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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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2.みんなで乾杯


「さあ、みんなも遠慮なく飲んでくれ!」


 店主さんは町長も兼ねているらしくて、そんな店主さんの掛け声と同時に、みんな「おー!」って声を上げ、ジョッキを掲げて乾杯した。

 みんな肝臓は大丈夫? って言いたいくらいに一気飲みしてる。

 でもわかるよ。ひと仕事した後のビールは旨い! って、これは違うお酒だけど、似てるからよし。

 まあ、私的にはビールとかよりも日本酒好きだから、いつか造ってみたい。


 それよりも、今は目の前のテールステーキだよ。

 おそるおそるナイフとフォークを青い炎の中に突き刺してお肉を切り取る。

 それから手元に持ってくると、炎は消えた。


 おお、すごい。

 だけど、このまま口に入れるにはまだ熱い気がするから、ふうふうしてもいいかな?

 マナー違反にならないか心配になったけど、鉄は熱いうちに打て。温かいものは冷める前に食べろ。ってことで、とりあえず食べてみよう。


(あ、思ったより全然熱くない。それよりも……本当に美味しいんですけど! 噛むたびにじゅわっと出てくる肉汁に、店主さん特製のソースが絶妙に混じり合って香ばしくて臭みも全然ない! 適度な歯ごたえがいい感じで、ただただ美味しい!)


 炎リザードはモモやロースよりも、テールが一番美味しいって知識はあったけど、想像をはるかに超える美味しさ。

 これはきっと店主さんのお祖父さんの秘伝レシピのおかげでもありそう。

 幸せ気分でポンちゃんを見ると、同じように幸せそうな顔でお肉をもぐもぐしてた。

 うん、可愛い。

 次の一口ってところで、隣のテーブルの人たちに声をかけられた。


「いやあー。ほんっと、ありがとうな! お嬢さんのおかげで、町が救われたよ」

「まさか、お嬢さんが本当に炎リザードを倒すとは思ってなかったが、疑って悪かったな!」

「マジでそれな。お嬢さんが炎リザードを倒すって言い出したときは、何の冗談かと思ったが、まさかなあ……」


 一人が口火を切ったら、次から次へといろいろな人に声をかけられる。

 わかってはいたけど、情報収集のときの態度の悪さは私の冗談だと思われていたんだなあ。

 仕方ないから私は諦めてたけど、ポンちゃんはぷんぷん怒ってたな。

 思い出してポンちゃんを見ると、食べることに夢中でみんなのことは眼中にないみたい。

 ポンちゃんは私よりも食いしん坊だからねえ。

 とりあえず、声をかけてきた人に適当に答えていたら、店主さんが戻ってきて大げさな動作で手を叩く。


「ほらほら! お嬢さんへのお礼はまた後でいいだろ? 私の料理が冷めてしまうじゃないか!」


 その言葉でみんな口々に「すまなかったな」「それもそうだな」なんて言いながら席に戻っていった。

 どうやらお店の外からやってきた人もいたみたいで、店内の人口密度がかなり減った気がする。

 それで店内の熱気がすごかったんだ。調理しているから暑いのかと思ってた。


「さあ、お嬢さん。どんどん食べてください。明日の朝には、煮込んでいるテールスープが最高の出来になりますからね。楽しみにしていてくださいよ!」

「ありがとう! 一晩じっくりコトコト煮込んだスープなんて、絶対美味しいよ! 楽しみにしてます! ね、ポンちゃん?」

「はい!」


 店主さんの言葉に期待が高まる。

 ポンちゃんは目をキラキラさせながら頷く。うん、可愛い。


「さあ、他の料理もぜひ食べてください!」


 店主さんがそう言うと同時に、奥さんや店員さんたちがたくさんのご馳走を運んできてくれた。

 リブ肉は香草焼きにしていて、モモ肉はポトフ風に調理されている。

 確かに、リザードはテールステーキが一番ジューシーで美味しいかも。

 もちろん他のお肉も美味しいんだけど、テールステーキ以外はさっぱりしているというか、鶏肉っぽい?

 そういえば、昔オーストラリアに旅行に行った友達がワニを食べたけど、さっぱりして淡白な味だったって言ってたな。


「どれもこれも、すごく美味しいです! 本当にありがとうございます!」

「こんなにご馳走いっぱいで、ボク幸せです~」

「いやいやいや、本当に感謝しているのは私たちのほうですから! なあ、みんな?」


 テールステーキほどじゃなくても、美味しいのは事実で、店主さんにお礼を言うとポンちゃんも続いた。

 すると店主さんは恐縮したように顔の前で手を振る。

 それからみんなに今回のリザード討伐の感謝の気持ちに同意を求めると、みんなが「そうだそうだ!」とか「ありがとうございます!」とかまたジョッキを掲げて答えた。

 かなり酔っぱらってきている感じだな。

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