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悪逆の魔女のグルメ旅  作者: もり


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12.計画

 

 ひとまずの終着駅になっている街には、お昼すぎに到着した。

 この街の駅は基幹駅のようで、あちらこちらで駅馬車とすれ違ったし、駅舎もとても大きい。

 御者のおじさんや乗り合わせた他のお客さんたちに手を振って、のんびり街を歩く。


「この街なら、私たちが次の駅馬車に乗らなくても目立たないね」

「そうですね。それに、美味しそうなものがたくさんあります」

「じゃあ、一晩ここで泊まってから、明日ベイカの街に向かおうか」

「はい!」


 おじさんから聞いた話では、ひとまず海岸に近づかなければクラーケンに襲われることはないみたいだし、それも大きな音を立てなければってことらしい。

 だから街の人たちは海岸近くでは声を潜め、足音も立てないように生活しているとか。

 それはかなり不自由ではあるけれど、今すぐ街が壊滅の危機というわけではないので、今からベイカの街に向かうよりは、ここで一晩体を休めてからのほうがいいと思うんだよね。

 疲れていると頭も回らないし、夜は魔の力が強くなる分、魔獣たちは活発に動き出すから。


「じゃあ、まずは宿屋さん探そう」

「はい!」


 女子供だけで泊まれるところって少ないんだよねえ。

 小さな町のほうが意外と受け入れてもらえるのは、おそらくみんなが顔見知りな分、よそ者に対して警戒心も強いけど、逆に心配されて優しくしてくれたりする。

 大きな街は知人友人以外には冷たい。

 それは日本でも同じだったから、特に驚くことじゃないけど、この世界での身分証があれば便利なのになと思う。

 冒険者ギルドに登録して身分証になるタグを作ってもらうことも考えたけれど、魔力鑑定とかあるらしくて、下手に〝悪逆の魔女〟だってばれたら怖くて二の足を踏んでいるんだよね。

 それにポンちゃんも鑑定で『タヌキ』って出たら困る。

 もちろん、身の危険はないけど、やっぱり迫害されるのは――仲間外れにされるのはつらいもん。


「ユーナ様、あの宿はどうでしょう?」

「そうだねえ……。よし、あたってみよう!」


 ポンちゃんが指し示したのは、宿屋が建ち並ぶ通りにある中の下くらいの宿屋さん。

 あれくらいのほうが、訝しがりながらも前金を払えば泊めてくれる。

 何か事情があって旅をしているんだなって、勝手に想像してくれるし、そこまで訳ありじゃないなら、儲けになるって判断だと思う。

 だから、さり気なく目的を訊かれたときには「魔法使いの修行途中での里帰り」ということにしている。

 戦争が終わってから、魔法使いたちは魔力がある子たちを弟子にするようになっていて、そこまで珍しいことじゃなくなったから。


 ポンちゃんも宿屋さんの見極めが上手くなってきたなあ。

 上級宿は門前払いだし、あまりに下級だと治安に問題がある。――要するに身の安全を守るために魔法を使わないといけなくなるんだよね。

 炎リザードを倒すっていう目的があるようなときは、そこまで力を隠さないけど、それ以外ではあまり目立たないほうがいい。

 それは〝悪逆の魔女〟だとばれたくないのもあるけど、力ある魔法使いっていうだけで、便利屋扱いされることもあるから。

 それで断ったら不快に思われるという理不尽。これは、社畜時代に培った面倒ごとを避けるための処世術。

 私は聖人ではないから、ただ働きはできればしたくない。もちろん、本当に困っている人たちのことは助けるよ。単にずうずうしい人が嫌いなだけ。


 幸いにして、ポンちゃんが見つけた宿屋さんは、ちゃんと前金を払ったら泊めてくれた。

 お料理の提供はないから、外で食べてきてくれって言われたけど、大歓迎。

 さっきから気になる屋台がいっぱいあるんだよねえ。

 大きな街はお祭りでなくても、屋台は常設でたくさんあるから、食いしん坊な私とポンちゃんにはもってこいの状況。

 いったん、宿の部屋に荷物を置いて、鍵とは別に魔法で部屋を施錠してから街に出る。


「ユーナ様! 何を食べますか!?」

「ポンちゃんが食べたいものを教えて? 私も美味しそうなもの見つけたら言うから」

「はい!」


 普段は遠慮ばかりのポンちゃんだけど、こんなに並ぶ屋台を前にしては我慢できないよねえ。

 私もポンちゃんも、あれやこれやと買い込んで、少し歩いた先にある石段に座って食べる。


「美味しいねえ」

「はい! このホロホロ鳥の串焼きも、腸詰のパイ包みも美味しいです!」

「うんうん。それにこのレンジ果実水も美味しいねえ」

「爽やかで口の中がさっぱりします!」


 レンジっていう果実はオレンジのような見た目だけど、味はライムを甘くしたような味なんだよね。

 当然、果汁100%で搾りたて。

 口の中が脂っこかったけど、果実水を飲んですっきりしたところで、立ち上がった。


「じゃあ、お腹がいっぱいになったってことで、明日の朝ご飯を買ってから宿に帰ろうか」

「はい!」

「あ、そうだ。部屋で食べるデザートがあれば、それも買おう」

「やったー!」


 今はお腹いっぱいだけど、きっと後で甘いものが食べたくなると思うんだ。

 寝る前にデザートを食べるなんて、背徳感たっぷり。

 普段はあまりしないけど、たまにだからこその喜び。

 明日はベイカの街に行くにしても、すんなり受け入れてもらえるとは限らないからね。

 だから、ご褒美というよりも、一仕事前に自分を鼓舞するためのようなもの。――という理由をつけているだけ。

 ポンちゃんと何を食べようかって、また屋台を見てまわるのはとっても楽しかった。



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