その九
「だったら、やるしかないよな。ものづくりニッポンの底力を見せてやる!」
プロジェクトチームはすぐさま人員の追加を行った。下町の職人集団にも参加してもらう。
こうして一回り大きくなったプロジェクトチーム。
彼らの中には、SF映画やロボットアニメを好む者が少なくなかった。
ああいう作品に登場した技術者にでもなったつもりで、このプロジェクトに全力で取り組んでいく。
幾多の困難を克服して、ついには米ソの要求する水準へと到達した。
両国から続々と注文が入る。
この時、米ソは密かにスパイを送って、プロジェクトチームの様子を監視していた。
そのスパイからアメリカのホワイトハウスに、二枚の写真が送られてくる。
それを見て、大統領及び補佐官は唸った。
「最初の写真の方でも、十分なレベルだと思うが」
どちらの写真も、『ホワイトハウス』のミニチュアを隠し撮りしたものだ。
最初に撮られたミニチュアの完成度も高いが、日本人はこれに満足せず、さらに改良しまくっているらしい。
一枚目の写真ではホワイトハウスの建物だけだったが、二枚目の写真では建物のディテールを改良した他、わざわざ背景までつくっている。
なのに、重量などの条件はすべてクリアしているそうだ。
「日本に任せて正解だった。まさか、ここまでつくり込んでくるとは」
このホワイトハウスのミニチュアは、ソ連の発注したものだが、「月面初」にふさわしいクオリティーだ。
「同じ物をこちらでも発注して、このテーブルの上に飾っておきたいものだな」
「しかし、大統領。それをすると、こちらがスパイに監視させていることを、日本側に気づかれます」
「そうだったな。残念だが、この写真で我慢しよう。あとで額に入れて、壁に飾っておいてくれ」
なお、ソ連側でも同様の会話が交わされていた。
日本のミニチュアのクオリティーは、非常に高かったのである。
それらのミニチュアを乗せたロケットを、米ソは次々と打ち上げていく。
こうして月面には、大量のミニチュアが並ぶことになった。




