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月面競争  作者:
8/15

その八

 総理はすぐさま官邸に戻ると、緊急閣議を開いた。


 そして決定する。米ソの提案を快諾かいだくすることにした。


 となると、ミニチュア製作のためのプロジェクトチームが必要だ。大手企業や有名大学を中心に人選じんせんする。


 ところが、このプロジェクトには、大きな落とし穴が待っていた。


 なにせ月面に置いておくミニチュアだ。これまでの『ハンバーガーショップ』や『ロシア料理店』はその都度つど、取り壊していたため、耐久性は求められていなかった。


 しかし、今回は違う。


 米ソからの注文書を見て、プロジェクトチームは絶句した。


 ミニチュアに求められている性能が無茶苦茶なのだ。月面に放置しても、百年は元の状態を維持していなければならない。


 月面に関しての情報が、それほど多くない時代のことである。米ソからの情報にも、不明瞭な点が多い。


 したがって、現在わかっているよりも過酷な環境を想定して、ミニチュアをつくる必要があった。しかも、大きさや重量の制限もあるのだ。


 その上、見た目も求められている。『ソフトクリームを持ったおばさん』や『酔っ払ったおっさん』をつくるわけにはいかないのだ。


 はっきり言って無理むり難題なんだい


「しかし、これを実現できそうな国が、世界広しと言えど、他にあるだろうか?」


 プロジェクトチームのリーダーが、仲間たちにたずねる。


 すでにアメリカとソ連が、自分たちの国では無理だと言っているのだ。


 かなりの衝撃に耐える金属、宇宙線に長時間さらされ続けてもげない塗料、ミクロレベルで精密な加工技術。そういったものが全部必要になる。


 日本以外に、それができそうな国は・・・・・・。


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