その四
半年後、人類は三度月面に立つ。前回はソ連だったが、今回は米国だ。月面よ、我々は帰って来た。アイル・ビー・バック! じゃなかった、アイム・バック!
アメリカの宇宙飛行士たちは、持ってきた資材をさっそく組み立てていく。
やがて一軒のお店が完成した。
ロシア料理の店である。
といっても、メニューは一つだけ。宇宙食のピロシキだ。
米国政府はさっそく、ソ連にホットラインをつなぐ。
「ハロー。親愛なる友人である君たちに、ちょっと教えておいた方がいいかなと思ってね」
先ほど月面最初の『ロシア料理店』をつくったことを伝えると、
「ドル以外に、ルーブルも使えるから、ぜひとも利用して欲しい。一時間だけの限定営業だ。どこかの国みたいに、極寒の中で二時間も並ばなくていいぞ」
大笑いしてからホットラインを切る。
お次は、世界に向けての発表だ。各国の主要テレビ局や大手新聞社を集めて、大統領は演説する。
さっきソ連にはわざと言い忘れたが、今回の「月面初」は『ロシア料理店』だけではない。
宇宙飛行士たちが今頃組み立てているはずだ。じきに『マトリョーシカ工房』も完成する。
「アメリカは本日、『月面初』を二つも成し遂げた。『ロシア料理店』と『マトリョーシカ工房』だ」
大統領は満面の笑みで語ると、すぐ近くに置いてあった小瓶の中身をグラスに注いで、
「それでは、コーラで乾杯♪」




