど、自然にお湯が湧いている場所があって、そのお湯に浸かると、疲れがとれたり打ち身が早く治ったりとか、いろいろ効能があるんだよ」

「うん? よくわかりませんけど、楽しそうなのはわかりました!」


 温泉の説明は難しいから、実際に目で見て体験してもらったほうがいいよね。

 ポンちゃんもそう思ってくれたのか、私のわくわくが伝わったのか、楽しそうに答えてくれた。

 よし。あとは意識を周囲に広げて温泉が湧いてそうな場所を探すかな。


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