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月面競争  作者:
5/15

その五

 この映像を、ソ連は国内でまったく放送しなかった。


 アメリカの小賢こざかしい手口に、我が国の純粋な国民たちがだまされないための配慮はいりょである。


 だから、アメリカ二回目の月面着陸を、ソ連の大衆は知らなかった。ゆえに、嘆き悲しんだり、怒ったりはしない。


 しかし、共産党幹部たちは違う。


 血相を変えて、


「この屈辱、ただでは済まさんぞ! よくもピロシキを・・・・・・ぐぬぬぬ!」


「だいたい、ピロシキしかメニューがないくせに、『ロシア料理店』を名乗るな! ボルシチは必須ひっすだろうが!」


 こうなった以上、やるべきことは決まっていた。月面での借りは、月面で返す。アメリカよ、思い知るがいい。


「今度の月面着陸では、『映画スタジオ』と『ジーンズ販売店』をつくるぞ!」


「異議なし! アメリカ人どもの『オーマイガー』とくやしがる姿が、目に浮かぶようだ♪」


 一方、米国も次の計画に取りかかろうとしていた。


「今度の月面着陸では、『ウオッカの自動販売機』と『キャビアの自動販売機』をつくるぞ!」


「異議なし! ロシア人どものヤケ酒する姿が、目に浮かぶようだ♪」


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