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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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24.露見


「まさか、魔法使いの契約を交わしたのか?」

「は、はい……」

「ユーナは仕方ないにしても、あなたは魔法使いの契約がどれほど危険があるかは知っているだろう?」

「もちろんです」

「エレシムさんは悪くないです! 私が無理やりお願いしたんですから!」


 クライス王子がエレシムさんに厳しく問い詰めたから、私は慌てて前へと進み出た。

 私が軽く考えすぎていたのが悪い。

 クライス王子はエレシムさんの右腕の痣を忌々しげに見たけれど、エレシムさんは穏やかな笑みを崩さなかった。


「これは、ユーナ殿に宿を提供する約束ですから、明日の朝には消えています」

「だが、ユーナはクラーケンを倒す約束だったんだろう? それが無茶だと思わなかったのか?」

「――私はあの戦場におりましたので……」


 言いにくそうに告げたエレシムさんの言葉に、私もクライス王子もはっとした。

 目立ちたくないと言いながら、クラーケンを倒せるだけの力を誇示するなんて矛盾しているよね。

 やっぱりエレシムさんは私の正体だけじゃなく、クライス王子のことも知っているってことだ。


「ユーナ殿、この街には私以外にあの戦場にいた者はおりませんので、他の者たちは気づいておりません。ですが、今後のことを考えると、さすがに浮遊魔法で登場されるのは……お顔が見えなくても、あのときのことを思い出してしまいますよ」

「あ、なるほど……」


 普通に力ある魔法使いって示すのに手っ取り早いかなと思って空から登場したけど、考えてみれば、あの戦争のときも同じことをしたんだった。

 エレシムさんの話を聞いて、クライス王子が私に何か言いたげだったけど、きっと「ネム(バカ)」だろうな。

 馬鹿の一つ覚えって言葉があるけど、まさしくそれだ。


 はじめから〝悪逆の魔女〟ってバレてたのに、どや顔で魔法使いの契約を迫ったことが恥ずかしい。

 だけど、エレシムさんは私の正体をばらすことなく、黙っていてくれたんだ。


「ですがまあ、空から登場さえしなければ、ユーナ殿が……なんて、誰も考えもしませんよ」


 エレシムさんは言葉を濁しながらもくすくす笑うと、今度はクライス王子をちらっと見た。

 それから困ったような笑みに変わる。


「お名前を変えられないのは、ずいぶん大胆だと思いますが、貴方様についてもまた誰も気づかないでしょう。私は後方支援のときにたまたま少しお話する機会があったので、覚えているだけですから。あのときは土埃と煙と血とで、わけがわからない状態でしたしね」

「――ああ、あのときの! 貴殿には部下がかなりお世話になった。改めて礼を言わせてくれ。貴殿の働きに感謝する」

「いえ、当然のことをしたまでです。皆様、

お元気になられましたか?」

「ああ、今はもうぴんぴんしている。今回も付いてくると煩く、撒いてきたんだ」

「それでお一人なんですか?」

「ああ、大所帯では目立つからな」

「確かに。ですが、お一人でも十分に目立たれておりますよ?」


 わーどうしよう。いつの間にか二人の会話が弾んでる。

 初めてこの世界にやってきたときに助けてくれたときにも思ったけれど、クライス王子はすごくフランクに接してくれるから、話しやすいんだよね。

 とはいえ、隠しきれない王子様然としたものがあって、内面からキラキラ光っている気がする。

 それに気圧されて、奥様方――特に若い奥様たちは名残惜しそうにしながらも近づくことはできなかったみたいだもんね。


「ユーナ殿、ヤク爺さんの家に戻りましょうか。こちらも一段落つきましたし、そろそろ奥方たちのクラーケン料理も出来上がっているでしょうから」

「こんなに早く?」

「今日は皆、簡単な料理にしていると思いますよ。ですが明日を楽しみにしていてください。……明日もお泊りになりますよね?」

「……ご迷惑でなければ」


 ちらりと私がクライス王子を見ると、穏やかな笑みが返ってきた。

 そういうところが王子様なんだよー。


「ヤク爺も街の人たちも大歓迎だと思います。今日だって本当は今から祝杯を挙げたいでしょうけど、きっと皆明日の朝に久しぶりの漁に出るでしょうからね。今夜は控えめにするはずです」


 穏やかに微笑むエレシムさんだけど、なんとなく高揚しているのがわかる。

 片づけを終えた男性たちも嬉しそうに倉庫のような場所に入っていったり、岸壁に繋いでいる船に乗り込んだりしていた。


「ユーナ殿、このたびは本当にありがとうございます。本来なら街の者たちみんなで感謝したいのですが、明日は早いですからな。妻がそろそろ本格的な料理を用意してくれているはずですので、今夜は我が家でささやかながら祝宴といきましょう」

「ありがとうございます」

「ユーナ殿もお連れ殿も、明日も泊まってくだるでしょう? 明日は皆が漁から戻ってきたら、街を挙げての祝宴となりますからね。少々荒っぽいやつらもいますが、どうか皆から感謝させてください」

「わかりました。覚悟しておきます」


 港街の荒っぽさを想像してちょっと肝臓が心配になったけれど、治癒魔法で二日酔いも治せることは確認済みなのでどんとこい、だよ。

 もちろん、ポンちゃんはジュースだけどね。

 そのポンちゃんは奥様が用意してくれているというクラーケン料理にか、明日の祝宴にかわくわくしているようで、見えないはずのしっぽがぶんぶん揺れているようだった。

 エレシムさんはそんなポンちゃんを見下ろしてくすりと笑い、ヤク爺さんや私たちと一緒に歩き出した。

 よし。クライス王子がどうして一人でやってきたのか気にはなるけど、まずはクラーケン料理だ!


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― 新着の感想 ―
ポンちゃんはジュース、、、、、♪(´▽`)
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